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隣の席の子
しおりを挟む「よーし、皆、席につけー!」
立っているのは、俺だけだ!
あわあわした俺は、窓際の一番奥の隅っこの席に座る。
隣の子は、瓶底眼鏡を掛けていた。
瓶底眼鏡、わかるかなー?
ぐるぐる渦巻き眼鏡みたいな。
度が強すぎて、レンズが厚過ぎて、瞳があんまり見えない眼鏡だよ。
なつかしさも満載の『愛のラビリンス』
「……ね、きみさ……その角、本物?」
ちょこんと俺の頭から出てる角を指された俺は、頷く。
「ほわあ……! すごい……!
ねね、さわっていー?」
「だめ」
急所だからな!
胸を張った俺に、瓶底眼鏡くんは唇を尖らせた。
「けち」
「だめ」
ふるふる首を振る。
「ふんだ」
ぷいっと横を向く瓶底眼鏡くんの、銀の髪がさらさら揺れる。
………………。
これ、お約束の、眼鏡取ったら美少年だ────!!
え、こんなキャラいたっけ??
もしかして、モブでさえ、めちゃくちゃレベル高い?
うーんと唸った俺は、思いだす。
きらきらの画面の隅っこに描かれたモブを。
……おお!
画面の隅っこまで、きらきらしてる!
イラストレーターさんが、モブにまで愛を注いでくれてた!
思い出した俺は、教室の皆を見つめる。
モブ。
ゲームの世界では、ひとくくりにされる、メインキャラクターじゃない人たち。
この世界は、BLゲームの世界かもしれないけれど。
暮らしている人は、皆ひとりひとり、ちゃんと心があって、意志がある。
誰ひとり、モブなんて、いない。
俺も、きっと、モブなんかじゃない。
だから俺に嵌めようとするおじさんもモブじゃないと思うけど、そこはもう、モブレという単語でお願いしますよ!
知らないおじさんに無理矢理嵌められるのは、だめ、絶対!!
「ほら、次!
そこの隅のちっちゃいの! 自己紹介だ!」
「ちっちゃい言うな!」
テチの暴言に、ぷんすかした俺は『あれ、もしかして俺?』と首を傾げる。
ちっちゃいと言われる = 俺 だと思ってる俺が、一番さみしい気がしてきた!
隣で肩を揺らして笑った瓶底眼鏡くんが頷いた。
「立って自己紹介して」
ああ、思い出した!
入学式の後にやる、恐怖のあれ!
なつかしいなあ。
じゃない、俺、今だ!!
あわあわ立ちあがったら、ガタンて机が傾いて、バサーってプリントとか鉛筆とか落ちる。
うわあ、お約束すぎる!
隣の瓶底眼鏡くんの笑いは止まらない。
ちょっと涙目で、ぷくりとふくれた俺は、胸を張った。
「魔界から来た、リユィです。
よろしくお願いします!」
ぺこりと頭をさげる。
「おお、魔界!」
「やっぱ魔王の息子なのか」
「元魔王だよ、もう元王子」
「かっこわる!」
嘲笑う声を遮るように、テチが白い歯を輝かせて笑った。
「よし。じゃあ、次!」
瓶底眼鏡くんが立ちあがる。
「トエです。よろしくお願いします」
あっさりだ!
「もうちょっとないか」
テチが突っ込んだ!
トエはちょっと首を傾げる。
さらさらの銀の髪が、ふわふわ揺れた。
「魔道具作るのとか、すきです。
よろしくです」
「おお!」
皆が拍手して、俺も拍手して、トエはちょっと笑って、テチは満足そうに頷いた。
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