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かなしみの魔力測定

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 校長が壇上にあがる。
 歓迎の訓話は、思ったよりずっと短くあっさりしていた。

 期待外れかも、と思ったら、拍手が沸き起こる。
 壇上に目をやった俺は、納得した。


 新入生歓迎のための在校生挨拶をするのは、生徒会長のアルフォリアだ。
 校長の歓迎の訓話よりも、アルフォリアの挨拶のほうが重要だということなのだろう。

 校長よりも遥かに多くの拍手を一身に受け、微笑んだアルフォリアは手を挙げた。

 一瞬で、広やかな講堂が、しんとなる。


 指先ひとつで、他を圧倒するような人間を、初めて見た。

 アルフォリアがいるだけで、空気が変わる。
 入学式で浮ついていた講堂全体が引き締まり、誰もがアルフォリアの言葉を待った。


 皆、アルフォリアが大すきで。
 尊敬して、憧れて。

 一身に受けるアルフォリアは、疲れ果て、さみしいだなんて。

 輝けるアルフォリアに、切なくなる。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 キォタナ魔法学園に、ようこそ。
 在校生代表、生徒会長アルフォリア・ゼア・ルエス・ビエルです」

 …………うん。
 国の名前がね、ビエル。BL。
 これが『愛のラビリンス』


「この学園では、身分ではなく、魔力によって、階級が分けられています。
 それは階級によって、他の者を見下したり蔑んだりするためではなく、研鑽と向上の心を学んで欲しいという気持ちからです。
 くれぐれも、間違えることのないように」

 静かな声が、俺の腕を掴んだ男たちに降る。
 ぶるりと身体を震わせた男たちは、ちいさくなって、視線を彷徨わせた。


「また、この学園には、人間だけでなく、エルフや、魔族も通っています。
 互いに理解しあい、親善を深めるためです。
 憎しみあい、蔑みあうためではありません。
 ゆめゆめ、間違えることのないように」

 アルフォリアの視線が、主人公のうえで止まる。


「なあんだ、やっぱり僕に気があるんじゃん。
 もう、ツンデレなんだから♡」

 主人公の目は、♡になった。



 …………チョロインかも!






 入学式のあとに始まるのは、新入生の魔力測定だ。


 俺、魔力ちょっぴししかないんたよ!

 かなしみしかない。


 皆で一列に並んで、ステンドグラスから降る光できらきらの壇上に上がり、おっきい珠みたいなのに手をのせると、魔力の強い人はビカビカに光り、魔力の弱い人は殆ど光らないという、お約束のあれだ。

 魔力の大きさによって、クラスが分けられ、タイの色も変えられる。

 一番最後に講堂に入った俺は、一番最後に並ばされた。
 皆がビカビカ光ってて、主人公はもう、本人までもがめちゃくちゃ輝いてた。

「おお!」

 皆の歓声に、ぴんくの髪を揺らして、主人公が笑う。

 うん。
 かわいい。

 顔はな!!


 最後に並んだ俺を、皆が見る。

「……アルフォリア殿下にエスコートされてた……」

「すごい魔力なのかな」

「ちっちぇえけど、角あるぜ」

 ざわつく皆に、拳を握る。


「ちっちぇえ言うな!」

 ぷりぷりしながら、おっきい珠に手をのせる。


 珠は、ほんのちょっぴり、ちらりと瞬きが揺れたくらいだった。


「おお、魔力最低クラスだな!
 がんばれ!」

 赤いリボンを取り上げられ、黒いリボンを渡された。

 皆の失笑が降ってくる。


「うわ、かっこわる!」

「最後に講堂に入って、アルフォリア殿下にエスコートされて、魔力最低!」

 嘲笑のなかには、主人公のきらきらしい嗤い声も入ってた。


「あ、あの、タイがいいです」

 手を挙げたら、教師は眉をさげた。


「すまん、売り切れだ。リボンな。似合ってるぞ!」

 よしよしと頭を撫でられて、うれしくなってしまう単純な俺!


 いやいやいや、ネコではなくタチでお願いしたいのですよ!

 あ、えと、ネコっていうのは受けで、タチっていうのが攻めね、お若い方のために!


 涙目で、ぷくりと頬を膨らませたら、ちょっと周りが、ざわっとした。
 主人公の殺人光線が降ってきて、俺は慌てて講堂を後にする。




 主人公には関わらない!!

 俺のざまぁ回避のために!!








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