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転生者?
しおりを挟む「あ、あの、あれ、よかったのか?」
おそるおそる聞いたら、アルフォリアは吐息した。
「俺らにも、選ぶ権利はあると思わない?」
俺は、茫然とアルフォリアを見あげる。
「…………アルフォリアも、転生者、なの……?」
アルフォリアは、碧の瞳を見開いた。
「……も?」
なんか俺、失敗したかも…………!!
転生者って、確か切り札みたいなので、最後の最後に、こう、ばばーん!
と出すものであって、こんな序盤、出会いイベントで出すのじゃない気がする!!
いや、出す気はなかったんだよ、全く!
あぁあ、頭の弱い俺…………!
髭なんて生えたことありませんよ、な、麗しい顎を撫でたアルフォリアが、唇の端をあげる。
「めちゃくちゃ可愛いだけじゃ、ないんだな」
くすくす笑う唇が、耳朶に触れる。
「後で生徒会室に来て」
物凄くイイ声を、耳に注ぎ込まれた俺は、よろりと倒れた。
日本のBLゲームだからね。
皆の言語も日本語だからね。
ファンタジーな魔法が使えるだけの学園ものだからね。
なぜかある生徒会!
金髪碧眼で生徒会とか言われたら、は!? てなるけど、これが『愛のラビリンス』クオリティ!
最初、うげえ、って思ってたのに、なんか癖になるんだよな。
名前とか、かっこわるさを期待しちゃったりとか。
いやいやいや、一瞬現実逃避したけど、すんごい綺麗な顔が、近い近い近い……!!
あわあわする俺の頬が、燃えている。
「あれ、もしかしてリユィ、俺のこと、すき?」
によによする、きらきら王子が、近すぎる…………!!
「いやいやいや、そんなかっこいー声で、かっこいー顔で、いー匂いで寄らないで!!」
燃える顔を覆って叫んだら、アルフォリアが吹き出して笑った。
「それ、俺が大すきって聞こえる」
「…………う、え、あ…………そ、そ、う…………?」
た、たぶん、ちょこっと、そうだと思う────!
熱すぎるほっぺたをむにむにした俺は、納得する。
まあ、うん。
ディゼの次に、いいなって思ってたのは、アルフォリアだった。
完璧な王子を演じるアルフォリアは、でも本当は疲れてて、ひとりぽっちで。
さみしい横顔を見るたび、きゅんきゅんした♡
ディゼの次くらいにかっこよくて、ディゼの次くらいに声がよかった。
……俺、めちゃくちゃ面食いみたいだよな。
いや、BLゲームで、によによする時は、最高に面食いでいいだろう──!!
開き直る俺に、アルフォリアが笑った時だった。
「何してんの」
低い声がした。
俺が、この声を、聞き間違えるはずがない。
振り返ると、いかめしい角から魔力を滲ませたディゼが立っていた。
「入学式には、保護者のエスコートが必要だって言うから、わざわざ来てやったのに」
蘇芳の髪が魔力で逆立ちそうなほど、ディゼは激おこだった。
そりゃあ、大きらいな俺のために、何回も人界に来させられたら、腹が立つだろう。
入学式のエスコートなんて、絶対したくないだろうことを押しつけられたら、憤激大爆発に違いない。
苛立つように迸るディゼの魔力にふるえた俺は、また、ぶわあと泣きだしそうな目を、ぎゅうっと瞑った。
ふるえる拳を握る。
「俺はもう、元王子で、何の権力もないし、お付きが持てる金もない。
……ディゼは、もう、俺のこと、世話してくれなくて、いいから。
今まで、ありがとう。
…………ごめん、なさい」
深く、頭をさげる。
あふれそうな涙を、ぎゅうぎゅう目を閉じて堪えた。
「掌返すの、早いなあ。
さすが、クソ王子。
顔のきれいな男なら、誰だっていいんだろ。
次が来たから、俺はもういいって?」
茫然と顔をあげた俺を、緋色の瞳が、刺した。
「最低だな」
吐き捨てたディゼが、アルフォリアを睨みつける。
「そいつ、死ぬほど尻軽くて、尻いじってやらないと泣くから。
まあ、尻いじってやってりゃ、満足なんじゃね?
後はよろしく」
手を挙げて、消えようとしたディゼを、アルフォリアが引き留める。
「最低なのは、きみだろう。
リユィの顔を見て、それを言うのか」
アルフォリアの言葉に、剣呑に細められた緋色の瞳が、俺を見る。
見開かれて、歪んだ。
「お前の世話なんて、もうこりごりなんだよ……!!」
叫んだディゼが、掻き消えた。
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