【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!

  *  

文字の大きさ
上 下
10 / 142

俺のせい

しおりを挟む



「げえぇえ……! 魔王の息子……!!」

「うわ……! 俺ら死亡!?」

「ご、ごめんなさい、なんか、めちゃくちゃ可愛かったから、つい出来心で!」

「す、すみませんでした────!!」

 平身低頭した輩が駆けてゆく。


 あー、うん。
 皆、こんな感じで、親父の威光で、俺のこと、持ち上げたり、敬ったり、恐れたりしてくれてたんだろうなあ。

 それを笠に着て、今世の俺は、威張り散らしてたんだろうなあ。


 それが、どんなに情けなくて、自分を否定することなのか、ちっとも解ってなかったんだ。

 思った俺は、首を振る。


 ちがう。
 俺は、ちゃんと、解ってた。


 自分には、何の力もないこと。

 顔は、親父には遠く及ばない。
 尻も、母ちゃんには遠く及ばない。

 頭はよくなく、魔力はない。
 ちっちゃくて、頑張って鍛えても、力は弱い。


 色々頑張ってみたけど、でもだめで。

 自分には、何にもなくて。


 それが、悔しくて、哀しくて。

 親父の威光を振り翳した。


 そうしたら、皆、俺を見てくれるから。
 ディゼが、俺の言うことを、聞いてくれるから。


 でも本当は、誰も俺のことなんて、見てなかった。

 それどころか、ディゼは、俺のことを、大っきらいになってた。


 俺は、間違ってた。



「え、ど、どうしたの!
 そんなに怖かった?」

 アルフォリアの長い指が、俺の頬に伸びる。
 その指が濡れてはじめて、俺は、自分が泣いていることを、知った。


「……ふぇえ……」

 俺は、間違ったから。

 ディゼに、きらわれた。

 もうディゼは、俺を見てくれない。



 ちがう、最初からディゼは、俺を見てなんて、ない。


 最初から、大っきらいだった。




「うわ、え、どうしよう、泣かないで……!」

 あわあわしたアルフォリアが、俺を抱きしめてくれる。
 わたわたしながら、俺の髪を撫でて、俺の背を、あやすように摩ってくれる。


「たすけに来るのが遅くなって、ごめんね。
 泣かないで」

 やさしい腕に、あたたかな腕に、アルフォリアの香りに包まれる。


「……泣、いて……ごめ、なさ……」

 ぐしぐし鼻をすすったら、アルフォリアが真っ赤になった。


「……うわ。
 …………なに、この子。……めちゃくちゃ……わいー」

 ぼそ、と告げられた言葉は、掠れて、よく聞こえない。


「え?」

「い、いや、ご、ごほん。な、何でもないよ。うん。
 新入生かな。入学式に行こうね。
 泣き止んで。ね?」

 やさしい手が、俺の頭を撫でてくれる。


 その役は、いつも、ディゼだった。

 やさしい、あったかい手だと思って、大すきだった、大きな手。


 ディゼは、ずっと、厭々だった。



 ぶわ

 音がするくらい、涙出た!


「わあ! な、なんで泣くの!
 ちょっと、可愛いんだけど!!」

 ぎゅうぎゅう抱きしめられた俺は、鼻をすする。


「キャラ崩壊してるよ」

 カタカナ語通じるかな、と思ったけど、さすが日本のBLゲームの世界、ちゃんと通じたみたいだ。

 意識してなかったけど、話してるのも書いてるのも日本語だ!
 きらきら金髪碧眼で、ネイティブな日本語を話すのに違和感なかったよ。

 さすがゲームの世界!


 感心する俺をよそに、アルフォリアが形のよい唇の端をあげる。


「こっちが素だよ。
 いちおう王子さまだからさ、俺。
 王子さまっぽく振る舞ってんだよ。
 …………疲れる」

 俺の目は、点になった。


 え。
 ちょっと待って。

 これ、アルフォリアのすきすきメーターが上がって、アルフォリアルートに入った時の台詞じゃなかった?

 お、ルート入った! って解りやすかったから憶えてる!



「アルって呼んでいいよ、リユィ。
 よろしくね」

 ちゅ、とやわらかな唇が、おでこに降る。

 耳まで燃えた俺は、撃沈した。



 きらきらアルフォリアの、でこちゅー、危険…………!!









──────────────────────────────────────


見つけてくださって、読んでくださって、ありがとうございます!

最初きらわれてますが、溺愛予定なので、どうぞご安心くださいね!


リユィとディゼの漫画を描いてみました。
*のユーザーページの登録作品から、お心の強い勇者の方は、もしよかったら!


読んでくださること、しおりを挟んでくださること、お気に入りに入れてくださること、感想をくださること、いいねやエールを送ってくださること、応援してくださるお気持ちが、めちゃくちゃうれしいです。


心から、ありがとうございます。




しおりを挟む

読んでくださって、心からありがとうございます!

リユィとディゼの漫画です。もしよかったら!

漫画だよ!
感想 51

あなたにおすすめの小説

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼毎週、月・水・金に投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

処理中です...