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ざまぁされる元王子!?

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 古ぼけて角が丸くなった小さな机、お尻がはみ出そうな、ちっちゃな丸椅子、寝返ったら落ちそうな古びたベッド、ちょこっとしか服を掛けられそうにない棚でいっぱいいっぱいな、ちっちゃな部屋に、茫然と俺は佇んだ。


 ぴらっぴらな服が、ひらひら揺れる。
 ちっちゃな窓は、閉まってる。


 隙間風だ──!!

 いや、今、春だから爽やかだけど、冬だと極寒だよ?



「…………え…………?」


 いやほんとに、何が起こった??


 ぽかんとしてたら、ぼろっちい部屋の扉が、ぎぃいと軋んだ。

 筋肉が、入ってくる。


「おお! 元魔王の息子、元王子リユィ、よく来たな!
 ははは! ちっちゃいなあ!
 キォタナ魔法学園へようこそ!
 俺は寮監、ゾイだ」

 さわやかに酷いこと言われた!


「ちっちゃい言うな!」

 ぷりぷりしたら、ゾイは、うーん? と首を傾げる。

 うん。
 真実を言って、何か違ったのだろうかと言いたいんだろう。


 いいか!

「真実は人を傷つけるんだぞ!」

 目をまるくしたゾイは、かわいそうなものを見る目で、俺を見た。


「真実を告げて、すまなかったな」

 それも失礼だな!


「よろしくな」

 しかし、手を差し出してくれたので、握る。


 おおお、筋肉が、もりもりしてる……! すげえ!
 ……これ、寮則破ったら、思いっきり、ぽこられるな……

 しみじみしながら、にぎにぎすると、ゾイは力こぶもりもりの腕で笑った。


「きみの魔力は最低、よって、キォタナ魔法学園での、きみの身分は最低だ!
 まあ、がんばれ!」

 にこにこした、ガチムチお兄さんゾイに肩を叩かれた俺は、茫然と筋肉の塊を見あげる。


 …………キォタナ学園…………?

 …………来おったな学園…………??


 この果てしなく、かっこわるいネーミングには憶えがある──!

 掠めた記憶を手繰り寄せるように、俺はない脳みそを振り絞る。


 俺の名前は、リユィ。
 元魔王の、元王子。

 頭はよくなく、魔力は最低。
 元王子の癖に、今も王子風を吹かし、平民の主人公を蔑み、いじめる。


 憤激の王子、宰相の息子、騎士団長の息子に報復され、全く更生の見込みなしと元魔王の親父からも魔界を追放され、帰るところもゆくところもなくなって、泣いてちいさくなる、皆さま拍手喝采の、ざまぁされる元王子!


 目つきわるく、頭弱く、魔力最低で、きゃんきゃん吠えるだけの、ちっちゃい残念な悪役!


 が、俺だ──────!!!




 え、待って待って、待って。
 この記憶、何?


 もしかして、前世?
 俺、異世界転生しちゃった?


 首をひねった俺は、手を挙げる。


「ゾイさん、紙とえんぴつ恵んでください」

 俺の持ってるの、無駄にぴらっぴらな服だけだからな!








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