【完結】残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい！

モブレの条件（やだー！）

　目を拭った俺は、鉛筆を握り締める。


　一番防ぎたい、俺のモブレざまぁが開くのは……ええと……確か……すきすきメーターが何人かでMaxだった時だと思う。


　そうだ！　いじわるメーターっていうのもあった！

　俺にいじわるされると、いじわるメーターが上がる。
　俺にいじわるされないと、いじわるメーターが下がる。


　いじわるメーターをMaxにして、すきすきメーターを何人かでMaxにすると、俺のモブレが始まった！！


　ちなみに、いじわるメーターを上げるのは簡単で、俺を見つけたら話しかけるだけ。

　いじわるキャラなので、どこにでもいる。
　話しかけるのは、とても簡単だ。

　話しかけると、むかつくことを言ったりしたりするのだが、それを眺めるかスキップしてると、いじわるメーターがどんどん上がってく。


　という訳で、俺のモブレは、まあまあ簡単に達成できちゃうよ……！！


　ぴ──ん──ち────！！！


　カタカタ震えた俺は、明日からの方針を決定する。


「主人公に話しかけない！
　近寄らない！
　見たら逃げる！！
　これでいこ──！」


　握った拳は、ちっちゃくて、とても頼りなく思えた。



　頑張れ、俺。


　俺のお尻を守るのは、俺だ！！！










　魔法学園、登校初日がやってきた！
　寮監のゾイが恵んでくれた鞄とノートと鉛筆、教科書を持ち、制服に袖を通す。

　わー、なんか、学生っぽい。
　じゃない、学生だ！

　俺、前世も今世も頭は残念だからな。
　勉強は気が重いうえに、魔力は最低だって！


「あぁうー」

　泣きたいが、魔界に帰れないので仕方ない。

　魔力ちょっぴししかないからな。
　界を超える魔法なんて、無理！！


　……キォタナ魔法学園かあ。

　制服がね、ブレザーなんだよ。
　黒のブレザーに、白いシャツ、黒いパンツ、で、攻めキャラがタイ、受けキャラはリボンを結ぶ。
　蝶々結びだ。


「あ、あの、俺、タイがいいです！！」

　寮監のゾイに手を挙げたら、ゾイはもりもりの力こぶで笑った。


「ない！！」

　なるほど、強制力来た。


「入学式で魔力測定するからな。
　その時にリボンの色が決められる。
　新入生はみんな、赤だ」

　仕方なく、俺は赤いリボンを蝶々結びにする。

　ちょっと鏡を覗いてみた俺は、目を瞬いた。



　さらさらの黒髪が、つやつやの輪を描いてる。
　髪の間から、ちょこんとちいさな角が２つ覗いた。

　魔力が少ないから、角もちっちゃい。
　魔族から見たら情けないが、人間から見たら……可愛い、かも？


　淫魔のお約束、♡の尻尾もあるんだけど、両親ともに淫魔じゃない俺の尻尾はちっちゃいので、下着のなかに仕舞ってしまえる。見えてないよ。

　耳はちょっと長めで、ぴこんと尖ってる。
　吸いこまれそうな紫の目に掛かる睫は、ふさふさだ。
　すらりと伸びる華奢な手足は、美味しそうだ。

　胸で紅いリボンが、ふわふわ揺れる。


　……………真に遺憾ながら…………！！
　背はちっちゃい。


　鏡のなかの俺がぷくりとふくれて、俺は首を傾げた。


　………………。


　あれ。

　俺、もしかして…………かわい？