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やな王子だったみたいです……

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 あー、詰んだ。


 俺の一生、終わった。

 最愛の推しの近くにいるのに、最高にきらわれてる…………!!



 強制わいせつだぞ、当たり前だ!!

 泣いた俺は、しおしお悄気て、ごめんなさいと頭を下げる。



「なんか、雰囲気違うな、リユィ」

 首を傾げるディゼに、俺は頷く。


「記憶が、混乱してるみたい。
 あの、もう、俺のわがまま、聞いてくれなくて、いい、から。
 来てくれて、ありがとう。
 ……うれしかった」

 頭をさげた俺に、ディゼが仰け反る。


「は!? リユィが俺に、頭をさげた……!?」


 …………相当やな王子だったんだな、俺。

 貧乏でひとりぽっちで、人に頭下げるなんて当たり前だった前世の記憶、もちょっと早く甦れよ!!

 しかし、モブレされる直前じゃないのはありがたい。
 感謝しとこう。


 推しには、最高にきらわれてるけど!!



「……もう魔界に帰ってくれて、いいから」

 まだちょっと泣いてる目で、微笑んだ。


「あっそ。じゃ、帰る」

 あっさり手を挙げたディゼが、扉を開けて帰ってしまう。


「あぁう……!」

 きらわれすぎ…………!

 いやいや、強制わいせつ、やったらだめ、絶対!!
 ぐしぐし泣いた俺が、鼻を啜っていたら、扉が開いた。


「泣き叫ばないの?」

 不思議そうに、ディゼが首を傾げる。


「……め、いわく、だから」

 ずびずび、鼻を啜る俺を見つめたディゼが、眉をあげる。


「ふうん。じゃあ、真剣に帰る」

「……うん。
 元気で──……」

 言い終わらないうちに、

 バタン!

 扉が閉まった。



 あぁう────!!
 めちゃくちゃ、きらわれてる…………!!


 ぐしぐし泣いた俺は、ゾイに貰ったノートに、ディゼに最高にきらわれている旨を書きつけた。

 書いてるだけで、涙がぼたぼた落ちた。

 鼻水まで、だらだらだ。
 しょんぼりだ。



 もう何を希望に生きていったらいいか、解らない──!


 ちがう、ざまぁでモブレで快楽堕ちを回避するんだよ! 忘れるな、俺!!

 ぱんぱん頬を叩いた俺は、おぼろげな前世の記憶を思い出してみる。


 お湯を注いで3分待ってる間に、ゲームで重要なイベントが始まっちゃって、ようやく終わったら伸び切って冷たくなったカップラーメンに、固まった白い脂が浮いてて切ない記憶とかどうでもいいよ!

 大事なのはゲームの内容だ!


 主人公は、平民だけど魔力の強い、愛らしい男の子だ。

 皆大すきピンク髪!

 ぴんく髪の由来調べたけど、解らなかったのを憶えてる。
 そんなことばっか憶えてるな、俺の残念な頭!


 いやいやいや、前世の記憶があるだけすげーよ、がんばっていこー!

 拳を掲げた俺は、ノートと睨めっこを再開する。


 ゲームで、確か攻略対象は……王子、宰相の息子、騎士団長の息子、の3人から選べた。

 少な! と思った皆さん、これからですよ。
 誰かひとりを攻略した2巡目から、隠しキャラが登場したような気がする。

 誰のルートを攻略したかとか、俺のざまぁを見たかとかで、出るキャラが変わったような……?


 その隠しキャラ何人か攻略し終えると、俺のお付きとしてちらちら出ていたディゼが攻略対象になる。


 さいっっこうに、かっこい────!!


 超絶かっこいいスチルと、超絶イイ声に溺愛されてくださいな感じのキャラだった。



 ラスボス的な扱いのディゼ!
 かっこよさも突き抜けていたディゼ!


 隠しキャラで紹介されてたディゼを見た時、このゲーム絶対買うと思った。

 ひと目惚れだった。


 最高の、最愛の推しだった。



 …………せっかく、傍にいられたのに…………きらわれた。



 何もかも、俺のせいで。







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