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通告、痛い

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「……おーい、だいじょぶか、リユィ」

 ぱふぱふ、ディゼが、ちっちゃい寝台に押し込まれた俺の頭を撫でてくれる。


 鼻血噴いて倒れたんだぜ。
 情けなさ百万点!

 まあ、推しが近いとそうなるよな。
 絶対、俺だけじゃない。


「顔、赤いぞ」

 わわわわわ、顔覗き込んだら、近い近い近い!!

 また尊死するから!
 ふぁあああ!!

 ディゼ、めちゃくちゃいい匂いする!
 何これ、誘惑の匂い!?


「……ディー、危険」

「何が」

「かっこよさが。
 限界突破し過ぎだろ」

 目を丸くしたディゼが、吹きだして笑う。


「リユィ、ほんとに俺の顔すきだよな」

 喉を鳴らして笑うディー、かっこい──!!

 きゃ────!!

 じゃなくて!


 前世の記憶と、今世の記憶が、みょーんと重なって、混乱する……!
 前世を思い出したら、今世が吹き飛んだみたいだ。


「え、えと、そだっけ。
 なんか、親父に飛ばされた衝撃で、記憶がちょっと……」

 苦しい言い訳に、ディゼはあっさり納得してくれたようだった。


「元魔王が言ってた。
 魔力の少ないリユィを、無理やり人界まで飛ばした。
 界を超えたから、記憶の混乱があるかもしれない、支えてやってくれって」

 おお、親父、いい仕事した!

 いやいやいや、飛ばさないでくれたら、息子がざまぁでモブレで快楽堕ちにならないんだよ!! 親父、頼むよ!!


 俺はそっと、涙を拭った。
 ディゼは、不思議そうに俺を見て、色っぽさの滴る唇を開く。


「リユィと初めて逢ったのは、赤ちゃんの時でさ。
 ちっちぇー手で、俺の服、握って離してくれなくて。
 俺が傍から離れると泣き叫んで大変で、仕方なく俺がお付きになったんだ」

 そ、そそそそうでした、ごめんなさい!


「喋れるようになったら、リユィの世話は全部俺がしろって、うるさくて。
 お付きなんだから、口づけて慰めるのは当然だとか、18歳になったんだから、お尻いじってくれないと親父に言いつけてぼこぼこにしてやるとか、散々わがまま言ってた」

「ぎゃあぁああアア!!!!」


 この間までの、自分の記憶が、ぴんくだ!!



『ちゅうしてくれなきゃ、やだ』

『俺、18歳になったよ!
 お尻、いじって、ディー♡』

『してくれないと、親父がディーのこと、めためたにするんだからな!』


 俺、着実に、きらわれ元王子の道を歩んでる────!

 以前に、要求が、だめ過ぎるから!
 それ、お付きに願うことじゃないから!


「俺がお尻いじってやらないと、寝られないんだろ。
 仕方なく、リユィのお尻いじり係として来てやったんだ。
 うやまえ!」


 …………そこ、胸を張るところなのかな?

 思いつつ、とりあえず拝んだ。


「お? 素直じゃん」

 凛々しい眉をあげて、ディゼが笑う。


「あ、あの、今までの暴言と、強制わいせつを、心からお詫びします。
 も、もしよかったら、あの、俺のこと、きらわないで、ください、お願いします……!」


 涙目で、叫んだ。



 緋色の瞳が、まるくなる。

 ディゼの唇の端が、あがった。



「最初から、大っきらいだよ、リユィ」










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