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最愛の推し、光臨!
しおりを挟むおぼろげな記憶を鷲掴みにするように、俺は貰ったノートに鉛筆を走らせる。
俺のちっちゃなお尻でも、ぼろっちい丸椅子から、はみ出てるぜ!
むずむずしながら俺は、ない頭を振り絞った。
なんか、前世の記憶があるみたいだ、ぞ?
確か、地球の、日本、て国に住んでた。
魔法は……ない、けど、電気と機械があった。
ちっちゃい部屋みたいな家で、ひとりぽっちで、ゲームしてた。
顔は、残念だった。
後ろも前も、清らかだった。
お金なくて、最愛の推しに課金できないのが、最大の悩みだった。
……ううー、ん……??
…………最愛の……推し…………
お??
俺のお付きで、俺のお世話してくれてる…………ディゼ、か……?
おおお??
おお! 画面を思い出した!!
タイトルコールいってみよー!
『みんな大すき、お約束ざまぁ!
魔法学園キォタナで、最高の恋を!
至高のBLゲーム『愛のラビリンス』開幕です!』
うん。
超絶王道で、至高とか言っちゃうのとか、愛のラビリンスとか何十年前の
感覚だよとか、来おったな学園か! とか、突っ込みどころ満載のテロップと
きらきらしい攻略対象たち!
の隅っこに描かれた俺。
お約束ざまぁされる役の俺。
どのルートでも、主人公の平民をいじめて、怒られたり、ぶっ飛ばされたり、
脱がされたり、モブレされちゃったり……!
ぎゃあああァアアアア……!!
18禁だったよ!!
俺、ざまぁされたら、モブレされちゃう――――!!
すんごい気持ちわるい感じの、脂ぎったおじさんに、めちゃくちゃ嵌められて、
すんごいあんあん言って、もっともっと♡ ご主人さま♡ って善がり狂って、
堕ちちゃう――――!!
ゲームしてる時は、リユィ、意外に可愛いな、え、モブレで快楽堕ち最高♡
何この喘ぎ、主人公よりすごくね?
とか、によによしながらやってた!
実際になるのは、死んでもやだ――――!!
「ああぅうあぁあ――――!!」
俺のかなしみの絶叫のなか、ぎぃいと軋む扉が開く。
「……あー、リユィ、大変だったな」
蘇芳の髪が、さらりと流れた。
切れあがる緋色の瞳が、元魔王に元王子にされた俺の処遇に、ちょっと
面白そうにひらめいた。
褐色の肌はなめらかに、春の陽を宿すように輝き、やわらかにあがる口角から、
艶が滴る。
ねじれて天を指す角と、きらめく爪から、魔族の証の紫紺の魔力が香り立つ。
生ディゼ、尊い――――!!
俺の前世の、最愛の推し!!
魔族のディゼだ――――――!!
思わず、拝んだ。
「どうした、リユィ。
衝撃で頭、おかしくなったか?」
笑ったディゼが、俺の頭を、くしゃくしゃ撫でてくれる。
え、うそ、最愛の推しが、俺の頭を撫でて、笑ってくれる……!
めちゃくちゃかっこいー顔が、近すぎる――――!!
毛穴ないんですけど!
あったかい!
髪、さらっさら!
肌、すべっすべ!
いい匂いする!
頭の芯が痺れるみたいな、爽やかなのに、ほのかに甘い、くうらりする香り。
うそ、真剣に、ディゼの匂い!?
ふぁあああああぁあああ――――――――!!
顔を覆った俺は、尊死した。
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