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びじんではない
しおりを挟む「精霊さま皆さまで仲良く行きましょうね」
キーアは、ちっちゃな精霊さんたちの頭をなでなでする。
「応援してくださったら、めちゃくちゃ心強いです。ありがとうございます!」
虚空に向かって丁寧に頭をさげるように見えるだろうキーアに、ルゥイもレォもネィトも微笑んで、ガダ先輩と主人公マェラはぽかんとして、ゼァル将軍は目を瞠る。
「……まさか、きみは……」
「精霊さまが、見えるのか。常に?」
茫然と呟くハゥザに、キーアは首をかしげる。
「いえ、あの、出てきてくださったときだけですが。ハゥザ学園長も、見えるのでは?」
「……いや、僕も、大魔法使いのフィリでさえ、一度お目にかかったことがあるだけだ。それだけでも滅多とないことで、祝福をたまわったに等しい。尋常ではない精度で魔法を操れる」
ハゥザの指先で、光がひるがえる。
呪文の詠唱も、魔法陣を描く動作も何もない。
こぼれる光魔法に、誰もが息をのむ。
「……ということは、キーアは──」
ハゥザが凛々しい眉をひそめ、将軍ゼァルは吐息した。
「精霊さまが見えるだの、話せるだの、言わないほうがいい。そぶりもやめて、もっとひっそりしなさい。でないと監禁されて実験体にされる」
いかめしい声に、跳びあがる。
「は、はい! 申し訳ありませんでした!」
あわあわキーアは頭をさげる。
「ルゥイもレォも注意してくれたのに、ごめんね」
ふたりは首を振った。
「キーアを心配しただけだから」
ルゥイの手が、慰めるように頭をなでてくれる。
「話すときは、こっそり」
『しー』
唇に指をあててくれるレォが、かわいーです!
「わ、わかった。気をつける!」
深くうなずいたキーアの後ろ髪が、もしょもしょする。
『きー、しかられた?』
顔を覗かせた闇さまに、こくこくキーアは、うなずいた。
「精霊さまとお話してるのがバレると、いろいろあるみたいです」
ぽそぽそ、ひとりごとに聞こえるくらいのちいさな声で話してみる。
『……僕の、せー?』
闇さまの目が、うりゅうりゅしてる!
「ち、違います! 俺の配慮が足りなかっただけで……あぁ、反応したらだめだった! えーと、ひっそり、こっそりお話するとだいじょぶです!」
ひとり演劇の練習みたいに、ふふって胸を叩いてみました。
ルゥイもレォも、ネィトもハゥザ学園長も、ガダ先輩まで、ぷるぷるして笑うのをこらえてる。
ゼァル将軍までちょこっと唇の端が動いてるよ!
マェラはふつうに笑ってる。さすが主人公!
『……きー、ごめんね』
ちっちゃな闇さまが、しょんぼりしてる……!
「闇さまが謝ることなんて、何にもないですから!
出てきてくださったら、めちゃくちゃうれしーです!」
小声でぽそぽそがんばってみたよ!
『……ほんと?』
「きーちゃん、嘘つかない」
たぶん!
胸を叩いてみたよ。
きゅう、と抱きついてくる闇さまが、めちゃくちゃ、めちゃくちゃかわいーです!
「え、ええと、こんな感じならだいじょうぶでしょうか?」
おそるおそる聞いたキーアに、ぷるぷるしてたルゥイが、はちみつの髪を揺らして笑ってくれる。
「楽しかった。じゃなくて、よくできました。
これからは、もうちょっとひと目のないところに行って、ちいさな声でお話するといいと思うよ」
ルゥイが頭をなでなでしてくれる。
「褒めるのは学園長たる僕の役目じゃないかな、ルゥイ。同級生がするのはおかしいと思うけど?」
ぺいとルゥイの手をのけたハゥザ学園長が、頭をなでなでしてくれました。
「よくできたね、キーア♡」
ロデア大公国でいちばんのハゥザのご尊顔がとろけて、ルゥイの頬が、ぶっすりしてる。
「あ、あの、ルゥイのも、ハゥザ学園長のも、うれしいです!」
にこにこしてみました。
「あー、そーゆーの八方美人って言うんだぜ」
ガダ先輩が鼻を鳴らした。
ネィトが隣で指を折る。
「伴侶の僕でしょ、ルゥイ、レォさま、ハゥザ伯父上、大公殿下も? 闇さま、光さま、風さま、地さま、水さま、炎さま、十一方美人だね!」
あんぐり口を開けたガダが、引きつってる。
「……いーなー……」
主人公マェラが指をくわえてる。
いや、主人公だから、これからだから!
あたりまえだけど、びじんじゃないよ!
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