【完結】悪役令息の伴侶（予定）に転生しました

お誘いです

　竪琴が終わる。

　夢の時間が、消えてゆく。

「あ、ありがとうございました……！」

　燃える頬で、頭をさげた。

「こちらこそ、踊ってくれて、ありがとう」

　ふわふわのはちみつの髪を揺らして、ルゥイが笑ってくれる。


「キーア、すごくかわいくて、かっこよかった」

　とろけるような、あまい笑みを浮かべて抱っこされたら、ルゥイの香りとぬくもりで、胸がいっぱいになって

　きゃ────♡♡♡♡♡　になっちゃうよ！


　スチルパレードに、頭のなかが、お花と♡であふれてる。

　踊っていて拝めなかった分まで、たっぷり拝んだ。

「尊い──！」

　ルゥイが照れくさそうに、恥ずかしそうに、うれしそうに笑ってくれる。

　ふわふわ熱い頬でみとれていたら、低く凍る声がした。

「キーア、次、俺だから」

　青磁の長い髪が揺れて、ぷっくり膨れた頬で、レォが迎えにきてくれました！


　きゃ────♡♡♡♡♡

　どきどきする胸で駆け寄ろうとしたら、追いかけるように声がする。


「待て、レォ・レザイ！　覚えたから！　踊ろう、キーア！」

　やってきた大公殿下が、めちゃくちゃ笑顔です。



「…………は？」

　ぽかんとするキーアに、大公殿下が広やかな胸を張る。

「覚えた！　踊ろう！」

　どんと胸を叩かれました。

　１曲ルゥイと踊ってる間に、大公殿下は、リードされる側のパートを覚えて踊れるようになったらしい。

　さすが、大公殿下！
　ロデア大公国で一番のハイスペック！

「わ、わかり、ました……」

　家格の低い者に、拒否権は、ありません！

「──っ！」

　レォがくやしそうに、間違ってハンカチを噛みそうになってるので、あわあわ駆け寄ったキーアは背伸びした。

　つま先立ちになって、手をのばしたら、気づいたレォが屈んでくれる。

　さらさらの青磁の髪を、レォのちいさな頭をなでなでした。

「次に踊るから、待ってて。ね？」

　ふわふわ紅くなったレォが、こくりと頷いて、手を握ってくれる。

　ぎゅ

「待ってる」

　こくりと、うなずいてくれるレォが、いい子で、かわい──♡

　もだもだして、拝みました。

　生で３次元な攻略対象、ほんとに、尊い──！


　後ろの大公殿下が、ぶっすりしてる。



「お待たせしました、踊りましょう！」

　にこにこして手を差しだしたのに、大公殿下の凛々しい唇が、すねたみたいに尖った。かわいい。

「……そんなに俺と踊るの、いや？　いちおうロデア大公国で二番目の顔なんだけど……」

「めちゃくちゃ光栄です！　輝くご尊顔！　大公配殿下にも、あとで一緒に謝りにいきましょう！」

　うるわしのご尊顔が、ひきつった。

「……う、うん」

　ちょっとカタカタしてる。かわいい。



　大公殿下の肩にも手がギリギリだったので、広い背と引き締まった腰に腕を回して、踊る。

　さすがルゥイのおかあさん！
　めちゃくちゃいー匂いがする……！

　ちなみに、この世界ではジェンダーに関係なく魔法で子どもができるんだけど、魔力の高い人が主体となって魔法を行使するので、より魔力が高く強い人が、おかあさんになる。

　ものすごく高い魔力が必要なので、おとうさんにはなれても、おかあさんにはなれない人も多いんだよ。

　両親の身体にかなり負担はかかるけど、産まなくても平気なので、どんなジェンダーの人とも子どもができる夢の世界なのです。肉体関係も必要ないんだよ！

　というわけで、受け、攻めは関係ないのです。

　たぶん、大公殿下は攻めと思われます。たぶん……！

　その、国で一番ハイスペックな大公殿下を、顔も名前も声もないモブがリードして踊るとか、ほんとに真剣にありえないよね──！

　輝くご尊顔が、目の前に……！

　──ルゥイがおっきくなったら、こんな感じになるのかなあ。

　胸板厚い。
　あったかい。
　いー匂いする！

「ふふ、キーア、かわいい♡　脈はあると思っていいのかな？」

　ぎゅ

　抱きよせられて、見あげる瞳は、ルゥイとおそろいだ。


「ルゥイ殿下が、大人になったら、こんな感じなのかなって、うっとりしてました」

　正直に告白した！


「………………ひどくない…………？」

　ちょっと涙目になる大公殿下も、かっこかわいーです！