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アンデッドの国

PVP

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 どんと強化した魔法をぶち放す。
 先程見てせてくれた『ヘルフレア』を形成して、巨大な炎の球はデッドロードに向かって地形を焼き破壊しながら突き進む。
 だが、それでも奴は笑って見せた。余裕の笑みである。

「中々やな!! だが、俺と比べるとへっぽこすぎるわ!」

 そして俺が出した魔法と同等、いやそれ以上で返して来やがった。
 結局は模倣した偽物のスキルでは本物には勝てない。
 分かりきっていた結果だ。
 魔法は確実に奴には勝てない。一応純粋魔力なんだけどな。

 だから近接で攻めるべき。
 奴の魔法が俺の魔法を呑み込んだ瞬間を狙って奴の懐に飛び込んだ。
 警棒を展開して斜め下から振り上げる。

「なんやそのへっぽこな武器は!」

「ドラゴン素材を侮るな!」

「うっしゃ!」

 ただの魔力を固めた拳が警棒と衝突し、火花を散らす。
 重い一撃が俺の全身に襲い掛かり、体が地面に沈んで行く。
 なんで骨だけにこれだけの力が出せんだよ。
 そう言う俺は骨もなくて皮だけの存在だけどさ!

「お前はこの世界の原理を知らないのか!」

「ちくしょう!」

 バックステップをしながら警棒を強く弾いて脱出した。
 警棒が凹んでまともに使えそうになかったのでその場に捨てる事にした。
 既に外部装備の武器は必要じゃなくなっているから惜しくはない。
 ドラゴン素材なのでちょっと辛いな。

 まぁドラゴン素材の武器は自分専用だが扱う事は可能だ。
 リーシアの持つスキルのお陰で、使いやすい武器が増えた。
 ⋯⋯まぁ検証しないと分からない事も多いけど。
 どうせ、適当な武器は奴には通じない。

 再び強く踏み込んで懐に入り込み、フェイントを混ぜた拳を突き出した。
 フェイントは簡単に見破られ、無駄のない短い動きで避けられ、反撃の足蹴りがしたから伸びて来る。
 空気を切り裂く蹴りを横ステップで避けるが、耳が吹き飛ぶ。
 飛んだ耳を口でキャッチして食べて再生させる。

「おもろい力やな!」

「知るか!」

 同時に突き進み魔力を纏わせた拳を突き出し合う。
 相手は雷撃を纏わせた拳、対して俺は火炎を纏わせた拳。
 強いのは相手の方だった。
 鱗にヒビが入り砕け散る。
 砕け散った肉体は霧となり空気中に魔力として溶け込む。

 距離を話して再生させる。
 炎が灯って肉体が再生され、服も当然再生される。
 その光景を見ながら高笑いをしてデッドロードは叫び散らす。

「魔物は魔力量が多い方が強い!」

「なんだその脳筋みたいな考えは⋯⋯」

「事実や。肉体の構築、魔法の質力、その全てが魔力によって決まっている。特にプレイヤーはその傾向が強いんや。人間でもな? だから骨だろうがゾンビだろうが関係ないんや!」

「それで、お前の方が多いから強いと?」

「それも少し違うな。お前の方が魔力量自体は多いんや。だが、扱いがなっておらん。なんもかんも俺の方が上。だからお前は負けるんや。魔王クラスのこの俺にな!」

「あっそ」

 魔力の操作が勝敗を分けているのか?
 いまいち分からない。

「ま、実の言うところ分かってない。だが、一つだけ分かる事がある」

「⋯⋯?」

「魔王クラスの俺とただの人間であるお前では、住む世界が違って事や!」

 相手の魔力が膨張した。
 七色のオーラを纏った相手が放つ気配と言うか威圧と言うか、それが増した。
 重圧だけで体がすくみそうになるが、それを気迫で抑える。
 リーシアを苦しめる奴を野放しに出来る程、俺は優しくない。

「くらえ! 爆炎拳」

「シィ!」

 爆炎を纏った拳を突き出され、業火が迫って来る。
 それをギリギリで避けるが、すぐに懐に入り込まれた。
 そして高速の二十連撃の拳が飛んで来て、防げたのは半分以下。
 体に弾ける様な痛みを受けながら吹き飛ぶ。

「ふぅ」

 まじで痛い。
 ⋯⋯なんだ。視界が揺れる。
 ここまでのダメージを受けたのか?

「なんだ、これ」

 体のあちこちから青色の液体が漏れ出す。
 もしかして、これは血なのか?
 いや、魔力の液体と言った方が正しいか。

「なんや? もう限界か?」

「⋯⋯そうかもな。お前、強いよ。俺が会った中で誰よりも強い」

「それりゃそうや。強くなる為に最善を尽くした。だからこそ、俺は魔王クラスになったんや。既にプレイヤーの中でも一線上なんや。諦めて俺の肥やしとなれや」

「ははは。それはお断りだ」

 ぶっちゃけ、ここまで強敵だとは思っていなかった。
 なんやかんやでこの状態でも勝てるって思ってた。
 だけど、今相手が出している力はまだ全力ではない。
 だと言うのに格上の風格を感じている。
 あのドラゴンよりも絶対に強い。

 つまり、俺じゃ勝てない。
 多分、物理的な技術なら俺の方が上だろう。
 だけど、奴はそれ以外で俺を上回っている。
 魔力の扱い方、魔法の力、スキルの扱い方、そして知識。
 純粋魔力を持つ俺は魔物が扱う魔力が放つ魔法よりも強力になる。だが、それでも奴を越えられない。

 純粋に魔法の扱いに慣れてないのが影響しているだろう。
 強い。奴はな。
 と言うか、物理攻撃がなんで俺に通用すんだよ。

「⋯⋯お前、体全体に魔力を流しているのか?」

「お、ようやく分かったか。せやで。俺の体に魔装用の魔力を巡回させている。この黒い骨はそれが影響いているんや。分かっても対処は出来ないやろがな」

「⋯⋯攻防両刀の魔装と言う技術か。お前はこの世界について詳しいし、そして力がある」

「せや。もうええか」

「ああ。もう十分だ。スキルの発動時間は終わった。本気で行く。【龍王神化】⋯⋯」

『ダメだよ。それを使ったらつまらない』

 俺の最大の切り札を使うとした瞬間だった。
 頭の中とかではなく、俺の意識そのモノが別世界に行く様な感覚だった。
 意識が薄れて覚醒すると、周囲は落ち着く真っ暗な空間だった。
 奈落の底と思われる程の何も無い虚無空間。
 これが精神世界。

「一体何が⋯⋯言葉が!」

『やっほーゼラニウムくん』

「お前は誰だ?」

 俺の目の前に現れたのは光を纏ったヒスイだった。
 だが、当然ヒスイの見た目を借りただけの偽物だ。
 言うなれば俺と同じような感じだ。

『にしし。君とは違うよ。僕はね。神様だよ? 崇めたまえ』

「⋯⋯なぜ止めた?」

『だってそれをやったら君は簡単に勝ってしまうだろ?』

 そうか。
 自称とは言え神を名乗り、そして俺を無理矢理戦闘中に精神世界に行かせた程の力を持つ奴が勝つと言ってくれた。
 やっぱりあれはすごいスキルって事だな。

「⋯⋯本当になんで止めた?」

『君と同じ理由だよ。自分勝手で自己中でクズみたいな考え方⋯⋯面白くないから』

「くだらん」

『そうでも無いよ~重要だよ。娯楽として、面白くないのはごめんだよ。って言うか、あの力使っちゃうと君はあれに甘えてしまう。⋯⋯ま、あの力はあの世界でも超ちょー強い力なんだけどね』

「へー」

『興味無さそうだね。もっと僕の話に興味持ってよ』

「くだらない。さっさと返せ殺される。俺はヒスイ達を守らないといけないんだよ」

 この言葉に神は嬉しそうに笑う。
 その笑顔は子供のように無邪気で心底嬉しそうだった。
 ヒスイの体を使っているので本当に苛立ちが湧く。

『だーいじょうぶ。外の世界では時間が止まってるご都合設定だから。ちなみにあのエルフちゃんの見た目を使ってるのは僕、カオスさんの見た目が存在しないからだよ』

 言葉に出さなくても心は読めるのね。
 なら言葉に出すのが面倒なのでこのまま話す事に決めた。

 カオスと名乗った神はそのまま俺の前に歩いて来る。
 そしてビシッと人差し指を向けて来た。
 口が裂けているのかと思う程の細長い笑みと共に。

『君さ、気づいている? 無意識に守るべき存在を作り出して依存している事にさ』

「⋯⋯は?」







◆◆◆◆
大変申し訳ございませんでしたああああああああぁぁぁ!
金曜日の投稿の件ですが、基本的に夜8時40分に見直して修正し予約投稿と言う流れなのですが、本当に眠くて7時20分くらいに寝ていまして⋯⋯。
なので珍しく土曜日投稿です!
自分の想像していた世界観をダラダラと説明してしまう感じがあるので、説明の長い話が次回に入ります。
カオスとゼラの会話ですね。
それでも全ては説明しません!それだとつまらないですからね!
書いたて楽しいです!!

ちなみにデッドロードさんもゼラさんも生前の名前なんですが⋯⋯秘密です!!
あと、デッドロードさんはまだ本気じゃないです。
何故本気出さないの? 簡単ですよ。戦いを楽しみたい、です。
あとはゼラさんの目にまだ『余裕』が見えたので本気を出さなかったと思われますね。
ゼラさん本人は気づいてません。

本気出てない相手に本気は出しませんよね。
スキルを自覚している二人の戦い、まだまだ続きます。
てか、このままだとゼラさん負けてしまいます。デッドロード強い。はっきり分かったね。

次回も楽しみにしてくださると嬉しい限りです!
感想を頂けるとモチベがググーんと伸びます!
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