万能ドッペルゲンガーに転生したらしい俺はエルフに拾われる〜エルフと共に旅をしながらドッペルゲンガーとしての仕事を行い、最強へと至る〜

ネリムZ

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アンデッドの国

教会内部

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 俺達は屋根の上を移動している。
 ゾンビの状態で地上を移動するのは時間か掛かるし精神的に辛い。
 足は豹やカンガルーなどを利用している。
 ちなみに獣人の方を利用しており、【獣王化】を足だけしている。

【獣神化】の理解度がマックスだとその下の奴らは軒並みマックスになるので余裕で扱える。
 しかも動物の肉球は音を遮断する効果があるのでゾンビに察知されにくい。
 後はヒスイをおんぶしてぴょんぴょん移動する。

 ヒスイの温もりが背中から感じられる。
 呼吸する度に鼓膜を揺らす。⋯⋯少しくすぐったい。
 流石に呼吸を止めてとは言えないので我慢するが。

 近い屋根の場合はあのうさぎのスキル【縮地】を使って素早く移動する。
 触れているヒスイも一緒に移動出来る。
 長らく使っていたからか、かなり魔力消費が抑えられている気がした。
 これも技術の向上とやらに含まれるのだろうか?

 そんな感じで、何も会話せずに無音で移動し、教会まで辿り着いた。
 着飾った豪華な教会。ガラス窓にはなんかの天使の絵の様になっていた。
 そして出入り口を守るのは二人の騎士だった。白色の鎧だ。

聖騎士パラディンですかね?」

 パラディン? 聖騎士かな。
 取り敢えずこれで確実に人間の生存者が居るというのが判明した。
 神経を研ぎ澄まして中の気配を探ればかなりの数、人間の気配を感じた。
 生存者が集まっているようだ。

「中に入るか」

「ゼラさん大丈夫ですか?」

「こことは違う教会に侵入した事あるから大丈夫」

「そうなんですね。⋯⋯え?」

 マントを俺もヒスイも纏い、武器を露出させておく。
 俺は武闘家と言う雰囲気を出したがら、リーシア大人の姿になる。
 黒髪黒目だ。ロングストレート。
 対してヒスイは長い耳が人間のようになり、整った顔立ちに碧眼、そして金髪の人間だ。短剣を腰に用意してある。

 弓矢は大きいのでエドに放置してある。
 旅の間の訓練でヒスイも短剣は凄く上達している。
 それだけでも問題ないだろう。第一、ヒスイの本分は魔法だ。
 完全に旅人と言う雰囲気の冒険者に変装完了。

「これ全部皮膚なんですよね?」

「そうだな。中を見たらスカスカだ」

「マントと服は分離出来るんですね」

「⋯⋯気にしてなかったけど、そうみたいだね。全体的に体積が増してるかな?」

 ま、そんな事はどうでも良いので屋根から跳び降りて教会に侵入する。
 聖騎士達が剣を抜いて構えるが、俺達が人間だと分かったら剣を収めた。

「まだ生存者が居たとは。さ、中に入れ」

「大変だったな。中は安全です。どうぞご安心を」

 人間に対しては優しいようだ。

「連れにエルフがいるのですが、連れて来て良いですか?」

 そう言う提案をしてみる。
 ちなみにエルフは人間に化けている。
 この話のエルフはただの確認だ。

「それは残念です。ここには亜人などでは立ち入ってはダメな場所です。心苦しいと思いですが、諦めてください」

 声のトーンが全く変わらない。
 寧ろ俺達に亜人の連れが居ると分かった途端に雰囲気が少し変わった。
 毛嫌いしているこのような気配だ。
 やっぱりこの国だな。

 俺達は教会の中に入る。
 中にはブルーシートを広げて避難民達が家庭事にまとまっていた。
 配給されただろう数少ない食料を分かち合いながら、子供には多く渡している姿があった。
 ただ、誰もがこの世が夢だと思っている感じが見て取れた。

 目が虚ろなのだ。
 これだけしか生き残っていなかったのかと考えると、⋯⋯なんも感じないな。
 だって元々潰す予定だった国の住民だ。
 苦しもうが悲しもうが俺は何も思わないし感じない。

 一般人の他には聖職者や聖騎士が居るくらいだった。
 足音を鳴らしてこの場の誰よりも魔力が多く、存在感を放っている人物が食料とブルーシートを持って来ていた。
 見るからに『教皇』と言われるべき風格のおじさんだった。

「旅の御仁よ。こんな不幸の中に来てしまうとは⋯⋯取り敢えず、これらをもって案内に従ってください」

「あの、何があったか聞かせて貰えませんか?」

 俺が先行してそう言った。
 教皇は隠すことなく話してくれた。

 数十時間程前に突如として現れたエルダーリッチと言う死霊系魔法のエキスパートの魔物が現れた。
 そして扱った大規模魔法によってこの国は一度瘴気に包まれた。
 耐性の弱い者から次第にゾンビへと変貌し、ゾンビが生存者に攻撃してゾンビを増やした。

 建物に入っていたり、後から国に来たりと、そんな偶然の産物たる人達は生き残りこの教会に入った。
 教会は『聖域セイクリッドフォール』で守られている為に魔性生物は侵入出来ないらしい。
 安全圏な教会は数少ない少量を分かち合いながら助けが来るのを待っているらしい。

 逃げ残ったのは僅か16世帯、そして個人や教会の中に居た人達。
 合計53名が生き残ったらしい。
 エルダーリッチは一度大規模魔法を使ってからは存在が確認されてないとか。

「これは正しく災害パンデミックです。短くはないと思いますが、きっと助けが来る筈です。それこそ、勇者様が」

「そうですか。情報ありがとうございました」

 案内に従って俺とヒスイは指定された場所に歩く。
 頭を抑えて焦点の合わない目をしている男性がボソボソと呪文のように唱えている言葉が聞こえた。

「全部獣王国の奴らのせいだ。一ヶ月後とか言いながらいきなり攻めてきたんだ。不意打ちだ不意打ち。逃げようとしたのに。逃げようとしたのに」

 ⋯⋯その言葉には少しだけ苛立ちが芽生えた。

 だけどすぐに冷静になった。
 俺も元々人間だから、ある程度彼の考えとやらが分かってしまう。
 今まで虐げてきた奴らに立場が逆転されても、そこで因果応報や自業自得とは思わず、「なんでこんなことに?」となる。
 結局のところ、人間とは自己中な生き物だ。そしてこの俺も。

 全ての生命が自分の事を大切に思っているのは当たり前の事だ。
 世の摂理だ。
 子供の為なら、愛する人の為なら、その命を差し出せる。
 そんな人がいても結局はそれも『自己中』の範疇だ。

 自分がそうしたいから、自分の欲求を満たしたいからそう動く。
 多分、俺もその一人でに成れるだろう。
 ヒスイ、リーシア、リオさん、エドの人達の為なら俺は命を使える。
 だからこうしてここに居る訳だし。

 案内された場所は柱近くの隅っこだった。
 やっぱりよそ者は成る可くガイアにしたいらしい。
 貰った食料も最低限よりも少し少ないレベル。
 冒険者だから大丈夫ってよりかは、部外者だから関係ないって感じだろう。
 俺は良いけどヒスイが心配だ。

 なので食料は全部ヒスイにあげる。

「良いんですか?」

「何のための食事が要らない体だと思ってんだ」

 さて、気配的にヒスイの影にまだアイツが居る。
 あの教皇の話が嘘じゃないのは確かだ。
 この辺にはゾンビが寄って来ない。
 でも、俺達は入れている。
 その理由が聞きたいので、呼び出す事にする。

「居るだろ? 出て来い悪魔」

「はい」

 ヒスイがいちいち悪魔に驚く。
 ⋯⋯ちょっと面白いかも。ナイス悪魔
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