万能ドッペルゲンガーに転生したらしい俺はエルフに拾われる〜エルフと共に旅をしながらドッペルゲンガーとしての仕事を行い、最強へと至る〜

ネリムZ

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アンデッドの国

とある聖女の獣人国巡り

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「一体どんな速度で移動してんだよ。徒歩をいたわれよ。だけどあと少しで獣王国だ。これでようやく、神水を『対象者』に与えられるぞ!」

 とある最強クラスのシスターが草原を歩いていた。
 身の丈程のマジックステッキと言う魔法を扱い際に補正が入る魔道武器を支え杖代わりにして。
 このマジックステッキには神聖力が詰まっており、聖職者にとっては最高峰の武器とも言える。

 彼女に与えられた任務は『神指』で導かれた『対象者』と例えている相手に『神水』またの名を『進化の聖水』をあげる事。
 それを行う為に徒歩で獣王国まで向かっていた。
 何故馬車を使わないかと言うと、そもそも獣王国まで走る馬車がないからだ。
 かと言って転移や飛ぶ事も出来ないので歩いている訳である。

『オガアアアア!』

「うるっさい!」

 彼女を襲いに“黒鬼ブラックオーガ”と呼ばれる中ランク上位チームでようやく相手出来る“大鬼オーガ”の亜種。
 そんな魔物相手に片手間で発動可能な神聖魔法『アンチモンスター』を発動して消滅させた。
 尚無詠唱。

 彼女の実力は相当なモノだが、教皇の意向により目立った活躍は無い。
 活躍しても証拠が残らない。

「さて、もう一度。我が神よ、貴方様が示す道をワタクシめに導きたまえ」

 刹那、獣王国とは違う方向に光が伸びる。
 そして彼女は悟った。
 次は『ブランシュ』と言う国だと。

「昨日まで獣王国なんだけど? 本当にどんな速度で移動してるのよ! ムカつくわね! ドラゴンにでも乗ってるの! なんてね、そんな訳ないか。少なくとも獣王国から飛ぶのは大きな鳥だし」

 この台詞、大正解である。
 真っ黒な宝石のような鱗を持つドラゴンで高速飛行している。
 そんな対象に普通では追い付けない。

「あぁ。辛。なんで大見得切って『はい!』なんて言っちゃったんだろ。後悔。本当に後悔。あぁ我がしゅよ。どうしてわたくしにこのような使命をお与えになったのですが⋯⋯いや、託しのは教皇様か」

 そんな一人コントをするくらいに余裕がなかった。
 一度獣王国で休んでから何かしらの移動方法を確保しようと決めた。

「さっきのオーガ、力で脅して馬車代わりにすれば良かった」

 そして門のところに到着する。
 当然対応するのは獣人族であり、身分証を提出する。

「これは!」

「とある使命の元、一度この国を使わせて貰いたい」

「はい。畏まりました」

 彼女が信仰する神の教会はとても大きい。
 故に色んなところで広まっており、この国でも信仰する人は居る。
 獣神と呼ばれる神と彼女が信仰する神の二つを信仰している。
 彼女の信仰する神はどんな種族にも平等に恵を与えるという言い伝えがあるからだ。

「ようこそ、獣人国エドへ」

「⋯⋯? ここは獣王国ではないのか?」

「はい。つい先日、我々はここを正式な国として、獣人達の住まう国、獣人国エドにしました」

「そうなのか。知らなかった」

「今はまだその事を広めている最中です。同盟国は大々的に告知するそうです」

「そうか。カオス様の祝福があらん事を」

「ありがとうございます」

 そして彼女は入国した。
 木造建築が主体のこの国は少しだけ苦手意識があった。
 文明が遅れていると思っているからだ。

「とりあえず宿を探さないとな。土地勘ないし、誰かに聞かないと⋯⋯なんだあれ?」

 そこには大々的にタイトル『案内パンフレット』とあった。
 そんなよく分かりない物に彼女は興味を示した。
 近づき手に取る。

「自由にお持ちください⋯⋯か。どれどれ」

 広げた紙の中にはこの国の地図が描かれており、オススメな食事処や宿があった。
 これはありがたいと、彼女は宿に移動した。

「一泊お願いします」

「はい。銀貨2枚ね」

(相場よりも安い⋯⋯この国の物価が安いのかな? ありがたいや)

 そして渡された鍵のナンバーに従い、ナンバープレートを確認して部屋に入る。
 そして堅苦しいシスター服を脱ぎ捨てる。

「ストレージ」

 空間魔法の一種、収納魔法『ストレージ』を使ってグリフォンパジャマを取り出した。

「やっぱこれが落ち着く~宗教上の理由で魔物の姿の寝巻はダメなんだけど~フカフカで暖かいんだよねぇ」

 そしてパンフレットを再び広げる。
 銀色の前髪を右手で払い除け、解析魔法を使用する。
 これで内容が全て脳内にインプットされる。

「ふむふむ。フライトタクシー?」

 フライトタクシーとはこの国の特徴の一つ。
 大きな鷹の魔物が引っ張る箱に乗って移動出来る乗り物サービス。

「ほへー色々あるなぁ」

 そして再びシスター服に着替えて彼女は昼食を取りに向かった。
 慣れない箸を必死に使いながらザルそばを食べる。

「食べにくい⋯⋯でもちょっと美味しいかも」

 次に寿司を食べに向かった。
 緑色の物体を乗せている姿を見たので、彼女も真似をして食べた。

「辛っ!」

 わさびと言う物だと彼女は少し先に知った。
 そして二度とわさび有りの寿司は食べないと神に誓った。
 次にだんご、せんべい、おしるこ、甘酒を堪能する。
 この国の服も二着程購入した。

 温泉も楽しんだ。
 晩御飯も楽しんだ。
 結果、彼女は地べたに突っ伏していた。

「あれ? いつの間に金が消えた? 盗まれた? そんなヘマをするのか? この自分が? はは。まずい」

 夜遅くに出かけて魔物を探す事にした。
 森の中に入り彼女は自身の中に眠る神聖力を解放する。
 それを欲して周囲の魔物が迫って来る。

「はは。金欠なんで容赦はせんぞ。ジャッチメント!」

 聖なる光が周囲の魔物を蹴散らし、消滅させた。
 消滅させたら当然死体が残らない。
 死体が残らないのなら売る物も当然残らない。
 売る物が残らないから当然金欠は解消されない。
 つまり、彼女は再び途方に暮れた。

「おかしい。何かがおかしい。これはまさか邪神ロキの陰謀か! いや、それは無いな。うん」

 再び魔物を呼び寄せようとするが、警戒したのか誰もが来ない。
 なので彼女はどうしようかと再び考えた。
 そして森の中で朝日を迎えた。

「これなら行ける!」

 そして彼女が向かったのは病院だった。
 ここなら自分の力を活用してお金が稼げると思ったからだ。

「無い、んですか?」

「ああ。ここ最近は平和でね。誰も大怪我しないさ。なんか魔物が寄って来なくてね。まだ国際ギルドがある訳でもないし、冒険者は他国に居るしで、まぁ平和だよ。魔物が居なさ過ぎてびっくりするぐらいにな」

「じゃ、じゃあポーションを作りますが⋯⋯」

「それも十分だしなぁ。それに軽度の傷なら最近開発されたヒーリングクリームを塗ればすぐに解決。大きな傷も手術を行った後に回復魔法を使えば治りも速いし⋯⋯まぁ残念ながらシスター様がやるような仕事はこの場所にはありませんね」

「そ、そんなバカな」

 このままではマズイと頭の中がぐちゃぐちゃになる。
 その様子を見かねた医者が言葉を出す。

「シスター様の神を信仰する者もこの国には少なからず居ます故、やりようはあるのではないでしょうか?」

「それだ!」

 そして銀貨一枚でシスターが加護を与えると言うサービスを始めた(ぼったくり)。
 そして移動用に怪鳥を一体借りたりして、ブランシュへと移動する。
 加護を受けた人達は数ヶ月、健康に過ごせたと言う。
 中々子宝に恵まれなかったのに恵まれたり、商売が成功したり⋯⋯などなど。
 そんな噂が立ち、信仰する人が増えたのは今から数ヶ月後の話だ。
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