ふわふわ系美少女配信者の召喚士、配信切り忘れて男バレ&本性晒された挙句真の強さが露呈した〜大バズりして『TS魔王』と呼ばれました〜

ネリムZ

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召喚系配信者、誓いを立てる

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 俺は今、ダンジョンに来ている。
 久遠としではなく玖音として来ている。
 驚くかもしれないが、俺は人とパーティを組んでダンジョンに来ている。

 茜が聞いたら喜んでくれそうだ。
 そして俺の役目は召喚獣を使った後方支援だ。
 現在、11階層で山田を先頭に攻略していた。

 「そろそろ12階層に上がれる階段があるはずだ。この辺で休憩しよう」

 リーダーとして戦闘指揮をするのは大人しい性格の花園さん。
 しかし、普段皆を引っ張る役目をしているのは山田らしい。
 イケメンスマイルを貼り付け、バックパックから飲み物を取り出し、希空、花園さんの順に配る。

 ステータスの力があるおかげで俺は全然疲れていないが、一応水分補給をしておく。

 「悪いな西条」

 「へぇ?」

 さっきまで希空と花園さんばかりに声を掛けて攻略していた山田がいきなり俺に話しかけて来る。
 空気になっていたつもりだったので素っ頓狂な声を出してしまった。
 恥ずかしくて目が合わせられない。

 ⋯⋯あれ? 俺って1度でも目を合わせたっけ?
 考えないようにしよう。

 「レベル50の西条はこの階層退屈だろ? いつもなら転移石で上に行くだろ?」

 「⋯⋯そ、そうだね。で、でも、大丈夫。み、皆と、こ、攻略⋯⋯楽しい⋯⋯」

 俺、同級生の同性相手にする態度じゃないと思う。
 それと転移石ってなんだっけ?

 移動を再開し、俺は転移石について思い出そうとしていた。
 確か、記録した場所に転移出来るアイテムだったか?

 一度行った事のある階層の転移石を用意すれば1階毎に登る必要は無い。
 俺はマメがいるので存在を忘れていた。
 きっと、転移系のスキル持ちは重宝されるんだろうな。

 「モンスターが近くにいる、皆気を引き締めて」

 花園さんが静かに呟く。
 俺には感じない。
 レベルの差では無くスキルの差。それをひしひしと感じる。

 4人で壁に隠れながら敵を確認する。
 2メートル行くか行かないか程度の太った鬼が見えた。
 武器は棍棒⋯⋯当たったら骨が砕けそうだな。

 「オーガか。相手に不足無しだが、どうする花園?」

 「倒せる相手です。レベル上げも兼ねて倒します。のんちゃん、大丈夫?」

 「もち!」

 「⋯⋯えと、西条先輩は?」

 「大丈夫」

 希空が俺の顔を覗き込む。ビビる俺。

 「そこは、もちって言うんだよ?」

 「そ、そうなのか?」

 「問題無いぞ西条。希空、変な事吹き込むな」

 「だって凄ーく距離感じるんだもん!」

 プンプンする希空。
 山田は溜息を深く吐いてから、花園さんに視線を送る。
 花園さんはコクっと頷いてから、ダガーを抜いた。

 「私がヘイトを集めます。いつも通り背後から攻撃を。のんちゃんは山田先輩が攻撃を受けたら常に回復して⋯⋯私は全部攻撃回避するから大丈夫⋯⋯西条先輩はまずは見てて。これが私達の戦い方」

 メガネをカチャッと位置を調節してから、花園さんはオーガに向かって走った。
 軽く足を斬り、ヘイトを上手く誘導した。
 俺達に背を向けたオーガに向けて山田が駆け出す。

 鎧が揺れて音が少しするが、相手の攻撃を回避しながら攻撃し続ける花園さんのおかげでオーガは気づいていない。
 山田が肉薄してからは戦闘速度が加速し、オーガは数分で倒された。

 「どう2人とも? 凄いっしょ」

 自分の事のように誇り微笑む希空。直視出来ない光を放っている。
 その眩しさは彼女の容姿から来るモノじゃなく、純粋に彼氏と親友を誇りに思う心からだ。
 漫画のような青春の塊の3人⋯⋯幼馴染との関係に悩み逃げている俺の心に痛い程に突き刺さる。

 「西条パイセン?」

 「ん?」

 「いや⋯⋯なんか辛そうな顔してから⋯⋯」

 そんな顔してたのか⋯⋯。

 「気のせいだよ」

 俺は山田達のところに向かった。
 久しぶりの玖音でのダンジョン⋯⋯さて、俺は誰を召喚しよう。

 次の戦闘は20分後に始まった。
 この階層はオーガが多いらしい。
 オーガ2体、ゴブリンが6体⋯⋯中々に敵数が多い。

 「これは迂回した方が良さそう。あの数は無理だね」

 花園さんが合理的な判断を下す。
 誰も反対意見は出さずに迂回する事になる⋯⋯はずだった。

 「だったら俺が何とかするよ」

 「え?」

 正直のところ俺のレベルなら、この階層のモンスターは俺だけでも倒せるレベルだ。
 しかし、召喚士なら召喚獣を使うべきだろう。レベルも偽ってるし。
 久遠を知っている可能性もあるので、動画で出した人達は使えない。
 その中で俺が覚えている召喚獣⋯⋯。

 「召喚サモン智天使ケルビム、ルーエル!」

 天使の輪に羽、白いワンピース。
 ふわりと舞い降り出現したルーエルはナナエルと同じ天使族。種族的階級はナナエルの一個下だ。

 容姿端麗なのは当然かのように、精巧に作られた人形と言われても信じてしまう美しさがある。
 靴は履いておらず、地面にゆっくりと素足をペタリと着ける。

 「綺麗⋯⋯」

 「まじやば」

 「凄っ」

 花園さん、希空、山田がそんな感想を漏らす。
 ルーエルは俺の方をゆっくりと見た後、羽が生えているにも関わらず額を地面に押し付けた。
 そのポーズを一言で表すなら、土下座だろう。

 「え?」

 「自分のようなカスをご召喚頂き感謝の極みです盟主様! あ゙あ゙! 自分のような見る価値も無い存在に感謝されてもご迷惑ですよね申し訳ございません。⋯⋯せめての謝罪に我が命を⋯⋯」

 早口で捲し立てられ、俺は放心状態となる。
 
 ルーエルはナナエルと同様の光の魔法で自分に弾丸を飛ばそうとする。
 状況を理解した俺は慌ててルーエルを止める。

 「待て待て止めろ止めろ」

 「申し訳ございません盟主様⋯⋯」

 「止めろおおおお!」

 俺は必死にルーエルを抑える。しかし、止まる気を見せない。

 「迷惑って思ってないから! 来てくれてこっちこそ感謝してるから! ねぇ、だから一旦落ち着こ、ね?」

 「⋯⋯はい」

 なんなんだコイツ。
 かなり疲れた。

 俺が数少ない世十以外で覚えている一人を呼び出した。
 ナナエル傘下なら遠距離攻撃が可能と思い、後方支援なら最適かと思って召喚した。
 その結果がこれである。

 「西条パイセン、この子は一体⋯⋯」

 困惑している希空。
 俺は一言。

 「分からん」

 「わかっ」

 だって名前もうっすらとしか覚えてなかったし。
 こんなタイプだと知っていたら呼び出してない。

 「ですよね。自分のような存在価値がマイナスのゴミは盟主様の記憶に残る事すらご迷惑になる⋯⋯やはりこの命盟主様のために⋯⋯」

 「いや、捧げられても迷惑だからね?」

 「⋯⋯ですよね。自分如きの命では盟主様はお喜びになりませんよね。むしろ不快になりますよね。不快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ございません。自分は一体何を捧げれば⋯⋯」

 一向に頭を上げないルーエル。

 ⋯⋯呼ぶ相手間違えたなぁ。

 「⋯⋯西条、なんか言ってやれよ」

 「え?」

 「そうだよ西条パイセン! ルーエルさん? が可哀想だよ!」

 「うんうん!」

 「⋯⋯」

 花園さんまでも⋯⋯。
 このネガティブモンスターになんて言えば良いかなんて分かんないよ⋯⋯。

 俺は一度土下座して頭を上げないルーエルを見下ろす。
 智天使だと言うのにその威厳も何も感じさせない天使。
 流石はナナエル傘下と言ったところか。

 「ルーエル頭を上げて」

 「ですが、この醜い顔を盟主様の神よりも存在価値のある瞳に映す訳には⋯⋯」

 俺は両手でルーエルの頬を挟み、持ち上げる。
 俺の顔がルーエルの涙目の瞳に反射して歪んで見える⋯⋯え、なんでこの子半泣きなの?

 「醜い顔じゃない。俺の仲間に醜い奴はいない。命を散らす奴もいない」

 「盟主様⋯⋯」

 「ルーエル、俺は君の力が借りたくて召喚したんだ。⋯⋯出来れば、君の力を貸してくれないか?」

 「盟主様!」

 バッと立ち上がる。
 良し、元気が出たようだ。

 「はい! 自分のようなカスでお貸し出来るモノなら全て盟主様に捧げます。力も身も心も!」

 「え?」

 「自分の身体はナナエル様達と比べたら貧相⋯⋯後輩からは影で断崖と言われている程ですが、それでも良ければ!」

 「え、そこまでは求めてない」

 「⋯⋯ですよね」

 また地面に伏せる。

 うわぁ。面倒くさ。
 3人の視線が俺に向いている。とても冷ややかだ。
 これって俺が悪いのかな?

 こんなやり取りをしていると、オーガ達が俺達のところまで来ていた。

 「まずい! 油断してた!」

 花園さんがダガーを抜いて警戒する。
 他の2人も警戒する。
 多勢に無勢。しかもこちらは不意を突かれている。

 オーガの棍棒が1番近くにいる俺達に向かう。

 「ッ! 西条先輩!」

 花園さんの悲痛な叫びが響く。
 もちろん、俺は至って冷静だ。
 むしろ⋯⋯この展開を望んでいたかもしれない。

 「⋯⋯盟主様、自分のような存在が盟主様をお守りする事をお許しください」

 刹那、極太の光線がルーエルの人差し指から伸びてオーガを消し炭にした。
 文字通り、跡形も無く。

 「「「ッ!」」」

 絶句する3人。
 反対に動いてくれた事に安堵する俺。

 「ルーエル、オーガを一体残して全員倒して」

 「盟主様が自分如きを頼りに! ⋯⋯へ、へへ」

 ニチャアっと笑うルーエルに引きながら、俺は3人に近づく。

 「オーガは残して貰えるそうなので倒して大丈夫ですよ。レベル上げです」

 スラスラ喋れた俺は内心ガッツポーズをする。
 成長してるな、俺。

 「⋯⋯いや、でも」

 山田は震える指でオーガを指す。
 不審に思い指先を目で追う。

 「あー」

 ゴブリンは当然、元々そこに存在していなかったかのように消えている。
 そして残ったオーガは⋯⋯四肢を消され目と鼻を潰され牙を折られた状態だった。
 はっきり言おう。クッソグロい。

 「盟主様が⋯⋯盟主様が自分如きを頼りに⋯⋯これこそまさに天にも昇る気持ち⋯⋯自分、これでも天使なんですけどね。げへへ」

 ギリギリ生きているオーガの横で自分の世界に入っているルーエル。
 俺は3人に視線で許可を求める。
 同時にGOサインが飛ぶ。

 「ルーエル⋯⋯殺れ」

 「はひぃ!」

 ハイテンションのルーエルのオーバー火力でオーガは消えた。
 4人でオーガに合掌しつつ、俺は誓った。

 天使族は召喚しないと。
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