能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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二章 能力専門学校

35話 異能への進化と対価

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 未来予知や管理者やその他諸々は理解した。
 理解した上で分からない。どうしてその女性は怯え、無能力者に従っているのか。

「あぁ、どうして従っているのか疑問に思っているようだね。⋯⋯儂の娘のアビリティは触れた相手の未来を複数視る事が可能で、その行動を取らせればその未来に導ける事が可能なんだ。当然、自分の未来も視れる。で、視たんだよ。自分が恐怖で支配される沢山の未来を。そして、自分自身の未来は視た瞬間にその経験等が全て頭の中に入って来る仕組みらしくてね。勝手に従順に成ってくれたんだ」

「それって、虐待を前提にしてたのか?」

「そう言う事だよ。儂自ら虐待した事は無い。この子が勝手に怯えて従っているんだ。⋯⋯さて、そろそろ本題に入りたいね。もう下がれ。君は自由だ。自分の未来を視て、幸せを掴め」

「は、はい」

 女性に向ける目は優しい父親の目と成っていた。
 こいつの情緒が全く分からない。

 タバコを取り出して、吸い出す。
 煙をフーと吹き出す。

「娘を逃がしてくれてありがとう。ここら一帯は吹き飛ぶからね」

「なっ!」

 ここら辺に爆弾でも仕込まれているのか?
 それとも魔法か何かが仕込まれている?

「落ち着きたまえ。吹き飛ばすのは君だよ」

「は? そんな馬鹿な」

「くくく。それがあるんだよ。そして君は儂を殺す」

「は?」

 俺は人を殺した事は無い。
 これからもそのつもりだ。人として居られる数少ないブレーキなのだ。
 それを壊す事は無い。

「さて、そろそろ良いだろう。無能力者にはちょっと重くてね。雑に扱う事を許してくれ。それと、何も無いからキャッチする事をオススメするよ」

「は?」

 クーラーボックスを机の下から取り出し、机の上に置く。
 中を開けて、丸い物体を順に三つ渡して来る。
 危険な気配は無かったので、受け取る。

 刹那、内部から言葉に表せない感情が出て来る。

「あ? あ、あ、あぁああああああああああああぁぁぁ!」

 記憶が中から出て行く。

 福引でハズレを引いて気分を落とした俺に対して玩具を買ってくれた父親。ま、気持ちは嬉しかったけど玩具は対して嬉しくは無かったけど。今でも保管している。

 好きな果物を多めに分けてくれた母親。小さな事でもその優しさが嬉しかった。本当に。

 生意気だが、根は優しく面白い妹。誰よりも俺の小さな変化に敏感で良く驚かされた。

 そんな家族との思い出が頭から出て行き、目から涙となり流れる。

「嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! あああああああああああああああああああ!」

「ふふふ。あはははは! おめでとう雨宮君! 異能に進化したよ!」

 俺に渡されたのは三つの人間の頭。
 父と母と妹の頭。

 俺の周囲に大量の呪文スペルが出現し、呪文と呪文が合わさって行く。
 そして、大量のカードをひたすら生産する。

「あぁあああああぁああああああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!」

 一瞬、されど一瞬、世界から光が消えた。
 そして、加藤並の土地を吹き飛ばす爆発が空へと昇った。

 ◆

 ヘリが加藤並の跡地を囲み、沢山の能力者警察が降り立つ。
 先頭を立つのは能力犯罪者を取り締まる責任者だった。
 ポニーテールにし、かなり長い髪の女性。
 西園寺優子ゆうこである。

「⋯⋯また能力暴走災害、か」

 優子が見るのは、髪の毛から色が抜け、廃人となり、涙をただ流す一見高校生のような人物だった。
 その人が抱えているのは三つの頭。

「絶望による暴走⋯⋯第三者の手が考えられるな。まぁいい。運べ! それと、この男が持っているのも持ち帰るように!」

 それから数時間後、特別室で優子と廃人の男、天音が向かい合っていた。

「何が起こったか説明出来るか?」

「⋯⋯」

「お前の名前は、出身地は、年齢は、家族構成は、アビリティは?」

「⋯⋯」

「はぁ。まぁ予想通り」

 視線で近くの男を呼び、天音の頭を抑えさせる。
 机の上に置いてあるのはSSクラスの管理者が創った嘘発見器。
 相手が嘘を付いたと真理から読み取り判断する犯罪者号泣案件の魔道具である。
 市販のよりも当然強力だ。

「お前は人を殺したか?」

 男が天音の頭を前に倒す。嘘発見器は反応を示さない。つまり、それは事実。

 水平思考クイズのように、相手に無理矢理YESかNOを答えさせれば、それの真偽が分かる。
 それを使って優子は事情を把握しようとしていた。

「三人以上を殺したのか?」

 天音の頭を前に倒す。嘘発見器がブザーを鳴らし、反応を示す。

「三人以上では無い。二人以下か?」

 反応しない。

「一人か?」

 反応しない。

 これで天音は人一人殺した事になる。

(自覚はあるっと。アビリティの暴走だから難しいな)

 アビリティの力が膨大で、能力者が耐えれず暴走し、周囲を無差別に破壊する事が稀にある。
 それを能力暴走災害と呼び、大量の人が亡くなった場合などは、能力暴走大災害パンデミックと呼ばれる。
 今回の場合は高校の敷地を破壊しただけと言う暴走にしては弱い災害なので、天音は危険視はされて無かった。

「さて、では次の質問だ。お前は家族を殺したか?」

 嘘発見器が反応し、殺してない事を証明する。

「お前が持っていたのは家族の、首か?」

 反応しない。

(第三者に家族が殺され絶望してアビリティが暴走、それによりその犯人は死亡、家族はその犯人に渡されたと考えられる首のみ。だいたいこんなモノか? にしても不思議だ)

 広範囲を爆発させているのに、家族の首は綺麗に残っていた。
 それは不自然であり、優子の頭を悩ませる種でもある。
 アビリティ不明、名前不明、身分不明、何もかもが不明な廃人はとてもやりにくい。

(御家族を調べるにしても、顔しかないとなると⋯⋯はぁ。辛い。後輩莉奈に丸投げしたい)

 優子は次から次へと質問して行く。

 それにより、名前には、あねまみや、が入る事が判明。
 高校生だと判明。
 近くの高校を順に質問し、高校を特定。
 クラスを特定。名簿番号を特定。
 そして数分後、全てが判明した。

「結局、自分から話す事は無かった、か。そうだ雨宮、お前の御家族の葬儀だが⋯⋯ッ!」

 天音の目が虚空を見つめている用の感じながらも、優子は震えていた。

「お前もきちんと参列出来る用に手配する予定だ。⋯⋯お前の罪は今後の裁判で決定する事になるが、意図しない暴走はその能力者も被害者扱いだ。高校生だし、重い罪じゃないだろ。⋯⋯お前は人を殺してない」

「ちょ、優子さん?」

「証拠が無いんだ」

「そんなのアビリティがある場合簡単に消せますよ」

「あぁそうだ。こいつのアビリティはスペル⋯⋯なんたらだ。だが、相手も能力者な可能性は高い。三人もの人をバレずに殺害しているんだからな。そして、こいつは殺してると思っているだけ」

「妹さんと同じ年だから、情が移りましたか?」

「勝手に思っているが良い。牢に入れておけ」

「⋯⋯畏まりました」
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