能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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二章 能力専門学校

11話 友達

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 帰り際、雪姫が少し別件で現在居らず、千秋と結菜の二人きりになっていた。

 重い空気の中先に口を開いたのは結菜だった。

「あ、あのさ!」

「は、はい!」

「憎くないの? その、急に襲ったのに」

「憎くは⋯⋯ないよ。ただ、びっくりしたし怖かったし、今でもなんでって思う」

「すまん」

「反省してる?」

「はい!」

 結菜は千秋の目を見てしっかりと答えた。

「なら、反省の印に、今日から友達になってよ。同性で同じ学校の友達って雪っちだけなんだよね」

「こんなあたしで良ければ」

「なら決まり!」

 お人好し過ぎる千秋の提案に、結菜は屈託の無い笑みを浮かべて応える。

「ありがとう。本当に襲ってごめんね!」

「問題ないよ。⋯⋯」

「ん? ⋯⋯あ」

「はわわ! えと、その。お二人は、その。す、すみません!」

 顔が真っ赤でハンカチを落としてしまった雪姫の誤解を解くために奮闘する二人。

 その二人には小さいながらも、確かな心の繋がりが現れていた。

 ◇

 俺は世界最強の暗殺者(自称)の未龍である。

 元々ただの暗殺者だったが、アビリティを手に入れて、そこから適正にあったアビリティをかき集め、その適正アビリティも暗殺者向きだった。

 今では完璧に仕事を熟すエリート暗殺者だ。

 今回のターゲットは超マヌケで、迷宮都市の管理者である。

 年齢不明、性別不明、名前不明、全てが不明。

 分かっている事は迷宮都市の真のボスと言う事だ。

 それが今回のターゲット。

 そして、マヌケな理由は、俺のような暗殺者が迷宮都市に入れた、と言う事だ。

「へいお待ち。うなぎの刺身でございます!」

「問題ないんだよな?」

「へい!」

 ふむ。美味い。

 ここの店主は極悪の犯罪者だと聞いているが、⋯⋯見た目以外はなんとも普通の男だった。

 迷宮都市は基本なんでも揃い、娯楽も充実しており、潜入して中々に楽しい思いをさせて貰った。

 だが、依頼となると別である。

 マヌケなターゲットは毎週土曜日に都市に現れる。

 フード付きのコートを着ている真っ黒な人間。

 今日は土曜日、夜になった時が開始の合図だ。

 ターゲットは現在、女を侍らせて都市を散歩していた。

 マンションなどの窓から漏れ出る光しか人工的に見える光は無かった。

 だが、夜だと言うのに明るい。

 季節など関係ない、全ての星座が見れるようになっている空──天井──に輝く星のせいだ。

 日に日に星の位置は変わるがな。教育の為にも変わるようだ。

「さて、そろそろ仕事を始めるか」

 スナイパーライフルを構え、スコープを覗く。

 狙うは急所の一撃のみ。

「恨みは無いが、死ね」

 引き金を引き、乾いた金属を響かせ、銃弾は見事な円を描いて俺の足に命中した。

「いっ、だああああああ!」

 何故だ。何故俺の足に!

 ◇

 暗殺者に狙われていたようだが、俺の後ろを歩いている戦闘用人工人間冥土のキリ様が対応する。

 彼女は気候や空気の流れを操る事の出来る力を有している。

 その能力を利用して、弾丸の軌道を変えたのだ。

 そして、アビリティ自体はこの迷宮都市内で、悪意のあるアビリティは使用不可である。

「マヌケとでも思ってんのかね」

 暗殺者が入って来るのも、そしてそれを依頼した相手も知っている。

 ならば何故入れたのか、そんな疑問が出るかもしれない。

 ちょっとした実験だ。

 暗殺者と言う殺すのを職としている奴に迷宮都市を堪能させたらどんな結果が出るのか、気になったからだ。

 お陰で、秋様への負担が増えてしまったのだが。

「キリ様、ありがとうございます」

「止めろドッペル。今の見た目は天音様なのだ。敬語もよせ」

「はい」

 ◆

 黄雅を筆頭とした平和主義ではなく、弱い奴らの集まりが今俺の前に居る。

「こ、こんな額」

「それがあんたらの罪だよ」

「ですが、どうすればこんな額を俺らで稼げるって言うんですか!」

「バイトしろ!」

「そんなすぐに稼げませんよ!」

「うん。冗談だ。自然発生したモンスターを倒してそれを売れ。大きい奴なら一体の死体でも数十万は行く。小さい奴なら数万だ。人の手が通ってない、敢えて放置されてる山とかに行けばモンスターと会えるだろ」

「そんなの初期のアドベンチャーラーに狩り尽くされてますよ!」

「今はそんな奴らも居ないんだよ。文句あんのか?」

「ない、と言えば嘘になります」

「あそう。ちなみに拒否権無いから。小さい奴ら狩るにしても時間かかるだろ。俺の仲間を手伝わせるから、大きなモンスターを狩れ。武器も支給してやる。一時的な、武器な」

「は、はい!」

 サシャに任せる。範囲は日本全域だ。すぐに稼げると思う。

 さて、学校行くか。

「お前らもちゃんと登校しろよ」

「は、はい!」

 黄雅はあまり情報を持ってなかった。

 校長の見た目は覚えておらず、周りのグループの事もあやふやだった。

 青グループと緑グループがトップ争いをしており、緑グループが俺らの教室を奪った相手だ。

 そして中立を謳っいる赤グループ。

 少しだけ力を持った奴らがバラバラに動いている野良達。

 青、緑、黄、赤がメイングループで、だいたい15人程度らしい。黄グループだけは30人近くも居るようだが。

 そして、野良は暴れ回っているような。

「野良を沈めながら黄グループに入れて監視するか」

 前の学校の方では、その地域の『ヒーロー』を騙る輩が治安を守っていたようだ。

「天音おはよ!」

「よう。なんか今日も機嫌が良いな?」

「なんか毎日笑顔の能天気人間って思った?」

「思ってねぇよ!」

 昼の時間。

 教室をチラチラ覗く存在がいる。

 少ないクラスメイト皆がそいつを見て、嫌な顔をしながら警戒する。

 勿論俺も嫌な顔をする。

「あ、結菜ちゃん。こっちこっち」

「千秋!」

 千秋が手を振るので驚愕する。

 紫髪の女、結菜と呼ばれた暴力女は恐る恐ると言う様子で、俺達が使ってる机に来て、近くの椅子を持って来て座る。

「えと、お邪魔します」

「⋯⋯」

「天音そんな疑った目を向けないの」

 向けるよ! 寧ろなんで千秋がそんな笑顔なんだよ。

「だって千秋、こいつに何されたか」

「うん。もう良いの。結菜ちゃんは私の友達だよ!」

「その。あたしも、そのつもりです。えと、雨宮さん。その節はすみませんでした!」

 むず痒い。ここまで真剣で決意の篭った目を向けられるのは、辛い。

「まぁ、千秋が良いなら良いよ。俺はなんの被害も受けてないし」

「⋯⋯ッ! ありがとう」

 だが、心を許したつもりは無い。

「てか、なんであんな戦闘狂だったんだ?」

「はい! えっとですね。姉に追い付きたくて」

「姉?」

「はい。あたしの目標である人です。だから、強くなるために強い人と戦うために、襲いました。ま、雨宮さんに対してはフルボッコでしたけどね。あ、あたしは柴結菜です」

「知っているようだけど、雨宮天音だ」

「私は千秋だよ」

「なんで名前を言うの?」

「仲間外れ感があるから⋯⋯」
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