能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

文字の大きさ
43 / 86
一章 同格の管理者

43話 異能の強さ

しおりを挟む
「ふむ」

 カマキリの鎌にトンボの顔を持つモンスターの前にはショートヘアの美人が裸で立っていた。

 ミツルである。

 力を解放して本来の姿と力を手にしたミツルの種族は擬似人間フェイクヒューマンである。

 今の彼女を一言で表すなら、近接キラーだろうか。

「ギシシ」

「あまりジロジロ見るなよ」

「それは無理と言うモノだ」

「だよね。でも、あんまり裸を見られるのは好かないん、だよ!」

「ふむ。速い! しかし、姿が見えてたらお前の強みはないだろう!」

 モンスターはミツルのパンチに合わせて鎌を腕に向かって振るうが、その鎌は腕を通り抜ける。

「は?」

「はっ!」

 ミツルの拳はトンボの顔を強く殴った。

(ど、どう言う事だ。鎌が当たらず相手の拳は当たるのか)

「はぁ。本当嫌に成るよねこの力。異能に頼りきったクソみたいな力。だから、あの事件では折角強くなっても意味がなかった。ほんと、泣きたくなる」

 悲しい顔をするミツルは連撃をモンスターに放つ。

 しかし、モンスターも賢い。すぐさま見方を変えて攻撃を躱し、魔法で攻撃する。

「魔法を放つ時に鎌を振るうのか」

 モンスターの魔法は鎌に風の魔力を纏わせて斬撃を放つタイプだった。

 これには鎌の力も必要とし、少しばかりは物理攻撃としての性能が存在する。

 そして、物理攻撃としての性能がある場合、ミツルには当たらない。

「な、に?」

「残念。さぁ、始めようか無謀で泥沼な殺し合いを」

 ミツルは物理攻撃を完全に無効化する事が出来る。

 しかし、それは体質で異能である。

 タクヤは技能で瞬時に人形を作り操る事が可能で、外部的な異能効果は無かった。

 ミツルの傷が徐々に再生して行く。

「無謀か。そう見えんが」

「まぁね」

 シュシュ、ミツルは拳をその場で振るいながら自分の体を確かめる。

「自分の姿を他の人が見るのって慣れてないからね。それに、この体は再び封印される。そう言う約束だからね」

「成程、神絡みか」

「そそ、神の話で一つ質問。な~んで、あんたの主は変な神に従ってんの?」

「さぁな。サポーター殿なら知っているかもだが、我々は命令に従うだけだ」

(強制命令、か。こいつの強さ的に真の魔王には成ってないのかな? 傲慢の魔王に近いな)

 ミツルは少し考える。

(傲慢の魔王は、嫌いだ。あんなのは、管理者じゃない)

 ミツルは高速で移動して高速の連撃を放つ。

「ふん。モンスターの体力は沢山だ。長引⋯⋯くはぁ!」

「これまた残念、連撃の中に透明な拳が入ってます。きちんと見なー」

 理不尽極まりない攻撃。

 腕が何本も生えているように見える連撃の中には目視が極限まで難しい透明の拳も入っていると言う。

 モンスターはただ、本当にただの生きるサンドバックになった。

 ◇

「あああああああああああああ!」

 鞭を弾丸を生成し、放ってちぎり脱出するヤユイ。

 生命力──魔力を吸われてかなり弱っている中での解放。

 しかし、本来の姿の力がタクヤとミツルよりも高い為、本当の姿では無い。

 メイド服から禍々しい漆黒と深紅のドレス。

「はぁ。はぁ。この形態だと、まだ内部的異能は使えないんだけど。はぁ。タクヤは存分に人形を作ったんだろうな。はぁ。終わらせよ」

「きゅ、急にめっちゃ喋るわね。てか、鞭はいくらでも再生するんだけど? それに飛び道具は効かないって分かっているよね?」

「なぁ。弾は道具か?」

「当たり前じゃない」

「そうか。でもなぁ。こっちから見たら銃弾ってのは子なんだよ。銃が親。そんな親子で戦うんだ。そして、子はいずれ独り立ちする」

「何を言って?」

「分かんなくて良いよ。今のお前程度では自分の異能は防げない! 異能のランクが違うってのを見せてやるよ」

 右の掌を地面に向ける。

 顔色が悪く、弱々しいヤユイ。

「弾の根城」

 無数の魔法陣がヤユイとサキュバスを包み込むように展開されて行く。

「ん?」

 その一つから紅き閃光が迸る。

 サキュバスが躱す。そう、反射的に躱したのだ。

「え」

 頬から赤い筋が出来上がり、少しだけ血が垂れる。

 それに触れてサキュバスは驚愕した。

(確かに異能は発動していた。そもそもあれは継続的に発動されているパッシブだ。なのに、なのになのに)

「なんであたんだよくそがあああ!」

「あははははは。あははははははは! はははははははは! ご自慢の顔に僅かな傷が付いただけでそんなに怒るのか! 良いよ。似合ってるよ! あははははははは! ⋯⋯ダメだな。アイツみたいだ。仕方ないけどさ。嫌だな。天音に近づいた性格が良いよ」

「何を言っているこのアマがッ!」

「鞭、邪魔」

 ヤユイの元に鞭が伸びるが、その鞭が大量の紅いの弾丸に寄って粉々になる。

 再生した鞭はサキュバスの手に収まり、そのサキュバスに向かって大量の魔法陣から、一つ一つ毎秒二十個の弾丸が放たれる。

「お前の鞭でどれだけ防げるかな!」

 ヤユイは悪魔のような笑みを浮かべて、サキュバスが鞭を高速で振るっているのを眺めていた。

 無駄な足掻き。そもそも足掻きに成っているかも疑問だった。

「じっくり痛んで⋯⋯死ね」

 右手を握り、親指だけ上げて、それをゆっくりと下げる。

「あははは! ははははははは!」

 サキュバスが穴だらけになり、消える。

 断末魔が未だに脳を震わせるヤユイは、禍々しい姿から元のメイド服の姿に戻った。

「ふひー天音、寝る」

 気絶するヤユイ。

 ◇

「全部やられちゃったな」

 手を叩き賞賛を送る金栗。

「さて、行こうか。最大限のおもてなしをしないと。僕の情報外のモノを沢山見せてくれたんだから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...