能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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一章 同格の管理者

27話 迷宮症候群完治

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 俺は早速千秋の所に訪れた。
 当然、薬を試すためだ。
 神からのレシピだ。間違いはないだろう。

 しかし、中に入って千秋の方を見ると完全に治っていた。
 しかも、他の患者もだ。

「あ、天音! 凄くない! 治ったよ! かんっぺき!」

「なん、で?」

「それが、こちらのおじいさんがお薬を作ったらしいんだよ」

 何!
 俺はそのおじいさんを見た。
 一見は温厚そうな優しいおじいさんだが、迷宮症候群を治す薬をどうやって作った?
 神からの手紙の最後には俺次第だと言っていた。
 そう考えると他の人にレシピを渡したとは考えにくい。
 しかし、だったらどうやって。

「その。ありがとうございました」

「良いんですよ。それに、わたしがやらなくても誰かがやった事でしょう」

 他の患者の家族も来て、内容を聞いておじいさんに向かって頭を下げていた。
 泣いている人も居た。

「良かった。これで、迷宮症候群は収まるんだね」

「⋯⋯そうだな」

「天音、なんか元気ない?」

「そんな事ないよ」

 あいつは信用出来ない。
 腹の内が見えない。

 そして、検査入院を終えた千秋が帰る事となり、俺は迎えに行った。
 千秋の家族はそれぞれの仕事ややる事がある。

「全く。薄情者達だね!」

 プンプン怒っている千秋だが、きちんと理解している。
 千秋の家族は千秋の迷宮症候群の姿に酷く悲しんでいた。
 それが治ったのだ。当然嬉しいに決まっている。
 ただ、感情の整理がしたいのだろう。
 きっと、色々と家族サービスがある筈だ。

「あ、今って8月の後半だよね?」

「ああ。24日だよ」

「うぅ。課題がピンチ。天音、手伝って!」

「安心しろ。お前んとこの家族と俺が学校に言って今回は課題免除だ」

「まじっすか! いやったああああ!」

 全く。
 未知の病に掛かっていたのに元気な奴だな。
 本当に、良かった。

 しかし、嬉しい反面やはりあのおじさんに対する警戒が深まる。
 これは俺が思っていた確かなる未来。
 しかし、薬は今も尚俺の手元にある。
 俺よりも速くそれを知って、それよりも速く作ったと言うのか。

「いや、違うか」

「ん?」

「あ、いや」

 そもそもなんでそんなすんなり薬を飲ます事が出来た?
 あそこは現在、厳重注意状態で、目を盗んで薬飲ます事出来るか?
 いやまぁ俺はやろうとしていたけど。
 飲み物に見立てて。

 しかも、あそこには複数人の看護師達の目もあった。
 分からんな。

「にしても凄いよね。あそこの院長が迷宮症候群の薬を作るなんて」

「院長、か」

 成程そう言う事か。
 確かに、院長なら可能なのか。

 俺達は動物型人工人間アニマルノイドなどが動き易くする為に資金を集める為、いくつかの会社を所持している。
 しかし、全ての職種と言う訳ではなく、弁護士事務所は持っているが病院は持ってない。
 世間には出回ってないが、管理者がモンスターを使って会社などを運営している事は普通にある。
 ホームダンジョンサービスもその一つだ。

 ま、それは今は関係ないな。
 院長がどうして薬を手に入れているのかが重要だ。

「天音、めっちゃ難しい顔してるよ?」

「え、そうか?」

「うん! いつもアホっぽいのに」

「おい!」

「あははは! 冗談だよ」

 数歩前に出てくるりんと回って笑う千秋。
 本当に元気になったな。

「天音、少し寄り道して行かない?」

「別に良いよ」

 現在はデパートに来ている。
 千秋が寝込んでいた数日の間に好きなブランドの服が出たらしい。
 と、言っても高級ブランドでは無いが。

 そんな人混みの中を歩いていると、とある人物に出会す。
 雪姫とアイスさんだった。

「あれ、天音さんとそのお友達さんですね。奇遇です」

「こちらこそ。奇遇ですね」

「千秋です」

「お初にお目にかかります。アイスと申します」

 雪姫達はこのデパートにあるドーナツ屋の新作ドーナツを買いに来たらしい。
 何故か、成り行きで同行する事になった。
 男女比1対3と言う心細い空間と成ってしまった。

「千秋さんはドーナツって食べるんですか?」

「結構食べるよ。甘い物全般好きだから」

「そうなんですね」

「こっちも意外だよ。甘百合さ⋯⋯」

「雪姫で良いですよ」

「雪姫さんも甘い物が好きだなんて」

「ええ。私の好物は甘い物とBLです」

「ごめん後者は聞かなかった事にするわ。⋯⋯ちなみに漫研の読んでる?」

「バッチリ」

「話が合いそうね」

「ですね」

 なんか凄い寒気に襲われたけど、まぁ気のせいだろ。
 アイスさんが魔法を無意識に発動させているかもしれんしな。

「あの、飛び火してません?」

 こう言う時の人の反応速度はきっと訓練しても身につかないと思う。
 あ、アイスさんに聞くことを聞こう。

「フェンはどうですか?」

「はい。特攻薬が出来て、何とか回復して言ってます。泣いて喜んでましたよ。ただ、お姉さんの体が異常なくらいに回復が速いんですよね」

「薬の副作用ですよ」

「そうなんですかね? 事故の後遺症も治ったんですよ? アビリティじゃ回復しないと言われたのに」

 今では医療も基本はアビリティ基準だ。
 俺はアビリティの無い世界を知らない。
 しかし、後遺症は治ったのでは無く、無くなったが正しいかな?
 体は別物出しな。
 ま、ただ身体能力が大幅に上がったと思っても何も違いはないが。

 人工人間オートマタの製作工程は見た事があるが、とても良いとは言えない。
 一度見たら数日肉が食えなく成る。これはマジ。

「⋯⋯流石は新作、大行列」

「私は千秋さんと話してみたかったのでちょうど良かったです」

 俺はベンチで座って待っていようかな?

 ベンチに行こうとしたら千秋に連行された。
 今からの千秋と雪姫の話は正直聞きたくない。
 聞いたら俺の何かが失われる気がするのだ。

 ◆

「ふむ。上手く魔力を隠していたな。さて、そろそろ最終準備をしようか」
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