能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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一章 同格の管理者

22話 命は軽くない

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「アホ野郎がああああ!」

『クハハ! 我は元々力を使う予定は無かった。この全てに掛ける為に! 我の役目は貴様を絶望させる事だ!』

 ドラゴンの体内を巡るエネルギーが加速して行くのを感じる。
 こいつは自分の魂を使って自爆しようとしている。
 しかも、全然体内の魔力を使わなかったせいでさらに威力が上がる。
 こいつは本当の意味で自分の命を掛けて俺を陥れようとして来るのだ。

「舐めんなぁああああ! ドッペル達戻れ! ミナも戻れ! 皐月はベヒの近くに!」

 急げ!
 制限時間は2分だ。
 俺達がベヒの近くに来た瞬間、まだミナが倒して居なかったメイド2人がこちらに向かって来る。

「皐月!」

「すまんが即死して貰うぞぉ!」

 大剣を横払いして胴体を真っ二つにして破壊した。
 消滅するのを確認する前にベヒは魔法を使った。
 地面が盛り上がり大きな壁が出来上がる。

「皐月!」

「はい。ドラゴノイド、防御形態」

 大剣が大きく開き、盾となる。
 鎧がフルプレートに変換され、盾と成った大剣を地面に突き刺した。
 地面の壁の前にシールドが展開される。
 俺はその間に新たなスペルカードを作成する。

「ドラゴンさんよぉ。悪いが魂全部守るからな!」

『我の命はそこまで軽くないぞ!』

「どんな命だろうが軽かねぇよ! だから! その重み全てを受け止めてやる! 俺達が! スペルカード──」

『やるれか?』

 外から激しい爆音が鳴り響く。

 スペルカード、聖者の盾を皐月のシールドの外側に展開する。
 先に盾に爆撃が当たり、衝撃が俺の体に入って来る。

「くっ」

「ロード!」

「ッ!」

「大丈夫だから、自分達の事に集中してくれ。絶対にここを通す訳にはいかない!」

 通したら千秋も危ない!

 聖者の盾が破壊され、皐月のシールドになり、皐月が狼狽える。
 皐月の額から2本の角が伸びて来る。

「覚者半解!」

 鎧がさらにごつくなり、鎧の色と角の色が銀色に変わる。
 皐月の力の半分を使い、ここを防ごうとしているのだ。
 本当に、良い仲間を持ったよ。

「ああああああああああああ!」

 それから数秒、とても長い時間を耐えた。
 最終的には皐月のシールドが壊れるのと同時に爆発は止んだ。
 残った風圧によって地面の壁が少し抉れていた。

「ベヒ⋯⋯」

「問題ありません」

「そうか。さぁ、俺を管理室に連れて行け! 攻略したぞ!」

 まさか2層で終わるなんて思って無かったけど、戦力を集中させたかったのかもな。
 ダンジョンエナジーを戦力に注いだのだろう。
 俺達の体が光に包まれ、管理室の迷宮の心臓部に来た。

「管理者の気配が1人、ラグナロクは既に終わっていたか」

「あぁそうだよ。お見事だったね」

 ここの管理室が手拍子しながら俺に近づいて来た。
 護衛は居ない。居るのはサポーターだけか。

「なんでこんな事をした」

「決まっているだろ? 本物の魔王に成るためだよ」

「覚醒魔王、ね。魔王因子もねぇお前は成れねぇよ」

「いや! 今回で手に入れる事が出来る筈だ! ハデスにも認めて貰える筈なんだよ! 強い管理者の癖に分からないのか?」

「はぁ。管理者総括の神であるハデスはお前には因子は植えねぇよ」

「なぜ言いきれる!」

「半魔王に成る2つの条件がある。そのうち1つを満たせばいい」

 地獄に落とす前の土産としてお前の質問には答えてやるよ。
 この場所からダンジョンが消えた瞬間に俺のダンジョンに入る為に座標を探る。

「1つ、目的の為なら全てを投げ出す覚悟のある傲慢な管理者。1つ、仲間を大切にするような謙虚な管理者。この2つによって進む道は異なる。因子も当然異なる」

「俺は前者に当てはまっているだろ!」

「確かに、お前は仲間を道具のように使ったよな。だが、お前は絶対に成れないんだよ。その資格がない」

「なんでだ?」

「理由その1、貴様は黒幕の力を借りたから。2つ、お前が自分の命を大切に思っているから。自分の命を掛けない奴は前者の魔王には成れないよ」

「馬鹿げた事を」

「もう良いんだ。終わった。今から俺はお前の罪を清算させる。罪に罰を、悪には鉄槌を、貴様は命を持って罪を償え」

 俺は紫蘭を相手の管理者に向ける。

「知っているぞ。紫蘭は人を殺せない。そう言う呪詛をお前が刻んだ筈だ」

「まぁ確かにそうだな。紫蘭は人を殺せない。そのようにした。だがな、反対に、どんな事しても相手は死ねないんだよ」

 そして俺は高速で刀を振るい、紫色の閃光を放ちながら相手の手と足の爪を全て剥いだ。

「え、ああああああああああぁぁぁ!」

「成ってねぇな。この程度で叫ぶなよ」

 せめて護衛くらいは用意しておくんだったな。
 まぁ、こんな寄生虫の管理者では無理か。
 多分、ここまで居た知能の高いモンスターは全て黒幕のモノだ。

「さて、教えてやるよ。紫蘭の力を。細胞に成っても意識がある恐怖を。永遠の暗みの中で感じる激痛を」

「いや、ちょっと、それは」

「言ったよな? 罪に罰を。お前の罪を俺が清算させる」

 貴様が殺した人の分だけ切り刻む。
 ミカルゲが来て、拾った魂をベヒに預けている。
 その分、再び切る数が増えた。

「嫌だああああ! ばべでええええええ!」

 殺る奴は殺られる覚悟が必要だ。
 この世は弱肉強食。今の世界だからこそ、この理念は濃く存在する。

 俺の行いを欠伸しながら見ている皐月。
 魂が増えて余計に緊張しているベヒ。
 ダンジョンに帰ったミカルゲ。

「もう、辞め」

「まだだよ。もっと泣けよ。もっと叫べよ。それだけ貴様が殺《あや》めただけの罪をそれで少しでも和らげろ」

 俺は足をゆっくりと、細かくスライスしていく。
 サポーターも戦えるが、手出して来ない。
 まぁ、良いんだけど。楽だし。

「もふ、ひゃめて、くははい」

「そうだな。口だけになっちゃったし。仕上げだ。紫蘭、食べろ」

 紫蘭が紫色のオーラーを放ち、散らかった管理者の細胞や血を全て食べて行く。

「紫蘭の中では時が止まっている。ただ、永遠の苦しみを永遠の闇の中で貴様は過ごすんだ。その苦しみがどれ程のモノか分からないが、まぁ今の奴よりも辛いだろうな」

「いひゃはいひゃはいひゃはあああああ!」

「じゃあな。精々、中で悔い改めろ」

 紫蘭が管理者を呑み込んだ。

「俺は今、お前と言う命を奪った事に近い。だから、お前が罪を清算し、改めたのなら、紫蘭から出た時の衣食住は保証してやるよ。それが、俺への罰だ」

 お前が出るまで、俺は待ってやる。

「情報を聞かなくて良かったのですか?」

「良いんだ。完全にあいつは操り人形マリオネットだったよ。良い様に情報を渡されただけだろ。そんな奴に期待なんてしてない」

「左様で」

 俺は迷宮の心臓に触れる。管理者が死んでも、残るか。
 全く。めんどくさい事に成ったな。俺が目をつけられる事をしたか?
 考えても仕方ない。さっさとやろう。
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