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一章 同格の管理者

14話 花蓮目線

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 私は星宮花蓮。
 私の家族はみんな義理だ。
 最初の両親は父が社内不倫で6股していた。
 それがバレて父は莫大な借金を負って、私は母に引き取られた。
 母は私に色々と教えてくれた。この世を生きる術を。

 母が再婚した。
 義理の父親は典型的なクソだった。
 稼いだ金をキャバクラ、競馬に費やし、貯金なんて無かった。さらに薬などもやっていた。
 母は忙しくて、その事に気づかない。
 義理の父の言い訳は『会社の付き合い』だった。
 母は頑張って私を育ててくれた。物的証拠を抑える金も時間もない。
 離婚したくても出来ない環境。
 母は私に謝り酷く後悔していた。

 母の貯金にまで手を出したクズ。
 これで離婚出来る。母の貯金は共有財産では無く、結婚前の貯金なので母の財産だった。
 許可なく使ったのだ。当然離婚は出来る。
 母は私を連れて逃げる予定だった。
 しかし、最悪な事に、母の会社で母を好きだったヤンデレ気質の男が居た。
 他の男が居る事を知って理不尽にキレて、母を殺害。
 私は絶望した。
 私に流れる遺産なんて全て義理の父が競馬とキャバに費やした。

 義理の父、以後クソは再婚した。
 速攻だった。煮え滾る怒りを体の奥底から感じる私。

 義理の母は以後ゴミと名づける事にした。
 ゴミは不倫は当たり前。家に男が居ない時間は無かった。
 ギャンブル三昧。
 家は沢山の負債を抱える事になった。
 精算なんてする事無く、借金と言う負債を重ねるだけだった。
 塵も積もれば山となる、だがこの場合は書類も積もれば地獄となるだ。

 毎日家に届くかなりの数の督促状。役所からも何か届いていた。
 裁判所からもだ。
 クソが会社でやらかした。ゴミの不倫が相手方の奥さんにバレた。
 私は怖い人達に売られる事になった。逃げた。
 母から教えて貰った知識を使って、必死に生き延びた。

 愛想を振り撒いて人脈を作り、とにかく生きる事に必死になってた。
 そんなある日。
 今、私はどこかの迷宮ダンジョンの中に居る。
 長く大きな廊下。
 秋さんと言う人が言うには、左側の青い暖簾が男風呂、左の赤い暖簾は女風呂、奥のボス部屋は混浴になるらしい。
 混浴の使用率は現在零パーセントと言っていた。

 大きな更衣室で服を脱いで、中に入る。

「⋯⋯」

 ママ、天国で見てますか。
 今、私の前では数々の風呂という風呂があります。
 或る意味ここも天国です。

 最初にシャワーです。
 暖かいお湯で外部のホコリや汚れを流し、壁にあるボタンを秋さんが1つ押します。
 上には『シャンプー』と書いてありました。
 壁がスライドして中から何か出て来ます。
 目と口がありました。

「これはシャンプースライムと言って、髪に乗せると隅から隅までしっかり汚れを落としてくれます」

 秋さんがシャンプースライムを掴んで、私の頭に乗せます。
 シャンプースライムがモゴモゴ動いて私の髪を洗ってくれます。
 残った泡ははシャワーで流しました。
 次にリンススライムが出て来て、髪を整えてくれました。
 最後にボディソープスライムが出て来て、私の体の細胞一つ一つを根こそぎ洗ってくれるようです。いまいち分からない。
 秋さん曰く、これでシミだろうがニキビだろうが、一瞬で落とせるようです。
 それもう石鹸の域を越えてます。
 左から順番にボタンを押せば良いようです。

 ママと一緒に来たいな。そう思ってしまいます。
 逃げたくて、生きる希望があると直感で感じて、それが間違いじゃなかった。

 母の人の善し悪しの決め方は間違って無かった。
 母の前例があったので信用成らなかったけど、信用して良かった。

 お風呂は本当に沢山ありました。
 全体もとにかく広いです。
 形にこだわったお風呂もありました。
 とにかく、広いです。
 5階程あり、お風呂によっては効能も違うようです。
 もう、お風呂と言うよりも温泉ですね。
 全部回るのに3日以上は必要そうです。
 奥が見えない程に広いです。とにかく広いです。

「あ、危険看板の所は絶対に入らないでください。あと、見えませんが、ボス部屋の真反対のあっちにはサウナルームになってます。塩サウナから様々なサウナがありますよ。10万度のサウナもあります。絶対に入ってはダメですよ」

 一瞬で骨も溶けますね。

「あと、あっちの毒風呂には近づかない方が良いです。あと、あっちの大きいお風呂は巨人族ジャイアント系列限定です。他にも特殊な種族用の風呂以外なら問題ないですよ。専用のは大抵、危険看板があります。ここに住むと決めましたら、部屋にも風呂はあります。小さいですが、それでは、まずはあそこから」

 秋さんのおすすめで入って行く。
 時間帯は朝の5時から夜の11時までずっと開いているらしい。

「ここはマスターが小学4年生の時に温泉にハマった時期にお作りに成られた物です。我々もとても気に入っている場所でもありますね。ただ、マスターが混浴に行かないので混浴のボス部屋は本当にボス部屋になってます」

「そうなんですね。天音さん、凄いですね」

「そうですよ。これからの事はどう考えているんですか?」

 様々な温泉を堪能しながら私は自分の身の上話をしてから、ここに居させて欲しい旨を伝えた。
 元の生活なんてロクなものでは無い。
 ただ、時々外には出たい。ホームレス生活の中で、恩人が少なからず出来たから。

「分かりました。まずは部屋と役割を決めますね。その後、休日の曜日などを決めましょう。ここでは原則して週2日の休みが決められてます。シフト制なので、好きなタイミングで休みを入れる事が可能です。大抵の人は休みを嫌ってますが」

「どうしてですか?」

「マスターの役に立つ。それが我々にとっての1番の幸福ですから」

 変わっている。
 一体何をやったらこんなに慕われるのか、私には分からない。
 と、そろそろのぼせそう。

「もうですか? まだまだ紹介したいお風呂があるのですが?」

「無理無理無理無理無理無理無理無理死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」

 ガチめにやばいっす。

 外に出て服に着替える⋯⋯服が変わってた。

「ここであのようなみすぼらしい服は遠慮させて頂きます。一応管理されているので、部屋が出来たらそこに送ります。今日は私の奢りです」

 そう言って、自動販売機でコーヒー牛乳を買ってくれた。
 このダンジョン専用の通貨らしい。
 頑張って覚えないと。
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