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一章 同格の管理者

4話

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 生徒教師含め全員がとある閉鎖空間に居る。
 見えるのは2本の道だけ。

「どこだここは!」

「誰よ! 誰がここにダンジョンを建設したの! 出してよ!」

「お、落ち着け! 管理者が居るなら殺されない筈だ!」

「そんな保証がどこにあるんだ!」

「そうだ! 管理者はまず名乗れよ!」

 あちこちから叫び声が轟く。
 皆叫んで混乱しているけど、根っこの部分では分かっているんだな。
 これが、迷宮管理者の資格を得た人の仕業だと。
 まぁ、後天的だからな資格得るの。俺は速すぎた。
 だからあんなやばい⋯⋯今は良いや。

 まずは管理者を探そうか。

 管理者は魂に管理者としての資格の因子がある。
 他にも勇者因子とか魔王因子とか諸々。
 その因子は同じ因子を持つ者同士で感知出来る。
 漏れ出る因子を隠す事も可能だが、こんなポットでの管理者と長年の管理者の実力差で、相手からは気づかれないだろうが、俺は分かる。

 しっかし、人が多くて上手く探れんな。
 中には勇者因子の種の持ち主とかも居るし。

「天音。怖いね」

「ああ、千秋か。まぁ、管理者がモンスターに指示は出せるからある程度は安心していいだろ。いざと成ったらアビリティを使うよ」

「天音のアビリティ知らないけど、天音がそう言うなら信じる」

「はぁ。今日の帰り甘百合さんに告白しようと思っていたのに」

「バカ?」

「バカとはなんだ。今日初めて会話が出来たんだぞ。やるだけ価値はある」

「無いでしょ。あれは会話とは言わんでしょ。全く、和ませてくれてありがと」

 あ、冗談だと思った? 俺結構ガチよ?

「⋯⋯もしかして本気?」

「本気と書いてガチと読む」

「泣く時は胸貸すわ」

「お前の借りてなんの意味が?」

「私の結構大きぞ~⋯⋯ッ! うそ、でかい」

 俺は千秋が向いている方を見る。
 そこには身長4メートルはありそうな顔がライオンの獣人間が居た。
 大きな大剣を持って、道から現れたようだ。
 顔を動かして、獲物を認識したかのように動き出す。

 生徒は誰一人として動こうとはしない。
 恐怖と驚愕で足が奪われ、動けないのだ。
 ライオンは大剣を掲げ、振り下ろす。

「な!」

 その先には雪姫が居た!
 急がないと! 折角の好感度アップチャンスだ!
 気づくのが遅れた!

「雪姫さん!」

 そう言って、とある男が飛び出して来た。
 隣のクラスのアドベンチャーラーもしている有名な男だった。
 大剣を剣で塞ぎ、足の空気を圧縮して、そこに立っている。

「あ⋯⋯」

「雪姫さん! 皆さん、逃げて! 速く!」

 刹那、現実に戻った生徒達と先生方は残った道へと走る。
 俺も千秋に手を引っ張られ行きそうに成るが、ライオンが目の前に居る雪姫は硬直していた。

 俺は雪姫へと近づいて、手を取り走らせる。

「あ」

「行きますよ!」

 千秋のもとに行って、俺は雪姫の手を引きながら道へと進む。
 雪姫は終始、さっきの男の事を見ていた。
 悔しい! そもそもこんな事して許されると思うなよ!

 少し行くと、開けた空間があり、そこで固まっている。
 だが、最悪な事にゴブリンの集団が現れたのだ。

『あれ? 俺達ってここで戦うんだっけ?』

『そうだアホ! えっと、銀髪でべっぴんな奴を拐うのが我々の仕事だ』

『りょーかい』

 俺は管理者だからモンスターの言語が分かるが、一般の人が聞いても鳴き声にしか聞こえない。
 あぁ、内容が内容なだけにめちゃくちゃ腹立つー。
 別に戦闘出来る能力者も数人居るし、危害は抑えられるだろう。
 しかし、⋯⋯あーグダグダ考えるのは俺の性にあわない!

「サモンズスペルカード、アダマン、サモン」

 1枚のスペルカードを取り出してリッチを召喚する。
 ローブを着て、赤い眼光を放つスケルトンだ。

「これは天音様。珍しいですね」

「あそこのゴブリンを片付けろ」

「承知致しました」

 アダマンは魔法を得意とする。
 しかし、この程度の雑魚なら近接の方が楽なのか、速攻で接近して杖を振るって倒していた。
 筋肉ないけど、脳筋な考えだな。
 その光景をじっと見詰めて来る雪姫。
 こ、これは⋯⋯どっちだ?
 スケルトンを召喚したのは間違えだったか?
 アップか? ダウンか?

「天音、凄いね。あんな強いスケルトンナイトを召喚するなんて」

「リッチな?」

「え?」

 さて、俺はさっきの場所に行くか。
 皆がアダマンに集中しているウチに。

「千秋はここに居ろよ」

 俺はさっきの道を戻る。

 スペルカードは作ってから数日で腐る。
 腐ると暴走してしまう。それを知らなかった当初は大変な目にあった。
 だから、定期的なメンテナンスが必要なのだ。他にも消去して新たなスペルカードを作るしかない。
 スペルカードが消費するアイテムだが、アビリティには1度作ったスペルカードは保存されるのだ。
 作るのは簡単だが、使えないと暴走してしまう。
 メンテナンスも面倒。
 なので、最低限のスペルカードしか俺は持ってない。

 ま、この程度なら関係ないか。

 さっきの道に戻って、隠れる。
 覗くと、アドベンチャーラーでパーティを組んでいる人達が溜まっていた。
 さっきの逃げる時に「俺達も加勢するぜ!」って行った奴らだ。
 そして、ライオンの奴も居る。
 互いに座って雑談している。

「あとはライナー達から報告があったら、そこに向かうだけだな」

「いやー策士だね」

「これで好感度アップは間違いなし! ゼウス、俺に管理者の資格をくれてありがとう!」

 ばーか。管理者を設定する神は別だわ!
 ま、こんな下級の管理者には知らされる事の無い事実だけど。
 しかし、あのアダマンでもしかしたら好感度アップしているかもしれない。
 他にも手を引いたので、それによって意識してしまうとか?
 それには感謝しよう。
 だから、誰も死なない超平和的な解決方法を使ってやるよ。

管理者同士之戦闘ダンジョンラグナロクを所望する!」

 右手を上に上げる。

《承認しました》

《ダンジョンラグナロクをここに開きます》

《以後、内部に侵入する事、外部に脱出する事及び応援要求する事は出来なくなります》
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