上 下
9 / 37

サーバーアクセス

しおりを挟む
 あれから数日、サナは孤児院に通いながら飯を与え子供達の強さの育成に専念した。
 一方ユウキは魔法の取得に苦労していた。

「はぁ!」

 サナを背後からナイフで襲うのは財布を盗もうとした子供である。

「うん。良いよ」

 それをひらりと避けて足を引っ掛け転ばせる。
 時間的に基礎体力等を付ける事は出来ず、取り敢えずの技術を教えていた。

「ほらほら。皆私を殺す気で来ないと、意味が無いよ~」

 そして数分戦い、休憩に入る。
 今では孤児院のシスターも慣れている。最初の方は全力で止めようとしていた。

「サナ姉ちゃん。どうやって稼ぐの?」

「ん~私はあんまり賢くないから分かんないけど、お兄ちゃんが色々と考えてたんだ~例えば、お金を貰って戦闘相手に買って出るとかね。自分が勝てば、それが広がり、自分の腕前を確かめたり自慢したい人が寄って来て、金を落とす。他にも、子供が出来るなら、薪割りとか? 基礎体力とかが必要だけどね。大きくなったら、傭兵とかもあるし、お金が沢山稼げる様になれば、孤児院に寄付すれば、君達の後輩は助かるし恩返しも出来る」

「自信ないよ。サナ姉ちゃんに勝てないし」

「ははは! 魔力あるのと無いのでは全然違うし、仕方ないよ」

 サナに水を差し出しながらシスターが質問する。

「どうしてそんなに強いんですか?」

「え? ん~こんななりでも、元軍人だからね。戦いのやり方は教わっている。てか、私かなり弱い部類だよ」

「それにしては、近接戦闘に特化したような⋯⋯」

「鋭いね! 先生は戦闘経験者? まぁ、うちの国が古臭いせいだね」

 そんな孤児院にひょっこりと顔を出す人物が居る。
 とんがった帽子に大きな杖を所持している。

「あれ? ミチカちゃん!」

「お久しぶりです先生。見ていたんですが、その子は?」

「えっと、サナさんで、子供達に色々と教えてくれている人です」

「初めまして。サナです」

「自分はミチカ。ここの孤児院で育った魔法士だよ。今はハンターとして活動している」

 握手をして、ミチカが目を見開く。

「君も魔法士なの? 絶対そうだよね! この魔力量、自分の数倍はあるよ? やばいちょっと酔って来た」

「分かるんですか! ちなみに魔法使えません!」

「うん。分かるよ。⋯⋯魔法使えないってのは無いよ。確かに魔法を使うには最低限の魔力量が必要だけど、君なら数人がかりで行う儀式魔法を一人で行える程だよ? まぁ確かに、魔法を使わずに身体能力強化に回す人や、魔力を純粋に操って技として使う人もいるけど、そうなの?」

「え、いや。その⋯⋯自分では魔力を認識出来なくて」

「あぁ、そのラインか。なんでも聞いて。君の成長が楽しみだ」

「じ、じゃあ!」

 サナは自分に魔法を放って欲しいと言った。
 ポカンとする子供達やシスター、ミチカも例外に漏れてない。
 何故かと問われ、サナは満面の笑みで答える。

「切ってみたい!」

 背中に隠していたショートソードを二本抜き取り、構える。

「うーんいまいち分からないけど分かった。じゃあ、地属性の魔法にするね。⋯⋯応答せよ! 地の塊と成りて、敵を撃て! ロックブラスト!」

 複数の土の塊、それは小さな岩の様に成っていた。
 それが六つ、出現してサナに向かって突き進む。
 ミチカはもちろん手加減していたが、その心配は無用だった。

「六個でこの速度なら、シュウ兵長の矢よりも、怖くないな!」

 一つ、息を短く吐いて刃を振るう。
 その斬撃の速度は六つの閃光を生み出し目視出来る程で、魔法を容易く切断した。
 切断された魔法は粒子と成って空に舞う。

「⋯⋯嘘」

『サナ姉ちゃんすげぇ!』

 ミチカからは驚愕され、子供達からは尊敬された。

「君達も、これからしっかり訓練し学べば余裕でこなせるよ。私なんかこれでも下っ端だしね」

 苦笑とも呼べる笑みを浮かべて、子供達に言う。

「この国には義務教育は無い。その代わり、自由に学べる。良く勉学に励み訓練しなさいよ。基礎訓練も忘れずに、だ」

 それから訓練は再開され、ミチカも見る事にした。
 現状を聞いたミチカは金を孤児院に寄付したが、シスターがとても申し訳なさそうにしていたが、嬉しそうに笑みを浮かべていた。 

 ◆

 魔法、俺はそれに付いて深く考えていた。
 理解出来ないのだ。
 魔力持ちは魔力無しと体の構造が違い、内蔵に魔力を貯める場所が存在する。
 そして、魔力を流す神経等が存在するのだ。
 まずは魔力が溜まっている魔臓を意識する。
 その後、全身に魔力を流せる様に成れば、身体能力強化を自由に行える様になる。
 魔力を集中させれば人外の力が出せるらしい。

 その後、外に魔力を流して操り扱う事を魔技と言う。
 ぶっちゃけ、習った気功等の武術と似ている。
 そして、自分の魔力の属性などを完璧に把握すると、詠唱が自然と浮かんで来る。
 それを呟く事により、魔法を扱える。
 魔力との対話と言うらしい。

 つまり、詠唱は人それぞれ個人差があり、千差万別。被りもあるようだけど。
 儀式魔法等の数人で扱う魔法の場合は専用の道具を用いて、専用の詠唱を唱える事で使用出来るらしい。

 長々と説明したが、一番重要なのは魔臓を認識する事だ。
 それがとても難しく、色んな本を呼んでも理解出来ない。
 俺達の国が新型に手を出さなかったのはここら辺の影響もあるかもしれない。
 ま、それは王族のみ知る事だ。

「ん~サナに教えるって言ったのに、全く自分で行えん」

 深く深呼吸して、意識の深い所に潜り込む。
 気功の方に意識が行ってしまうので、余計に難しい。
 まさかここで先輩達の教えが邪魔に成るとは思わなかった。

「ぬ! キタキタ!」

 体の中で不可思議な気配を確認出来た。
 どす黒く、ネバネバとしたその何かを俺は体の中に流すイメージをする。
 神経を自覚出来るような感覚に苛まれる。
 ゆっくりと体の外に魔力を出す。
 むむむ、何やら文字が。
 これを呟けば良いんだよな。

「サーバーアクセス」

 刹那、頭の中に色々な情報が巡りに巡った。
 俺はそれを一つ一つ理解しながら、一つ、使ってみる。

「サーバーアクセス、ジェットパック」

 魔法の訓練が出来る場所に移動し、発動する。
 背中に魔力が集中し、真っ直ぐとした翼の様な物が広がる。
 丸い筒の様な物が二つその上に出来る。

「ゴウ」

 ブーーっと魔力を炎に変えて噴射し、どんどん上昇して行く。

「わああああああああ!」

 それは操作出来ず、ただ上に行ってしまい、キャンセルを意識したら、消えた。

「え、ちょっと、待ったあああああああ!」

 俺はそのまま落下した。
 空気抵抗を全身で感じながら、焦りながらも必死に思考を回転させて着地方法を考える。

「魔力を足に集中させれば⋯⋯」

 ある程度の衝撃を耐えてくれる筈!

 地面に激しく衝突し、振動音を鳴らし、土煙を発生される。
 全身に響き渡る衝撃に悶えながらも、魔法に成功した喜びに浸る。
 ただ、周りの目が痛かったので、宿に戻ったが。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日
ファンタジー
ーー時は魔物時代。 魔王を頂点とする闇の群勢が世界中に蔓延る中、勇者という職業は人々にとって希望の光だった。 そんな勇者の一人であるシンは、逃れ行き着いた村で村人たちに魔物を差し向けた勇者だと勘違いされてしまい、滞在中の兵団によってシーラ王国へ送られてしまった。 「勇者、シン。あなたには魔王の城に眠る秘宝、それを盗み出して来て欲しいのです」 唐突にアリス王女に突きつけられたのは、自分のようなランクの勇者に与えられる任務ではなかった。レベル50台の魔物をようやく倒せる勇者にとって、レベル100台がいる魔王の城は未知の領域。 「ーー王女が頼む、その任務。俺が引き受ける」 シンの持つスキルが頼りだと言うアリス王女。快く引き受けたわけではなかったが、シンはアリス王女の頼みを引き受けることになり、魔王の城へ旅立つ。 これは魔物が世界に溢れる時代、シーラ王国の姫に頼まれたのをきっかけに魔王の城を目指す勇者の物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...