滅んだ国の元軍人兄妹冒険譚〜魔王レベルの魔力保有者は自由に異世界冒険を満喫する〜

ネリムZ

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護衛完了

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「お兄ちゃん凄いよ! 一面の青があんなに広がっている!」

「そうはしゃぐな。めっちゃ目立ってるから!」

 確かに凄いな。

「急いで家に向かいます!」

 ミリアの案内でさっさと向かう。
 本の絵でしか見た事の無かった海だったので、サナがはしゃぐのも理解出来る。
 あれが海。あれが海なんだなぁ。

「あの、お二人共早くしてください」

「「すみません」」

 家⋯⋯屋敷だな。
 うちの国では貴族制度は無かったが、貴族に近い存在や役職は存在していた。
 なんと言う大きさか、噴水に⋯⋯庭広っ!
 これが貴族。見捨てようと考えていた自分を止めてくれたサナに感謝しよう。

「どうしたのお兄ちゃん?」

 屋敷に通されると、使用人の人が来て、ミリアが話をすると、驚いて使用人は走ってどっかに行った。

「廊下は走らない!」

「走らないといけない内容だったのでは?」

「学校の先生かよ⋯⋯」

「お兄ちゃん、うちの学校に走る事を注意する先生は居ないよ」

「そうだな」

 色んな言葉が何故か浮かぶんだよな。良く分からないや。
 そして、一番偉い人が来たのだろう。メイド達が頭を下げた。
 俺もサナも下がる。

「頭を上げて欲しい。我が娘を助けてくれてありがとう。まずは風呂に入ってくれ」

 ミリアに案内されて来た場所。
 男女別で、俺は一人で入る。
 中はまぁ、お風呂と言うよりも浴場だった。
 ま、詳しくは知らんので適当に言ってるが。
 うちの国では水はそこそこ貴重だったので、浸かるとか言う贅沢は無かった。

「暖けー」

 そして上がると、サナと共に広い部屋に案内された。
 そこで席に座り、対面にはミリアとその両親が居た。

「状況を詳しく聞いた。本当にありがとう。それと、盗賊が所持していた物も全てこちらで預かっている。出来れば元の所有者を探して返してやりたい。見つからなければ渡す」

 ⋯⋯めっちゃヤダ。
 ま、ここは善人ぶっとくか。

「わかりました」

「不服そうだね」

「お兄ちゃん⋯⋯」

「すまん⋯⋯」

 どうしてこう、上に立つ人って人の内面を一目で見破るのかね。

「こちらで報酬は用意する。娘やメイドの命を助けてくれたんだ。礼はする」

「すみません。私が我儘を言わなければ護衛の方々の命を⋯⋯」

「あぁ。だが、その責任も背負って成長するんだ。いずれ交渉などは教える予定だった。これは儂のミスだ」

「⋯⋯あの、質問良いですか?」

「ああ」

「貴族が雇う護衛の兵士が魔力保有者一人の盗賊に負けるのか?」

「いえ。他の保有者は兵士達が削ってくれたんです。それで⋯⋯」

「そうでしたか」

 思い出させない様にその話は聞かない様にしていたが、ここで掘り返してしまったか。
 そして、報酬等が整理出来るまで、この屋敷で過ごしていいと言われた。

「「遠慮します」」

「そう遠慮せずに」

「そうよ! まだ私も全然お礼出来てないし、サナちゃんとも話したい! サナちゃんは嫌?」

「嫌、では無いですけど。こんな広い屋敷で寝るなんて、無理です」

「うんうん」

「なら、宿をこちらで手配しよう」

 絶対高価だろ。

「安心してくれ。一般の人が泊まる宿だ」

「ありがとうございます」

「お父様、それでは⋯⋯」

「その方が良いんだよ。こう言う人達はね。それと、謝礼金の一部を先に渡しておく。商業ギルドで身分証を発行しなさい。そしたら残りの金を振り込んでおく。他の国や街でも商業ギルドで引き落とせる。ま、関連国だけだから、そこには注意だ」

「はい。ありがとうございます」

「深くは聞かない。それと、その身なりは目立つから、衣服も揃えなさい。後、武具の購入はまだ待って欲しい。他はこの国を満喫してくれ。地図も用意する」

「何から何まで、感謝します」

「頭を下げないでくれ。娘は、それ以上の宝なんだ。兵士達の葬儀は同席してくれるかね?」

「いえ。我々はそこまで関わっていい人では無いので、それでは」

「ああ。また使者を送るから。そのときは」

「はい」

 そして俺達は地図に示された宿に向かい、荷物を整理する。
 衣服屋に向かって、私服を購入する。

「収納の腕輪没収されちゃったね」

「あぁ。くれると良いなぁ。あれを味わったら大量の荷物を運びたく無くなる」

 そして、色んな場所を巡る。
 腹も減ったので、食事だ。

「うぅ。なんも分からない。何このいくら丼って?」

「サケとかの魚の卵が大量に米に乗ったやつ」

「お兄ちゃん詳しすぎない? 勉強し過ぎでしょ。そもそも魚なんてうちでは流通してないし。皆も⋯⋯あーだめだ。またフラッシュバックして来た」

「外行くか?」

「大丈夫。皆隣で食べてる」

「そっか」

 頭をポンポンと撫でる。
 てか、なんだこの知識? 他の国の料理なんて学んだか?
 俺達が学ぶのは基本的に戦いに関する事だし、他国の事は武器や地形などしか教わって無い筈⋯⋯。
 ま、いっか!

「さば味噌定食にしよ」

「じゃあ、同じので!」

 届き、何で食べるかと思われるが、棒が二本あり、それを使って食べる。

「お兄ちゃん器用すぎない! てか、なんで使えるの?! あ、落ちた」

「ははは! あんたらここのモンじゃないな!」

 酒を飲んでいて人達が絡んで来た。

「箸は他の国では見ねぇだろ。こう、人差し指と中指をこんな感じで、⋯⋯ほれ、後は挟んで食べる。魚はここに骨があっから、こう取り除く。箸は扱いが難しいが、扱える様に成ったらなんだって出来る!」

 色々と教えてくれた。
 帰り道でサナが「いい人達だってねぇ。酒臭かったけど」と言っていた。一発こつく。
 既に月が登っているので、宿に戻って、風呂に入る。

「一緒に入ろー! お兄ちゃん石鹸の使い方知らないでしょ~教えて貰ったから教えてあげる!」

「え?」

 普通に俺から入り、髪を洗っていた。

「⋯⋯なんで知ってるの! 凄い通り越してキモイよ!」

「いや、知らなくても何となく分かるだろ」

「うん。⋯⋯あれ、もしかしてそれ使った?」

 指さされた物を見て、頭を前に倒して肯定する。

「それボディソープ! 体洗うやーつ! 髪はそれだよ!」

「なんか違うのか?」

「違うよ!(多分)ほらほらー流して、私がお手本を見せてやりましょう~」

「上機嫌だな」

「ひっさしぶりのふかふかベットだからね」

 枕元にはサナは何時も、友達の形見を置いている。
 俺は先輩達のだ。
 何時も皆一緒に居る。思い出の中にも。
 俺達の敗戦は一方的だった。復讐なんて考えてない。
 ただ、今を生きるので十分だ。
 サナと一緒に朝を迎え、また笑い会えるなら、それで十分だ。

「おやすみ」

「おやすみお兄ちゃん」
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