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アーレーでムフフな触手イベントがあると思うでない

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 「皆、頑張りなさい!」

 ゼラモードに天野さんに気づかれないように成って、仲間達を鞭でペチンっと叩いていた。

 それによって体力が回復する。

 ⋯⋯中には回復しているか怪しいのか、再度叩いて欲しいと望む仲間もいた。

 そんな奴にもう一回やると恍惚とした表情を浮かべて更なる追撃を望むので、放置する。

 まだ半分にも満たない程しか根っこは切れていない。

 しかし、それだけでも大きく戦局は動いていた。

 「はっ!」

 天野さんの支援魔法を受けた唯華の圧倒的なパワーで本体に大ダメージを与え、そこに攻撃魔術で追撃を掛ける。

 二人の連携で再生が追いつかない状態まで追い込まれていた。

 「根っこを破壊する作業は効果的だったようで良かったわ。⋯⋯と、そろそろ戻らないと」

 アマテラスの方針的にテイム系のアビリティは良くない。

 倒せそうなのでモンスター達を送還する。

 「ありがとう。このお礼は絶対にするから」

 静華モードとなり、再び二人の戦いを見守る。

 クイーンドリアードの身体が黒く染まりだし、地面から伸ばす根っこの数を増やした。

 先端が鋭く人を簡単に貫ける見た目をしている。

 「ふん。多少強化したところで雑草に変わりありません。長引かせるのは嫌なので速攻で終わらせます」

 感覚を掴んだのか、より早くなった攻撃をスルスルと回避して重い一撃を与えた。

 「ぐぬっ」

 しかし、まともやノーダメージ。引き下がる唯華。

 また再生能力が上がった、そう考えたが唯華の反応を見るに違うようだ。

 「随分と硬い⋯⋯あの亀よりも何倍も⋯⋯これがクイーンドリアードの強さ」

 「いえ。流石に異常でございます。Sランク中位帯の強さに位置しますが、これ程までの硬度は本来持ち合わせておりません」

 「⋯⋯何かあるとは思ったが。どうする?」

 「どうしましょうか。わたくしの最大火力の魔術を打ち込んでみたいところですが、そんな余裕は奴の前では無いでしょうね」

 手数の暴力、悠長に準備する時間は無い。

 想定外の強さに聖女である天野さんが冷や汗を流し始めた。

 彼女の強さはお世辞抜きで高い。それでも届かぬ強さ。

 「突然変異⋯⋯或いは禁具」

 禁具は禁止されている強力な道具だ。呪いのアイテムと言った方が分かりやすいだろうか。

 絶大な力を持つ代わりに何かしらのペナルティが存在する。

 そのペナルティとは、破壊衝動に襲われたり身を焦がしたりと様々だ。

 だからこそ、禁止されている。

 禁具とは人の手から作られた訳では無い。どう言う原理で存在しているか不明なのだ。

 禁具は基本触れる事すら危険であり禁止されているが、ペナルティを打ち消せるアビリティを持っているならその限りでは無い。

 デメリットが無いならただの強い道具になるからだ。

 禁具には寄生型なども存在し、モンスターが持つ事もある。

 その影響下にあるかもしれない。

 「突然変異か禁具か、はたまたそれ以外の要因か。研究者じゃない僕には分からないな。勉強不足か」

 不甲斐ない限りだ。

 戦闘は二人に向かって根が伸びている段階だった。

 「護ります」

 天野さんのシールドは強力。とても頼りになる。

 根の攻撃にも耐えてみせたのだから。

 「⋯⋯ん?」

 俺はそこで違和感を得た。何か、先程とは違う。

 その疑問の答えが直感的に頭に過ぎり、考えるよりも先に言葉が出た。

 「二人ともそこを離れて! 地面から何か来る!」

 天野さんのシールドは全方位にドーム状に展開されている。

 しかし、地面には無かったのだ。

 俺の声は届くのが遅く、地面から細長い黒い根が二人を襲う。

 身体能力の高い唯華は回避したが、魔法系の天野さんは対応できずに捕まる。

 「ユイ!」

 「お待ちをっ!」

 天野さんの前にも関わらず、俺は唯華の名前を叫んでしまった。

 それだけ焦っていたのだ。

 冷静な判断ができない。

 唯華も拒絶は一切せずに助けようとする。

 だってそうだろう。

 ドリアードは根っこを使って地面から栄養を得ていた。それによって超再生を可能にしたのだ。

 その栄養は決して、地面からとは限らない。

 「うっ。あああああああ!」

 唯華の攻撃を妨害され、明らかに天野さんから何かを吸収する。

 「まずいまずい」

 天野さんは魔力を持ってないらしいが、神聖力を持っている。

 本質はどっちもエネルギー。だけど違う。

 二つの異なるエネルギーを持ったらどうなるのか⋯⋯そもそも神聖な力をモンスターが手に入れて大丈夫なのか?

 むしろ毒と成って⋯⋯。

 「嘘、でしょ」

 ドリアードは恐ろしい程にグングンと成長して行く。

 モンスターと神聖力は共存するのか。

 それとも、ドリアードの本質はモンスターでは無く植物だと言うのか。

 「こんなの、どうしろってんだ」

 大きくなる事で辺りを暗く染め上げる。

 闇の中から伸びる黒い根は肉眼では捉えにくいが、正確に狙って来る。

 ⋯⋯この俺を。

 「カグ!」

 唖然として動けない俺に焦った唯華が斧を捨てて俺を助けてくれる。

 「大丈夫!」

 「ご、ごめん。ぼーっとしてた」

 肩で息をしながら俺の安否を確認してくれる。今すぐにでも泣き出しそうな顔をしている。

 その奥に見えた宙にブラブラと揺らされている天野さん。段々と身体が細くなっている事に気づく。

 「急いで助け出さないと⋯⋯」

 「輝夜様、私を叩いてください」

 「何をこんな時に⋯⋯」

 「こんな時だからです。それと、アレの使用許可を」

 唯華の瞳はいつものようにふざけてはいない。真剣に、求めている。

 それに『アレ』の使用許可を求める⋯⋯それだけの敵と言う事か。

 唯華はできる事を全力でやろうとしている。

 ならば、それに答えるのが俺の仕事だ。

 「分かった。許可する」

 俺はゼラとなって、唯華の頬に手を添えて自分に近寄せる。

 「勝ちなさい。富川家の名に掛けて」

 「御意」

 カプっと唯華の耳を歯を立てて噛んだ。

 どんな攻撃だろうと痛みは与えても全てにおいて癒しとなる。

 消耗した体力を回復させて行く。

 噛む、と言う行為は継続的に痛みを与えるのだ。

 それはつまり、持続的な攻撃となる。回復量を増やすなら噛むのはとても効率が良いのだ。

 「少しお傍を離れます」

 唯華は俺を置いて、刀を持つ構えを取る。

 「【換装】アタッカースタイル」

 いつものようなゴスロリ風では無く、和風のメイド服である。

 風に靡いた銀色の髪と刀が光を反射させる。

 紫色に輝くその刀は我が父が唯華に託した刀。

 「輝夜様をお守りし、障害を斬り裂く。旦那様が私に授けてくれたこの力、今一度使わせていただきます。行きますよ、紫蘭しらん

 紫蘭、紫色の等身が特徴的な日本刀。

 持ち主がいない場合見た者を魅了し手に取らせる魅惑的な力を持つ。

 ダイヤモンドもバターのように斬る切れ味を誇り、絶対に壊れる事のない神秘的な刀。

 触れた者の魂を砕き、全てを壊す破壊生物へと変える。飲まず食わずで所有者が死ぬまで破壊をさせる。

 それが『紫蘭』。そして、『禁具』の一つだ。

 「勝ちなさい。それ以外に道は無いわよ」

 「もちろんでございます」

 その衝動は精神攻撃と一緒であり、唯華のアビリティ【守護神】の効果で精神攻撃は無効化。

 つまり、唯華にとって紫蘭は最高の相棒なのだ。

 「はっ!」

 迫り来る根をあっさりと粉々に斬り裂いた。

 「いつまで吊るされているつもりですか」

 天野さんを助け、俺の方に飛ばす。

 自分の身体をクッションにして受け止める。

 「すぐに回復させないと」

 唯華にとって紫蘭がどうして最高の相棒なのか?

 苦戦していた硬さをいとも容易く斬り裂く切れ味か?

 違う。

 最高な相棒の理由は『壊れない』からだ。

 唯華の産まれながらに備わった類稀なる身体能力をフル活用できるからだ。

 今まで抑えていた力を解放して遺憾無く発揮する。

 これぞ正に、鬼に金棒なのだ。

 「フッ!」

 地面を砕く力で踏み込み、相手の身体を跳躍しながら切断して行く。

 しかし、クイーンドリアードはすぐさま再生する。

 「少し小さくなりましたね。それでは、除草と行きましょうか。雑草よりもしつこい木屑よ」

 唯華がドリアードを切断できるなら、負ける事は無いだろう。

 禁具⋯⋯これが派閥争いに発展した要因である。

 禁具を適切に管理し要領を守って使用する、禁具規制派閥。この場合訓練やテストなどがありチャンスを掴めない人が多く天才の発掘も難しい。

 禁具は誰にでも手にするチャンスがあって構わない、禁具自由派閥。暴走しても所有者を殺せばペナルティの判明に繋がり、適合したら天才の発掘に繋がる。

 我が家は前者だ。

 我が家は禁具を回収し適切な管理を行い、使いこなせる人にのみ様々な評価を下して合格したならば力を借りていた。

 まぁ、今となっては昔の話だ。この目的を引き継いでいるつもりではあるがな。

 「今はこの人の回復に専念しないとね。⋯⋯ごめんね」

 俺は天野さんのおでこにデコピンを強く放った。

 「⋯⋯全く回復しない。本来の適正消費量を大きく超えたな。身体にかなりの負荷が掛かってる」

 そもそも神聖力って奴は魔力と違う。回復させられるのか?

 分からない。

 「でも、唯華はやれる事を全力でやってるんだ。このゼラが何もやらないのは間違ってるのよ!」
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