物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
上 下
149 / 179

物理系魔法少女、相手の巣だろうが関係ない

しおりを挟む
 「えっと、え?」

 シロエさんが混乱する中、俺も普通に混乱している。

 数秒経つと、影の中に入った俺の手は押し出されるように弾かれる。

 「整理いたしますわ。⋯⋯影の中に入れる訳ですの?」

 「分からんけど、一定時間なら入れそうだ」

 それは大きな収穫だろう。

 一発も殴れなかったシャドーメインを捕まえる可能性が出て来たのは。

 シロエさんがシャトーメインが出て来る場所をピタリと言い当て、俺がそこに向かって全力で向かう。

 当然、シャドーメインは逃げるように影に沈むが、それは想定通り。

 俺は迷いなく、シャドーメインが沈んだ影に向かって手を突っ込んだ。

 「来た!」

 「ほんとですの!」

 「あ、いや。勘違いだったわ」

 「なんですの!」

 俺は平謝りしながらシロエさんの隣に戻り、次に出て来る場所を待つ。

 さっきはちょっとだけシャドーメインに触れた気がする。

 後、もう少し速ければ捕まえる事はできるはずだ。

 「あそこですわ!」

 シロエさんが指を向けた瞬間にその場所に向かって走り、頭を少し出したタイミングを完璧に狙う。

 一回試したが、その場合は完全に出て来る前に引っ込む。

 だが、今回はその前の展開とは明らかに条件が違う。

 「クソっ!」

 だけと、あと少しで掴めなかった。

 掴んだと思ったら、しゅるっと抜けやがった。

 「次に備えますわよ」

 「⋯⋯ああ」

 流石に面倒になってきたな。

 たが、どうする?

 手を突っ込めても掴むまでには至らない。そうすると引きずり出す事も叶わない。

 俺はシロエさんの指を向ける動きに全神経を注いで、動いた瞬間に動ける様に準備をする。

 「あ⋯⋯」

 シロエさんが少し動き、指を向ける場所を予測して一瞬で向かう。

 「っちですわ!」

 「きゅーな方向転換!」

 九十度角度を変えて、一気に走る。

 出て来たシャドーメインはすぐに影に引っ込む。

 「手が入れるって事は全身を入るよなぁ!」

 「⋯⋯まさかアカツキさん! それは危険ですわ!」

 「危険なくして、探索者なんてできねぇよ!」

 俺は影の中に水泳選手のごとく、飛び込んだ。

 「アイキャン、スイミング!」

 影の中に呑み込まれる感覚、それを肉体的に感じるとは夢にも思ってなかった。

 水中にいるような感覚、息ができない。水中の中とは違い、影が絡みついてくるので動きにくい。

 周りの景色も当然見えないし、足場だってある訳じゃないし不安定だ。

 そんな自分の巣に飛び込んで来た人間をシャドーメインは餌として見るか、それとも敵として見るか。

 どっちにしろ敵意を見せると言うのなら、俺はそこに反応するだけだ。

 狙いは首後ろ当たりだろう。

 水中の中より動きにくいけど、それでも動けない訳じゃない。

 タイミングを感覚的に掴み、後ろに手を開いて伸ばす。

 引っ込めようとするのを肌で感じる。しかし、それを許さない。

 ガシッと掴んで、自分側に向かって強く引き寄せる。

 これなら回避できないだろう、その意味を込めて笑みを零す。

 握り拳を作り、シャドーメインに向かって⋯⋯突き出さなかった。

 今思ったんだが、こいつを倒しても大丈夫なのだろうか?

 そんな思考が頭中に過ぎると、動きは止まってしまう。

 その隙をシャドーメインは容赦なく襲いにかかる。

 凶悪な爪が俺に届くよりも前に決断を下した。

 ここでは倒さない。

 掴んだ腕を無理やり、力強く上に向かって放った。

 いくら動きが遅くなろうとも、パワーが普段よりも落ちようとも、シャドーメインと言う人型の軽量級の魔物なら外に飛ばせる。

 影の外に放り出したら、俺は水中を泳ぐように影の中を上る。

 「オラッ!」

 影から手を出して、地面に触れたと感じた瞬間に、手の力だけで飛び出す。

 シャドーメインに向かってまっすぐと突き進む俺は拳を固める。

 「くっそ面倒な相手をさせやがって!」

 今までコイツに使った時間の辛さと怒りを込めた、俺の拳。

 防いでも、攻撃特化のシャドーメインには防御しきれない。

 回避もお得意の影移動は影の無い状態では使えない。

 「これが詰みって奴だ!」

 シャドーメインは最期の苦し紛れの攻撃として、俺の拳に爪を合わせる。

 しかし、硬度が違う。

 爪を痛みもなく砕き、止まる事や減速する事はなく、奴の顔面に拳をねじ込んだ。

 「吹き飛べや、クソッタレが!」

 顔面にヒットした拳を力強く打ち抜く。

 砕け去ったシャドーメインの顔、最後に残るのはシャドーメインの魔石だけだ。

 「なんとか勝利」

 「良かったですわ」

 「出て来る場所が分かったのは助かったよ。魔石、どうする? どっちかが売って、後に折半するか?」

 「いいえ。わたくしはお金に困っておりませんもの。どうぞお受け取りください。それに、今回の勝利の過半数はアカツキさんの功績ですわよ」

 「そうかな? それじゃ、ありがたく貰っておくよ」

 テイム系のスキルを使って、魔物を利用して盗みを働いていた男はしっかりと、自衛隊に突き出した。

 後はギルド経由で警察に行くだろう。証言の方も録音しているしね。

 警察の方で色々な方法で聞き出して、証拠集めとかするだろう。

 ダンジョンの事件ってのは基本的に発見されない。今回は犯人が愚かだったのだ。

 「それでは、またいつか」

 「ああ」

 俺はシロエさんを送ってから、もう少し金稼ぎをしようとダンジョンに潜る。弁当も食べたいし。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...