物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、根性論は最強

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 無理ってどう言う事だ?

 俺がミドリさんの言葉を理解できないでフリーズしていると、炎が向かって来た。

 刃がその炎を受け止めてくれる。

 「無理なんや。悪魔に取り憑かれたら、心に侵入されたらどんな方法でも治す事なんてできないんや! 魂が根っこから変わるから」

 その話が本当なのか分からない。だけど、ミドリさんは真剣だ。

 アオイさんを助ける方法はないのか?

 少しでも自我を取り戻そうとしている感じがするのに、本当に助けられないのか?

 「倒さなあかん。ミドリ、やるんや。やらなかいかんねん!」

 口から血が出る程に歯を食いしばり、彼女が刃を剣の形に戻す。

 ミドリさんは震える足取りでアオイさんに向かって歩くが、とても無防備であり炎が迫る。

 しかし、何かをしたようには見えないのに強い風が炎から守る。

 自動防衛なのか?

 「倒さないと倒さないと」

 同じ言葉をブツブツと並べる。

 炎の槍を形成して、ミドリさんに放つ。

 自動防衛の風を突破して本人に迫る。

 「危ない!」

 避ける素振りや防ぐ素振りが全く見えなかったので、押し倒した。

 怯えた目をあちこちに動かして、焦点が定まってないようだった。

 「落ち着いて! 諦めないで! まだ、助かる方法はあるかもしれない!」

 「そんなのはないんや! そんな事ができるなら、とっくにしとる!」

 「ああそうだろうよ。ごもっともな意見だよ。だけど、君の知らない事は世の中にいっぱいあるんだ!」

 「だとしてもや!」

 俺の叫びに反発するように叫ぶミドリさん。

 なんとかあの状態からは戻せた。

 だけどアオイさんの魔法が弱くなるってのはなく、むしろ時間を与えた事で練った魔法が飛んでくる。

 貫通力のありそうな形をした魔法を蹴り飛ばして破壊する。

 形ある魔法なら俺でも対処できる。

 「いくら考えたって、俺達で悪魔に取り憑かれた? 状態から戻す方法は思いつかないだろう」

 「あたりまえや。倒すしかないんや。それが一番、アオイちゃんを苦しめない方法。悪魔に取り憑かれた人間を苦しませない方法や!」

 「そんな事はない!」

 俺は魔法を破壊して、ミドリさんの目をまっすぐ見つめる。

 「彼女は少しだけ、自分の言葉を出していた。自我を取り戻そうとしているんだ」

 「だからなんや」

 「悪魔とか天使とか、そんなもんどうでも良い。彼女は自ら、暴走を止める!」

 「その根拠はなんや!」

 俺は自分の心臓部分を拳で叩く。

 「根拠はない根性論であり理想論だ!」

 「ふざけんなや!」

 「ふざけてない! 人の想いはな、時に神すら超えるんだよ!」

 知らないけどな!

 だけど、人の気持ちってのは他者には理解されないし、たとえ神でも理解できない。

 それだけ複雑で不思議なモノなんだ。

 強い想いがまだアオイさんに残っているのなら、彼女が本気で助かりたいと思うなら、きっと大丈夫だ。

 「俺達はアオイさんが自分を取り戻すまで、時間を稼ぐ! あるいは魔力を限界まで減らす!」

 「アオイちゃんの魔力評価はSなんや! 夜まで戦っても半分も減らん!」

 「だったら次の日までやれば良い。減るまで、疲れるまで、ずっと戦えば良い」

 そんなのは俺の得意分野だ。

 互いに魔法を破壊しながら、対話をする。

 ミドリさんの心の内にもあるはずだ。アオイさんを助けたいって。

 俺以上の想いでそう思っているはずだ。

 理屈とかそんなのは関係ない。人ってのは時に、誰にも理解されない事をやるもんだ。

 「二択だ。アオイさんを助けたいか、殺したいか! 君の想いで、ミドリさんの想いで、選べよ!」

 「うちは、魔法、少女で⋯⋯」

 それ関係ある?

 ないよね?

 「俺は君の意思について聞いた! 現代文苦手か? 質問の答えになってない」

 ダメだ。

 これじゃ埒が明かない。

 アオイさんの魔力を消費させる、咄嗟に口から出た適当な発言だけど実は良い思う。

 精霊が来たら解決策が見つかるかもしれない。それまで弱らせる。

 難しそうで実は簡単だ。

 ただ長時間戦えば良い。

 「そんなん。得意分野だ」

 俺はアオイさんに向かって走り、当たらない程度にギリギリを狙ってステッキを投げる。

 その速度に怯む相手は反射的に魔法を使って防ごうとする。

 当然、その分魔力の食費は早くなるのだ。

 俺が近づけば、拒絶するように魔法を使う。

 「クルナアアアア!」

 「嫌だね。俺は近距離じゃないと戦えない!」

 形のない魔法、まるで津波だ。

 それが俺に迫ってくる。

 一度だけ訓練施設を使った事がある。その時を思い出せ。

 正拳突きの構え。

 「強く、そして速くっ!」

 俺の本気は、形のない魔法だろうと、ぶっ飛ばす!

 「必殺マジカルシリーズ」

 俺の拳が光る。邪魔くさい光だ。

 だけどもう慣れたから、力を緩めるなんてバカな事はしない。

 この光は、俺が本気の証拠だ。

 「本気殴りマジカルパンチ

 俺の突き出した拳は炎の魔法を分散させて貫通し、衝撃波でアオイさんを奥まで吹き飛ばす。

 炎で防御してくれた。

 「何度でも防げ、何度でも攻撃して来い。俺のS評価の体力とアオイさんのS評価の魔力、どっちが先に尽きるか、見物だなぁおい!」

 悪魔に取り憑かれたら助ける方法はない?

 だからどうした!

 救済ってのは、決して他者にしてもらう必要はない。

 自分で自分自身を助けてやれば良い。必要なのは踏み出す勇気だ。

 結局気持ち。

 どんな人だって、最初は気持ちが先行するもんだ。

 「全力で来いや!」
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