物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
116 / 179

物理系魔法少女、力>技術

しおりを挟む
 SNSで何とか問題ない事を伝えて、ブライベートへと移行する。

 まだ一回しか使った事のなかったドローンがぶっ壊れたので、精神的ダメージはかなり大きい。

 チョップの衝撃波で吹き飛ばされ、木に激突して粉砕⋯⋯見にくくなるけど、距離設定変えておけば良かった。

 「ショックだ」

 アカツキを狙って来る人を考えて、念の為にアルファの見た目になっておく。

 パーカーなので、ダンジョンの中だとこれでも普通に目立つ。

 かと言って、鎧の姿になる気はない。

 動きにくくなるし、装備した時の見た目は良く分からないので変身が普通にできない。

 巨人の心臓を手に入れるべく、巨人を殴り倒していく。

 「本気殴りをする度に眩しくなるのか。厄介だな」

 目を閉じてしまう。しかも、意識してないと力を緩めてしまう。

 何かを本気でやりにくくなる。邪魔くさいシステムだ。

 そろそろ帰る時間、と言うところまで数体の巨人を倒して、魔石を回収した。

 だけど、レアドロップとかは無くて悲しくも平和なダンジョン探索になった。

 「頼むから損害はなくなってくれ。マイナスはやめてくれ」

 そう願ってゲートに向かうと、正面に三人の人影が見える。

 すれ違うのは面倒だと考えて、木をグルリと回って回避しようとした⋯⋯のだが目の前に来ていた。

 同じ考えだったか。

 「こ、こんにちは」

 俺が挨拶すると、真ん中にいるちっこい女性がふんっと鼻息荒く俺を睨んで来る。

 「神器は己を滅ぼす、回収するから寄越せ」

 そういきなり言って来て、手を伸ばして来る。

 神器?

 「知らない顔をしてもムダぞ!」

 「神器ってなんですか?」

 「シラを切るのか。しかたあるまい一号、二号!」

 両サイドの人が前に出る。俺から見て左側の人が鼻をスンスンしている。

 「おや?」

 俺はその人に見覚えがあった。

 前にスーパーで卵を譲った、表情や声が無機質な女性だったのだ。

 まさかの再会に俺はめんどくせぇと思うが、今の俺は女性なのでバレる事はないだろう。

 「最悪命は問わん! とにかく神器を回収する! 二人とも、行け!」

 「主人の命令です。すみませんが、大人しくしてください」

 メイド服に刀と言うシュールな彼女は俺に真っ直ぐな目を向けて、距離を一瞬でゼロにして来る。

 容赦なく首に刀を突き立てられた。ギリギリで右手で掴む。

 砕こうと思ったのだが、一向に壊れる気配がしない。

 「そんじゃ、オレも行くかな」

 赤褐色の髪をした忍者っぽい男が双剣で俺の背中を斬ろうと背後に移動して来る。

 瞬時に反応して跳躍し、それを回避して反撃に回転をかけて蹴りを飛ばす。

 だが、俺が蹴ったのは木の一部だった。

 「忍法、変わり身の術⋯⋯的な?」

 「⋯⋯ちょっとイイな」

 「どーも」

 褒めたのに手加減はなく、二人は俺に迫って来る。

 二人ともその顔に感情と言うのは見えず、ロボットのように無機質だ。

 殺意とかも何も感じない。

 いや、むしろ俺はいつから殺意とかあいまいなモノを感じ取れるようになった?

 そんなスキルは無いし、レベルアップの影響か?

 「本当に神器なんて知らないんだよ。それなのに攻撃するなって」

 「そんなのは信じんぞ! 神器を悪用する気ぞ! 今までどれだけ騙されてきたと思ってる!」

 「ちょ、おまっ。何も知らない人間を自分の中の知識だけで決めつけるんじゃない!」

 誰だよそんな嘘つきどもは!

 俺の話は聞いてくれないようで、メイドと忍者と言う不思議なコンビの相手をする事になった。

 「火遁!」

 「おお! 口から火を出せるのか!」

 形は無さそうだったので避ける。

 その避けた先にメイドが割り込んで来て、刀を抜刀する。

 鞘で溜め込んだ力で放たれる斬撃のスピードは風のように速い。

 「とっ」

 「一号何やってんだよ」

 「きちんと狙ってますよ。ただ躱されたんですよ。てめぇと同類」

 メイドさんは一号で忍者くんは二号っぽいな。

 さて、身に覚えのない情報で攻撃されるので本当はあまり手荒い事はしたくない。

 だけど、やらないといけないっぽいな。

 「そんじゃ、こっちもそろそろ反撃するかな」

 「その方が良いかと」

 「オレらもその方が罪悪感無くて良いな。できればさっさと詳細を話して神器をくれないか? あまりコロシはしたくねぇ」

 だったらその刃をしまって、ちゃんと話し合いたいと思うのだが⋯⋯あのロリっ子がそれを許さないんだろうな。

 なんて従順なんだ。

 一号が花のように美しい斬撃を俺に浴びせる。対して俺はバットで応戦する。

 「ムッ。この太刀筋も見破られるとは⋯⋯少し悔しいですね」

 本当にそう思ってますか? 目を少しも歪ませる事無くまばたきさえもしてないのに?

 納刀して、抜刀術の構えを取る。

 目にも止まらぬ速さの斬撃が放たれるが、バットで弾く。

 「これも⋯⋯」

 左の拳を固めて、一号さんに軽く突き出す。

 そのパンチは拳が触れてなくとも衝撃波だけでかなりのダメージを与える。

 「ぐっ」

 「一号! 何をした⋯⋯それが神器の力か?」

 「神器ってか、ステータスの力な気がする」

 「ふむ。ならばこう行こうか」

 二号くんが分身して五人くらいになり、さらに姿を消した。

 刹那、俺を囲むように五人の二号くんが出現して双剣を構えて来る。

 「そらっ!」

 俺は地面を強く踏み、その衝撃波と地面の破片で二号くん達を吹き飛ばす。

 それで分身が消えたのか、一体になった二号くんに一瞬で近づいた。

 「オレよか速いか」

 「スピードはそっちの方が上じゃない? ただ、パワーが足らんよ」

 バットを振り下ろした。

 しかし、片手で振るったバットを刀で一号さんが防いで来た。

 金属音が鼓膜を揺らす。

 「オラッ!」

 その状態で強引に振り抜いたら、受け流されて回避された。

 技術で圧倒的な敗北⋯⋯しかたないか。俺、バットの見た目したステッキだし。

 「土遁!」

 俺の足場が沼のようになって沈み、地面が棘となって貫こうと迫って来る。

 「飛来剣!」

 さらに一号さんの斬撃が飛んで来る。

 訳の分からぬまま殺されるなんて、絶対に嫌だ。

 二号くんに言おう。俺と戦うなら全身をどうにかしないとダメなんだよ。

 俺のパワーはどんな状況でも出せるんだ。

 「オラッ!」

 バットを両手で強く握って、振るって出る衝撃波で忍術と飛来してきた斬撃を破壊する。

 「まじか」

 「凄いですね。このパワーは魔力とかでは無さそう」

 驚いているようだが、そうは見えない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...