物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
上 下
112 / 179

ロリ職員に脅される

しおりを挟む
 「まさかダンジョンの中で犯罪が行われていたなんて、びっくりだよ」

 「やっぱり普通はないの?」

 「⋯⋯ギルド職員的には言えないんだけどね。殺人とかはぶっちゃけ、魔物のせいにできたりするから無い訳じゃないよ⋯⋯でも誘拐は別。そんなの普通はできない」

 つまりは普通じゃなければできる訳か。

 秘書さんみたいな空間魔法があれば話は別なのかもしれないけどね。それとも他の何かか。

 彼女が加担しているとは思ってない。あの人はそう言うのを絶対にやらない。

 犯罪者達を見張っていた事もあり、今回の稼ぎはそこそこ少なめだったと言える。

 紗奈ちゃんが来るのを待っている間に、ドローンカメラとスマホを繋げて設定を終わらせておく。

 次はどんな配信にしようかと考え込んでいると、後ろからロリ職員が軽く叩いて来た。

 「ちわっす」

 「お久しぶりですね」

 「そうだね~最近は田中くんが良く絡むからさぁ」

 俺の隣に座って、コーヒーをすする。

 「最近良い事あった? そうだね⋯⋯例えば結婚条件が達成したとか」

 「質問を質問で返す悪いクセがあるんですが、またそのクセが出てきそうです。知ってて言ってませんか?」

 「ふっふっふ。女の子の耳は早いんですよ」

 ギルド職員は公務員であり、そこそこ難しい。

 天才だとしても、果たして女の子の年齢なのだろうか?

 今の時代、見た目なんて簡単に偽れるんだ。ソースは俺。

 「家族への挨拶とか、色々やる事はありますがね」

 「良かったねぇ。覚悟決めてバシッとやりなよ? もう紗奈っちに気を使わせるのはさ、可哀想だからね」

 「⋯⋯それは、まぁ、確かにそうですね」

 「はっきりしろ」

 まずは身だしなみを整える必要があるかな?

 紗奈ちゃんと会ってから、基本ダンジョンが二人でのんびりしているもんで、床屋に行っていない。

 髪を洗うのも大変になって来たし、そろそろ散髪すべきだろう。

 「それじゃ、お幸せに⋯⋯しないと許さないから」

 「⋯⋯ッ!」

 一瞬、ロリ職員から今までに感じた事の無い重圧を感じた。

 紗奈ちゃんが怒った時よりも重い、何かだ。

 「俺なりに頑張るつもりです。⋯⋯つもりじゃないです。頑張る」

 「うん。その意気は認めよう少年」

 そう上から目線の言葉を残されて、彼女はどこかに消えた。

 入れ替えるように紗奈ちゃんが裏からやって来た。

 「どうしたの?」

 「いや、なんでも⋯⋯どうして少し顔を赤らめてるの? 何かあった?」

 「なんでもないよ」

 「それなら良いけど⋯⋯」

 俺と紗奈ちゃんは家に向かって帰った。腕を組んで。

 紗奈ちゃんのちょっとおかしなテンションに何かを言うつもりは無い⋯⋯今になってしまえば周りの目も気にならない。

 俺のメンタルも強くなっているのだろう。

 それに、美少女に腕を組まれて向けられる視線なんてほとんど一緒だ。嫉妬と疑問。

 氷の手錠をされて歩かされた時の様々な視線の数々と比べたら、ふっ。大したものじゃないな。

 家に到着した。

 「どうしたんですかユリアさん?」

 「大丈夫ですか?」

 家に入るなり、ユリアさんがおかしな方向に腕を曲げて倒れていた。

 見るからに大丈夫じゃないけど、紗奈ちゃんの言葉は正しいのだろうか?

 彼女自身は痛がっている様子がないので、俺も冷静に声をかけてしまった。

 「ああ。ヨガをやろうと思ったんだが、ちょっと失敗してね」

 「失敗して腕の骨を曲げる人を俺は初めて見ました」

 「それは良い経験をしたね」

 笑顔で何を言っているのだろうこの人は。

 「一人の力じゃどうにも⋯⋯もっとおかしな方に曲がってね。紗奈助けてくれ」

 「はいはい」

 紗奈ちゃんは慣れた手つきで腕を元の形に戻した。

 俺はリビングに行き、机に置かれているチラシを確認した。

 『ヨガパワーで悟りを』と言うとても怪しいチラシだ。

 こんなのを信じる人はいるのだろうか? バカバカしい。

 だいたい、ヨガだけで悟りを得られて力を得られるのなら、誰だってやっているだろう。

 できたとしても、何年何十年の話だと言うのか。

 「へっ」

 鼻で笑って、ゴミ出しの日に出すために紙をまとめようとすると、少し悲しげな顔をしたユリアさんが目に入る。

 ちらっとチラシを見て、少しだけ試そうと思った。

 チラシを少し上にあげると、面白いように彼女の目はチラシに行った。

 「ユリアさんこんなのを信じたんですか?」

 「こ、こんなのとはなんだ。これでも色々と考えた結果なんだぞ。紗奈は今、さらに自分の力を制御しようと努力を始めた。だったら先生らしく、己も鍛えなくてどうする」

 考えることがあったのだろう。

 紗奈ちゃんの場合は私生活に本来は影響ないくらいには制御できていたけど、最近はそうじゃなかった。

 だから力を制御しようとしている。それに感化されたのだろう。

 おいてきぼりの気持ちがじわりと登って来る。

 「ユリアさんってお酒大丈夫ですか? オーガの里ダンジョンで手に入ったんですけど?」

 俺は荷物から瓢箪を取り出す。

 「ああ飲めるよ。⋯⋯良いのか? そんな良いモノを」

 「はい。ほぼ一人で飲む量にしては多いので」

 「え、私もコップ一杯分くらいは飲むよ!」

 「紗奈はそれでも酔うと思うけど⋯⋯安心してくれ。全力で暴走は止める」

 頼もしい限りだ。⋯⋯さすがに一杯じゃ紗奈ちゃんは酔わないと思うけどね。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

魔法少女に就職希望!

浅上秀
ファンタジー
就職活動中の主人公アミ。彼女の幼いころの夢は魔法少女になることだった。ある日、アミの前に現れたチャンス。アミは魔法怪人団オンナノテキと闘い世界を守ることを誓った。 そんなアミは現れるライバルたちと時にぶつかり、時に協力しあいながら日々成長していく。 コンセプトは20代でも魔法少女になりたい! 完結しました … ファンタジー ※なお作者には専門知識等はございません。全てフィクションです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...