物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
上 下
94 / 179

物理系魔法少女、勇者に助けられた

しおりを挟む
 「貴様、逃げるな!」

 「逃げるに決まってるだろ!」

 あんな大群を相手にできる訳ないだろ。

 スピードは俺の方が速い⋯⋯と思ったが蚊の悪魔の方が少しばかり速かった。

 しかし戦闘力で言えば俺の方が高く、殴り飛ばす。

 それでも立ち上がっては、俺に迫って来る。

 「しつこいな!」

 「貴様をここで絶望させるまで、我は倒れん!」

 俺はステッキをバットに変えて、蚊の悪魔をぶん殴る。

 しかし、奴はひらりと俺の攻撃を躱しやがった。

 「単調な攻撃は避けやすいな」

 「ちぃ」

 だからどうした?

 単調なら、それを上回る力で押せば良いだろうが!

 避けられようが、俺の攻撃は止まらない。

 地面を打ち砕く。

 「ぬおっ」

 「吹き飛べや!」

 怯んだ瞬間にフルスイングを決める。

 何かしらの魔法で防ごうどしたが、それだけじゃ俺の攻撃は止まらない。

 その魔法を砕いて、貫通させる。

 「おらっ!」

 「ぐふっ」

 吹き飛ばした悪魔を放置して俺は、ゲートの方向に向かって全力で走る。

 さすがにやばいって。

 「ふん。バカめ」

 「ああん?」

 「貴様の出口は⋯⋯あっちだ!」

 「だにぃ!」

 悪魔が倒れた方向がゲートだと言う。

 俺はまっすぐ走っていたはずだ。つまりは嘘。

 ⋯⋯いや違う。

 悪魔の大群とは正反対だから⋯⋯。

 「確かにあっちだ」

 「貴様は我を攻撃するのに夢中で方向を変えられている事に⋯⋯」

 まぁ、道は特にある訳じゃないしそのまま走れば良いか。草原だしね。

 逃げるんだよーん。

 「おいゴラァ待て!」

 待てと言って待つ奴がどこにいるのか。

 そんな事も知らない悪魔など放置だ放置。

 しかし、タイムオーバーらしい。

 大群の方からそれはもう、嫌になる程の魔法が飛来する。

 「しゃらくせぇ!」

 うちわで全て消滅させる。

 これで問題ないだろう。

 「ちぃ。囲まれたか」

 さぁて、どうしたものかな。

 この場を乗り切るのはさすがに無理だぞ。

 なんとなくだが、そんな気がする。

 「聖剣エクスカリバー!」

 悪魔の大群に巨大な光が降り注ぎ、一部がごっそりと減った。

 俺も蚊の悪魔も目を飛び出す。

 「世の中の害悪悪魔共め。この勇者が相手だ!」

 それに三人の仲間がいる。

 バランスの良いパーティだと一目で分かる。

 だが問題はそこじゃない。勇者と恥ずかしげもなく名乗った男の顔に俺は心当たりがある。

 紗奈ちゃんと仲が良い事で俺に絡んできた、青年である。

 そいつが、勇者と自称している。

 「勇者?」

 「下級悪魔共が、一人を相手に寄って集って⋯⋯全てこの俺が駆逐してやる!」

 悪魔の大群が勇者達のところに行き、順番に屠られている。

 かなり強い。

 「こりゃあやべぇ。逃げねぇと」

 「おっと待て。俺は逃がしてくれなかったんだ。今度はこっちの番な」

 「貴様! 立場が逆転したらその様か! 恥を知れ!」

 「知るか! 優位なら攻める、当然な摂理だろ」

 再び蚊の悪魔と戦いが始まったが、特に苦戦する事もなく殴り続けた。

 殴りながら思ったんだが、コイツかなり丈夫だ。

 殴ってもなかなか倒れない。

 「もう、勘弁してぇ」

 「⋯⋯人間を襲わない、絶望を撒き散らさないと約束するなら、見逃してやろう」

 なんかもう面倒だ。

 「わ、分かった。契約する。だからもう殴らないでぇ」

 約束ではなく契約?

 まぁ良いか。

 これで契約成立、俺は蚊の悪魔に背を向けた。悪魔も俺に背を向けた。

 「危ない!」

 そう言って、青年は蚊の悪魔を消滅させた。殺したのかもしれない。

 見逃すと契約したのに⋯⋯。

 「君、大丈夫か?」

 俺の魔法少女衣装には特に疑問を持たずに、心配してくれる。

 「ええ」

 「コイツらは悪魔なんだ。背を向けたら殺されてしまう」

 そうでも無いけど⋯⋯。

 「あーいや。違うか。今日の事は忘れた方が良い。悪魔とは関わってはならない」

 「危険なんですか?」

 「そうだね。聞く権利はある。ああ、危険だ。奴らは絶望を起こす害悪だ。この世界の害虫だ。だから、勇者であるこの田中が仲間と共に殲滅している」

 「天使の手下かな?」

 「天使?」

 そうでは無いのか。

 じゃあ本当に勇者と言うのがあって、悪魔を倒す⋯⋯魔王じゃないの?

 あー分からん。

 俺に疑問を与えないでくれ青年。

 「忘れてくれ、と言ったがもしかしたら悪魔から関わって来るかもしれない。その時はこの俺を呼んで欲しい。俺は田中英雄アーサーだ」

 「そうですか。それでは」

 俺は走って帰った。

 これとは関わる必要無さそうだし、今後とも関わらないようにしよう。

 アオイさん達魔法少女達は勇者について知っているだろうか?

 一応、言っておく? ん~。

 悩みながら俺はゲートを通った。

 ギリギリ遅刻では無いが、成果が乏しかったので紗奈ちゃんは苦い顔をした。

 「ごめんなさい」

 「いえ。時に運は下振れを起こすから⋯⋯待っててね。こっちももうすぐ終わりだから」

 「人間さらばだ! あ、違う。おつかれさまでした」

 紗奈ちゃんとスーパーに寄って行く。

 四人と言う、かなりの大人数になってしまった。

 そのため食材も多めに買う必要があるのだ。

 なんとも厄介な。

 「引越し初のダンジョンだし、祝いとしてオムライス作りますか」

 「お、やった。紗奈ちゃんのオムライスは特に美味いからな。手伝える事は言ってね」

 「うん」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...