92 / 179
物理系魔法少女、亀を打ち上げる
しおりを挟む
新しい部屋で布団で寝る、特に前の家との変化はなかった。
強いて言うのであれば、冷房の利きが良くてとても快適だった、だろうか?
紗奈ちゃんの冷気が来なかったので、使用した。前だと紗奈ちゃんが居る時は常にちょうど良いくらいに冷えていた。
リビングに向かうためにドアを開く。
「おはよう星夜さん」
「おはよう」
ユリアさんは力の関係で紗奈ちゃんの近くに居るのが一番らしいので、納得はできる。
ただ未だに納得できない事がある。それが彼女だ。
未だに名前どころか苗字すら分かってない本部長の秘書さん。
紗奈ちゃんの晩御飯を食べに不法侵入が日常化し、いつしか同じ屋根の下で寝るまでになった。
仕事場はかなり離れた東京にあるのに、彼女は一瞬で行ける。
「紗奈ちゃんの負担が増えなければ良いんだけど⋯⋯」
当人は楽しそうなので、俺は何も言えない。
朝ごはんを食べ、弁当を受け取り、俺達はギルドに向かう。
ユリアさんと秘書さんは転移で消えた。
ギルドで紗奈ちゃんを待っていると、青年は絡んで来なかった。そのため、ロリ職員が絡んで来る⋯⋯事もなかった。
久しぶり? 懐かしの?
一人で紗奈ちゃんが受付に出るのを待つ。
受付に紗奈ちゃんが出たので、俺は向かう。
「星夜さん、今日はどのダンジョンに行くの?」
「宝玉の草原」
「金稼ぎが目的だね。分かった」
俺は無視しようとしたけど、やっぱり気になってしまったので、チラリと紗奈ちゃんの後ろにいる女性を見る。
目だけを動かして見たのに、彼女は気づいたようだった。
「えっと、おはようなのだ人間!」
まるで自分が人間では無いように言うが⋯⋯もしかしたら正しいのかもしれない。
角に尻尾、それに翼もある。
まじで誰だろう?
「こーら、ちゃんと敬語を使いなさい」
「なにっ! 貴様だってこの人間に敬語を使ってないではないか! 差別だ!」
「区別よ。私は良いの。特別だから。ちゃんと敬語使わないと、ここでは働けないよ」
「ぐぬっ、それは困る。あのスライムのところには居たくない!」
二人で会話を始めてしまった。大丈夫か?
紗奈ちゃんが我に返ったように振り返り、俺にステータスカードを差し出す。
「今日も気をつけてね。残業は許さないから」
「ああ。それはもう、魂の底まで刻まれているさ」
「なんか貴⋯⋯セイヤさん? を見ていると哀れに思えるな」
勝手に哀れむな。
ゲートを通って、ところどころ光に反射する草原が広がるダンジョンに入った。
ここでは宝玉関係のドロップアイテムが多く手に入る。
それは高額で買い取られるため、金を稼ぐにはちょうど良いダンジョンなのだ。
だけどそこまで人気があるとは言えない。それは何故か。
敵がクッソ硬いのである。
宝玉の甲羅を持つ巨大な亀が主な魔物であり、そいつがとにかく硬いのだ。
金は稼げるが時間と労力がかかり、亀を倒すための道具を揃える必要もあるため、不人気なダンジョンとなってしまった。
だが俺は挑む。なぜなら金が欲しいから。
二日間暇で、知識豊富なユリアさんに協力してもらい、俺はとあるアイテムを購入したいと思ったのだ。⋯⋯毎晩己の動画を流すのはかなりの苦行だった。
そのためには金が必要だ。金が欲しい。とにかく金がいるのだ。
「俺の探索者ライフを大きく変えるためにも、たくさん稼ぐぞー!」
と、息巻いて数時間、今は弁当を食べている。
俺の成果はゼロである。
このダンジョンの不人気なポイントは決して、魔物本体だけでは無いのだ。
それを今、痛感している。
「エンカウント率が低い。てか、昼まで走り回って一体も居ねぇ!」
数が少ないんだよ!
いっそ、この辺の土を掘り起こして宝石を見つける方が稼げるんじゃないかと思ってしまう程だ。
だからこそ、人が少ないダンジョンなのだろう。
「何かコツとかないのかな?」
そんな事をグチグチ言いながら、必死に魔物を探した。
そしてようやく、ようやく発見した。
「甲羅は見た感じ⋯⋯サファイアか」
亀の中ではランクは低い。
「魔法少女のパンチ力で沈めや亀ええええええ!」
落下の勢いを乗せた拳が亀の甲羅に炸裂した。
プルプルと全身に回る衝撃。
「いっっっってえええええええ!」
クッソ硬いってレベルじゃないだろ。なんだよこの硬さ!
しかも硬質感がとてもあるせいで、反動がめっちゃ痛い。
いや、宝石の甲羅を殴っただけでここまでの反動が来るとは考えにくい。
「お前、攻撃反射系のスキル持ってんな」
ただ、少しだけ甲羅は凹んでいる。何発が殴れば勝てるだろう。
だけど痛い。
亀が顔を出して、石を吐き出した。これは大した事はなく、簡単に砕ける。
「問題は⋯⋯って、器用だな」
亀が裏返り、自らを回転させて迫ってくる。
甲羅のツルツル感を利用したスピン攻撃だろう。なかなかに速い。
跳躍して避けた。
「腹は柔らかかったりしますか?」
だけど同じ宝石があるんだよなぁ。嫌な感じがビンビンするので攻撃は止めておく。
それだったら顔とかの方が良いかもしれないが、引っ込んでしまうんだよな。踏んでもないのに。
「あ」
俺はステッキを鉄の棒にして、瞬時に横に周り腹の下に差し込む。
大きなスプーンをイメージして、変化させる。
後は壊れないステッキのチート性能を利用して、力いっぱい持ち上げる。
「ミュータントゾンビの方が、重いんじゃ!」
上空にぶち上げて、そのまま落下して来る亀。
うん。これが一番簡単に倒せる方法だ。間接的なら反動もねぇし。
三回やったら甲羅が砕けて魔石に変わった。あと、サファイアがドロップした。
強いて言うのであれば、冷房の利きが良くてとても快適だった、だろうか?
紗奈ちゃんの冷気が来なかったので、使用した。前だと紗奈ちゃんが居る時は常にちょうど良いくらいに冷えていた。
リビングに向かうためにドアを開く。
「おはよう星夜さん」
「おはよう」
ユリアさんは力の関係で紗奈ちゃんの近くに居るのが一番らしいので、納得はできる。
ただ未だに納得できない事がある。それが彼女だ。
未だに名前どころか苗字すら分かってない本部長の秘書さん。
紗奈ちゃんの晩御飯を食べに不法侵入が日常化し、いつしか同じ屋根の下で寝るまでになった。
仕事場はかなり離れた東京にあるのに、彼女は一瞬で行ける。
「紗奈ちゃんの負担が増えなければ良いんだけど⋯⋯」
当人は楽しそうなので、俺は何も言えない。
朝ごはんを食べ、弁当を受け取り、俺達はギルドに向かう。
ユリアさんと秘書さんは転移で消えた。
ギルドで紗奈ちゃんを待っていると、青年は絡んで来なかった。そのため、ロリ職員が絡んで来る⋯⋯事もなかった。
久しぶり? 懐かしの?
一人で紗奈ちゃんが受付に出るのを待つ。
受付に紗奈ちゃんが出たので、俺は向かう。
「星夜さん、今日はどのダンジョンに行くの?」
「宝玉の草原」
「金稼ぎが目的だね。分かった」
俺は無視しようとしたけど、やっぱり気になってしまったので、チラリと紗奈ちゃんの後ろにいる女性を見る。
目だけを動かして見たのに、彼女は気づいたようだった。
「えっと、おはようなのだ人間!」
まるで自分が人間では無いように言うが⋯⋯もしかしたら正しいのかもしれない。
角に尻尾、それに翼もある。
まじで誰だろう?
「こーら、ちゃんと敬語を使いなさい」
「なにっ! 貴様だってこの人間に敬語を使ってないではないか! 差別だ!」
「区別よ。私は良いの。特別だから。ちゃんと敬語使わないと、ここでは働けないよ」
「ぐぬっ、それは困る。あのスライムのところには居たくない!」
二人で会話を始めてしまった。大丈夫か?
紗奈ちゃんが我に返ったように振り返り、俺にステータスカードを差し出す。
「今日も気をつけてね。残業は許さないから」
「ああ。それはもう、魂の底まで刻まれているさ」
「なんか貴⋯⋯セイヤさん? を見ていると哀れに思えるな」
勝手に哀れむな。
ゲートを通って、ところどころ光に反射する草原が広がるダンジョンに入った。
ここでは宝玉関係のドロップアイテムが多く手に入る。
それは高額で買い取られるため、金を稼ぐにはちょうど良いダンジョンなのだ。
だけどそこまで人気があるとは言えない。それは何故か。
敵がクッソ硬いのである。
宝玉の甲羅を持つ巨大な亀が主な魔物であり、そいつがとにかく硬いのだ。
金は稼げるが時間と労力がかかり、亀を倒すための道具を揃える必要もあるため、不人気なダンジョンとなってしまった。
だが俺は挑む。なぜなら金が欲しいから。
二日間暇で、知識豊富なユリアさんに協力してもらい、俺はとあるアイテムを購入したいと思ったのだ。⋯⋯毎晩己の動画を流すのはかなりの苦行だった。
そのためには金が必要だ。金が欲しい。とにかく金がいるのだ。
「俺の探索者ライフを大きく変えるためにも、たくさん稼ぐぞー!」
と、息巻いて数時間、今は弁当を食べている。
俺の成果はゼロである。
このダンジョンの不人気なポイントは決して、魔物本体だけでは無いのだ。
それを今、痛感している。
「エンカウント率が低い。てか、昼まで走り回って一体も居ねぇ!」
数が少ないんだよ!
いっそ、この辺の土を掘り起こして宝石を見つける方が稼げるんじゃないかと思ってしまう程だ。
だからこそ、人が少ないダンジョンなのだろう。
「何かコツとかないのかな?」
そんな事をグチグチ言いながら、必死に魔物を探した。
そしてようやく、ようやく発見した。
「甲羅は見た感じ⋯⋯サファイアか」
亀の中ではランクは低い。
「魔法少女のパンチ力で沈めや亀ええええええ!」
落下の勢いを乗せた拳が亀の甲羅に炸裂した。
プルプルと全身に回る衝撃。
「いっっっってえええええええ!」
クッソ硬いってレベルじゃないだろ。なんだよこの硬さ!
しかも硬質感がとてもあるせいで、反動がめっちゃ痛い。
いや、宝石の甲羅を殴っただけでここまでの反動が来るとは考えにくい。
「お前、攻撃反射系のスキル持ってんな」
ただ、少しだけ甲羅は凹んでいる。何発が殴れば勝てるだろう。
だけど痛い。
亀が顔を出して、石を吐き出した。これは大した事はなく、簡単に砕ける。
「問題は⋯⋯って、器用だな」
亀が裏返り、自らを回転させて迫ってくる。
甲羅のツルツル感を利用したスピン攻撃だろう。なかなかに速い。
跳躍して避けた。
「腹は柔らかかったりしますか?」
だけど同じ宝石があるんだよなぁ。嫌な感じがビンビンするので攻撃は止めておく。
それだったら顔とかの方が良いかもしれないが、引っ込んでしまうんだよな。踏んでもないのに。
「あ」
俺はステッキを鉄の棒にして、瞬時に横に周り腹の下に差し込む。
大きなスプーンをイメージして、変化させる。
後は壊れないステッキのチート性能を利用して、力いっぱい持ち上げる。
「ミュータントゾンビの方が、重いんじゃ!」
上空にぶち上げて、そのまま落下して来る亀。
うん。これが一番簡単に倒せる方法だ。間接的なら反動もねぇし。
三回やったら甲羅が砕けて魔石に変わった。あと、サファイアがドロップした。
0
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる