物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

文字の大きさ
上 下
88 / 179

人気受付嬢、アメリカ出張その3

しおりを挟む
 彼女の転移でドラゴンの目の前に移動した。

 刹那、相手も気づいて魔力が迸る。

 「ブレスか」

 「大丈夫」

 吐き出される黒炎のブレスを私は凍らせた。

 空間が弾けたように氷は砕ける。

 「フー」

 息を吐くだけで大地が凍る。身体の芯が冷える。

 私が寒いと感じる。

 これが私の全力だ。

 「ゴガアアアアアアアアア!」

 「紗奈!」

 刀を受け取る。

 これを使うのも久しい。

 妖刀、氷龍。

 「冥界の川コキュートス

 周囲を氷の世界に変える。ドラゴンから発せられる熱が溶かしていく。

 「紗奈の氷を溶かすの!」

 彼女も驚きながら、自分の愛剣を2本抜いている。

 まずは左足だ。

 肉薄すると、踏みつけの攻撃が来る。

 「やっぱり図体がでかいと小回りが利かないか」

 地面に氷龍を突き刺し、氷で踏みつけを防ぐ⋯⋯だが、体重で簡単に砕かれる。

 「過信はできないね~」

 「そうだね。こんな化け物は初めてだ」

 転移で脱出させてもらった。

 斬ると言ったものの、とても鱗が硬そうだ。

 それでもやるしかないのだけど。日本には絶対に来させない。

 「タイミングを合わせて」

 氷龍に魔力を込める。

 「はあああ!」

 「亜空切断!」

 同時に足に攻撃をした⋯⋯しかし、奴の鱗にかすり傷を与えただけで終わってしまう。

 それでも相手に取っては予想外なのか、けたたましい咆哮が響く。

 「ブレスが来るぞ!」

 「凍らせれそうだけど、怖いから回避する!」

 強く地面を蹴って跳躍し、地面を焼き野原にするブレスを回避した。

 回避した方向に向かって、ブレスが伸びる。

 「ふんっ!」

 ブレスを切断し切断面から凍る。

 相手の身体に降り立つ。私の足から焼けるような音と共に水蒸気がもくもくと出て来る。

 「凄い熱だな」

 身体に突き刺してみるけど、やっぱりビクともしない。

 「ん~魔力を身体中に溜め出したよ?」

 「助けて~」

 転移で助けてもらう。

 ドラゴンを中心に黒い爆発が広がった。

 なんて破壊力だ。マグマが噴水のように地中から出て来る。

 「で、本気はいつ出すの?」

 「まだ身体が冷え切ってない」

 「そっか。じゃあ、私が先に全力を出そうかな! 時間停止クロノス

 時間が止まり、彼女が魔法を駆使した斬撃を一点に浴びせる。

 そして時間は動き出す。

 「コガアアアア!」

 時間停止の時に様々な攻撃を繰り出し、動き出すと同時にその攻撃は同時に発動する。攻撃の圧縮と彼女は呼んでいる。

 足にそこそこのダメージを与え、皮膚を露出させた。

 「うん。良い感じ。全力なら通じそうだ」

 「やっぱり強いね、時空魔法は」

 「まぁね。停止中に全力で攻撃をして、圧縮させたけど⋯⋯それでも骨までは行かなかった」

 どうしてここのダンジョンでこんな化け物が生まれたか分からない。

 それでもやる事には関係ない。

 「やっぱ紗奈の本気も出して貰うよ。時間加速クロノス

 急速に身体の冷えが加速する。

 冷気が身体中から放出される。私一人で抑えられる魔力じゃないのだ。

 ブレスが向けられる。

 「待って⋯⋯まだ制御が」

 「転移⋯⋯ダメだ魔法が凍らされた! タイミングをミスった!」

 いや、相手がいきなりスピードを上げて来たんだ。

 さっきまでよりも素早い動きでこちらを向いている。

 「神威!」

 男の声が聞こえ、ドラゴンの頭に強撃が入る。

 「ジャパニーズ達に任せてられるかってんだ!」

 「ここは我々の国よ!」

 魔法や物理など、様々な攻撃がドラゴンを襲う。おかげでブレスは飛んで来なかった。

 複数の力を合わせた結果、額の鱗にヒビが入る。

 「落ち着いた。それじゃ、ちょっとやりますか」

 刀を納刀する。

 強く力を溜め、抜刀する。

 「氷結剣ハーデス

 刀に冷気の魔力を圧縮して斬る、だけの技。

 そこまで高度な技術でもなければ、珍しい技でもない。

 武器に魔力を流す初歩的な技術である。

 しかし、私のような魔力お化けが全力で溜めた魔力を一気に解放した時の爆発力は⋯⋯時にダンジョンですら斬った。

 軽く刃が入れば、そこから一気に凍る。凍った氷は刀が通った後の衝撃で砕ける。

 私の冷気は連鎖を繰り返し、奥へ奥へと凍らせては砕いて行く。

 そしてできるのは、片足の切断だ。

 一本足を無くしただけで支えられなくなった体重だった。

 無くなった足の方に倒れる。

 「なんて強さだ。この俺が出せる最大火力を超える⋯⋯本当に同レベルか?」

 「日本にはまだ、これくらいの猛者が居るって言うの?」

 「戦慄しているところ悪いけど、まだ終わってないからね!」

 友の言った通りだ。

 魔力が中心に集まっていくのを感じる。攻撃じゃない。

 なんだ?

 「なんじゃこりゃ?」

 「脱皮⋯⋯にしては異質だね」

 「早く帰りたいのに!」

 中心がぱっくりと割れて、中から出て来たのは⋯⋯二足歩行のドラゴンだった。

 人間のような体付きにより軽くなったのか、空を飛んでいる。

 「我はここに今、生まれた」

 天に向かって拳を掲げた。

 刹那、一瞬で大剣の男に近づいて腹を貫いた。

 「ごふっ」

 「ほう。急所を外したか⋯⋯それでも致命傷じゃないか?」

 手を抜いて、捨てる。

 他の人達が攻撃を始めるが、全てが避けられる。

 「これが人間か、中々に強いな」

 「まだ息がある! 皆さんは急いで逃げてください!」

 「おいてけるか!」

 「人型なら、むしろ得意分野です」

 転移で彼らを逃がしてもらう。一人でも死なせない。

 ここからは、私と彼女だけで十分だ。

 いや、むしろその方が良い。

 小型相手なら少数精鋭の方が動きやすい。彼らが弱いのではなく、純粋に連携ができない。

 正確な実力を把握している訳でもない。探索者は手の内をあまり明かさないから。

 さっきは助かった。だから今度はこっちが助ける。

 早く倒さないと帰れないし、それに大天使が来る可能性がある。

 「化け物の皮が剥がれたと思ったら、さらなる化け物が生まれた件について、どう思いますか?」

 彼女がそんなくだらない事を問うて来る。

 「そうだね。小型だから私達二人で相手するけど、勝てそう?」

 「質問で返すなよ。この世は二択だろ?」

 「そうね。やるか」

 「やらないか!」

 「「やってやる!」」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...