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物理系魔法少女、魔法が弱体化したかもしれん

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 「ふむ。ネコちゃんとイヌちゃん」

 ミドリがぬいぐるみを両手に持って品定めをしていた。

 施設にいる子供の一人が誕生日であり、その誕生日プレゼントを選んでいるのだ。

 「猫好きだから、猫かな」

 購入して、帰路に着く。

 だが、微かな殺気に当てられたため、その人物の背後に瞬時に移動する。

 しかし、相手はそれにさほど驚いた様子は無かった。あたかもそれが普通だと言わんばかりに。

 「なんや。銀光」

 「名前で呼べよ緑風」

 ギンギンにトゲトゲしい真っ白な歯を光らせて、口が裂けたように笑う金髪で短髪の少女。

 「で、なんのようや。アンタは北海道で色々としてたやんか」

 「てめぇがあめぇから、この俺が来てやったんだろ? んだよあの戦いは。さっさと手足もいで止血して拷問して洗脳して終わりだろ?」

 「お前に関係ないやろ」

 「なくねぇよ。俺だって銀光の魔法少女だぜ?」

 使徒ですら把握してない魔法少女は数人だけ存在していた。

 「それに俺は悪魔を殺した経験があるんだ。俺の方が確実に天使様の役に立つ」

 「くだらない。うちだけで十分や。北海道で遊んでき」

 銀光の魔法少女がミドリの横に立って、一瞬で目の前に指を持って行った。目潰しのように。

 「これが天使様の意思だ。てめぇは温いんだよ、やる事なす事が。それでチャンスを失った」

 音の使徒を襲撃して、何も収穫は得られなかった。

 今後は使徒もチームを組むんだりするだろう。警戒心は上がっている。

 初めての襲撃で終わらせるのが一番である。

 「悪魔を狩った事もねぇてめぇは指くわえてガキの子守りでもしとけ」

 「悪魔って⋯⋯ただのはぐれ者だろ?」

 「そんなはぐれ者すら狩った事ねぇてめぇが偉そうにすんなよ?」

 立場は自分の方が上だと、そう言っている。

 光を操る事のできる魔法少女の速度には追いつけない、彼女はそう思っている。

 でもミドリは違う。

 だから引かない。

 「いまさら、表舞台に出て暴れるなんて、許ひまへんよ」

 「てめぇの許しなんかいるかよバーカ。俺は俺のやりたいようにやる。自ずと結果は付いてくるんだよ」

 睨むミドリに対して、ニヤリと笑う銀光の魔法少女。

 「じゃあな。それだけ伝えに来た。あの雑魚二人⋯⋯いや三人か? に伝えておけ、お前らは邪魔だとな」

 「うちの友を侮辱するな!」

 「事実を言ったまでだ!」

 激しく銀色の光を放ち、彼女は一瞬で消えた。

 ただ、言葉だけが少しだけ残った。

 「俺が、俺達が、堕天使も、悪魔も、その他協力者全員殺すっ!」

 あまりにも乱暴な言葉だが、できるかもしれないと言う可能性。

 ミドリは手を強く握りながら、施設に向かって移動を再開した。

 「君のは、眩しいだけの高速や。光速やない。自分の力を過信するなや。使徒は化け物揃いやからな」

 誰に聞かれる事もなく、その呟きは風に乗って消えた。

 ◆

 「加護スキルを貰ってできる事がなんかあるかな?」

 加護スキルってか契約スキル?

 もしも現実の俺に反映されているなら、もしかしたら何らかの影響があるかもしれない。

 一応魔法使えるし、それが実体化などの調整ができる。

 これもいわば幻術だ。

 「ムム⋯⋯おぉ」

 かなり大まかなイメージで細部まで再現されたな。

 今日の朝は紗奈ちゃんがおらず、連絡も来てないので家の中にいる。

 暇なので、精霊と契約した恩恵について考えていた。

 「一回で出せる魔法の数? は増えてるな」

 火の玉でお手玉をしている。これは実体化してないので熱くない。

 魔法少女の状態で使えたらって、毎回思う。

 「あ、連絡来た」

 ギルドに来て欲しいとの事だったなので、向かうことにする。

 一人っぽいし、ゲートを使ってみよう。定期的に使わないと忘れてしまう。

 「あれ? 使えない。もしかして弱体化した?」

 別に使った事は最初の一回だけで別段困らんが、それでも弱体化したのは少しだけショックだ。

 幻術の精度は上がってるけど、使い道が基本無いからな。

 紗奈ちゃんを待たせる訳にもいかないので、俺はギルドに向かった。

 「おまたせ」

 「いえ。今日は朝ごはんを作れずにごめんね。ちょっと用事が入っちゃってさ。そっちは何も無かった?」

 何かあったのかな? こっちはあった。

 だけど、紗奈ちゃんに言って良い事なのかは分からない。

 心配させたくは無いしな。

 「何も無いよ」

 「そっか。それとさ、次の休みに引越し先を決めよ」

 「え?」

 「同棲だから家賃は折半だから、ある程度のところはいけるよ。最悪私名義なら、ギルド職員だから査定も大丈夫。星夜さんもレベル3だし、大きな収入も入っているし大丈夫」

 「⋯⋯何かあったんだね。急かしてくるって事は、それ相応の」

 詳しく聞く必要は無いな。

 もう分かった。

 あの昨日の襲撃を紗奈ちゃんは把握している。

 だからセキュリティの良い場所にいち早く引っ越したいのだろう。

 断る理由は無い。逃げる意味も無い。

 「そうだね。次の休みに決めようか」

 「⋯⋯うんっ!」

 「それと今日は⋯⋯」

 精霊の森に行こうと思う。

 あそこにも敵対している魔物は存在するので、それと戦ってみたい。

 もう一つの理由としては、あそこなら魔物も少ないので存分に検証ができる。

 精霊と契約したんだ。魔法少女の時にも何かしらの影響があってくれないと割に合わん。

 そして再び、俺は一人で精霊の森へと足を踏み入れた。
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