58 / 179
物理系魔法少女、怪しいお礼をされる
しおりを挟む
「紗奈ちゃんが居ない朝」
久しぶりな気がしなくもないが、紗奈ちゃんが合鍵を作って日は浅い。
自分はかなり紗奈ちゃんに依存してしまったのかもしれないな。
連絡した方が良いか。どんな感じだろ?
一応、おやすみは送っている。
「⋯⋯1000件を超えているんだが」
それもたった一人の力でだ。
見なかった事にして放置しようかな?
いや、怖いのでちゃんと返信しよう。
『あ、既読ついた』
『遅いよ?』
『何しているの?』
『昨日何してた?』
『一時間刻みで教えて』
『昼ごはんどこで、何を、誰と食べた? もちろん一人だよね?』
「怖い怖い」
落ち着いて、のメッセージを送ると収まった。
訓練施設の事を送って、一人でご飯は食べたと言っておく。
朝ごはんを適当に用意して食べる。
「今日は何しようかな?」
あ、またメッセージが入った。
『女の人と半径一メートル以内に入ってないよね?』
模擬戦を思い出す。
「大丈夫」
多分ね。
今日は何しようかと考えていると、ドアが内側からノックされる。
「⋯⋯どちら様?」
「落ち着きが怖いですね。勝手に入らせていただきました。すみません。ですが安全のためです。ギルド支部長がお呼びです」
「めんどうなので遠慮します」
窓を開けて逃げようとしたが、開かなかった。外を見れば、少しだけ歪んだように見える。
鍵は開けてある。
「ここの空間を切り抜いていますので、外に出る事は不可能です⋯⋯手馴れてません?」
「もうこれ犯罪じゃありません?」
「申し訳ございません。本部長がどうしても、貴方にお礼が言いたいそうです」
前回の依頼か?
嫌だなぁ。
と言うか少しだけ怖い事がある。
これだけはどうしても確認しないといけない。
「部屋に⋯⋯アナタの匂いは残りませんよね?」
キモっ! って顔をされた。
傷つくが、重要な事だ。まじで。
「大丈夫です」
「良かったぁ」
俺が全力で安堵すると、相手の顔がしかめっ面に変わる。
「それでは⋯⋯移動します。終わりました」
「早っ! てか了承してなくね?」
確かに既に俺の家ではない。
綺麗に配置されたソファーなどなど⋯⋯うん。すごっ。
「ようこそ、神宮寺くん」
本部長?
何か上手く見る事のできないが、声的には男かな? いや、女かもしれない。
どっちつかずの声と見た目をしていると思う。かなり若い気がする。
机の上には、前に回収した依頼品がある。
「これの説明を聞きたいかい?」
「いえ特には」
「⋯⋯そうか」
言いたかったのかな?
「とりあえず感謝するよ。これを回収してくれた事を」
「はぁ。それだけのために誘拐まがいな事を?」
「それは失礼したね。安全のためなんだ。本題だが、自分の下に就く気はないか? 安定した給料と職場環境、レベルアップのサポートだってやるよ?」
本部って事はここは東京だろう。
なんで俺をこんな風に扱ってくれるかは知らんが、断るか。
紗奈ちゃんはあの場所で働いているし、俺も配信者としてようやく稼げそうなのだ。
わざわざ縛られたいとは思わない。
それにレベルアップは自分の力でやらんと意味無い。
安定していると言われたら断言できないだけど。
「お断りします」
「そうか。残念だよ」
あっさりだな。
「それじゃ、転移で送るけど、どうする?」
「せっかくの東京なので、観光して行きます」
紗奈ちゃんには悪いけど。
いずれ一緒に来れば許してくれるだろう。
「それじゃ、この部屋に入っていた事実は分からないように、空間はねじ曲げるから。君は何も考えずに出口から出れば良いよ。変に移動したら空間の狭間に迷うから気をつけてね」
と、言われたので出る事にした。
◆
「本部長、なんでスカウトなんてマネを?」
星夜が居なくなった後の本部長と秘書っぽい見た目の女性が会話をする。
「直接魔力に干渉できる体質なのって、彼と自分なんだよね。そう言う貴重な人材は手元に残しておきたいんだ。見た感じ、天使に干渉されて無さそうだし」
徐々に本部長の見た目が崩れて行き、ゼリーのような丸っこい見た目に変わる。
依頼品の入った瓶をポンポンと叩く。
何かを察した秘書は口を開く。
「それで、それはなんなのですか?」
スライムのような見た目をした本部長の、あるかないか分からない目が輝いているように見えた。
「これはね、アメリカの方でエレキトルコアって名ずけられた、エネルギーの塊なんだよ。本質は魔力だけど、電気にもなる。これ一つで日本全体の電気を千年保てる」
「なるほど。魔法のような物体なんですね」
「そうそう。だから自分のように魔力干渉できないと持てないんだけど、ダンジョンに入れないじゃん? そこで彼の出番よ。彼も同じような事ができるからね」
「アメリカはどうしてそれを?」
「超大型魔物捕縛兵器、グレイプニルの動力源にしようとしたんだよ。だから急いで回収する必要があった」
超大型の魔物と呼ばれるのは、推奨レベル8以上のダンジョンに現れる魔物だ。
当然、そのレベルの魔物は一体で国を滅ぼせる程の力を有している。
そんなのを捕縛して何に使おうとしているのか、それは本部長も分かってはいなかった。
「それにしても、紗奈ちゃんの婚約者にしては老け顔だな。二十代後半とは思えん。身だしなみを整えてやれば良いのに」
「⋯⋯え」
「あ」
「あ、あの、あの無表情、無愛想、能力も心も冷えきったあの女の婚約者なのですか!」
本部長が顔を逸らす。
それが全てを物語っており、秘書は四つん這いに倒れる。
「そんなの嘘だ! 私と一緒で恋愛に興味無いと思ってたのに⋯⋯裏切り者!」
久しぶりな気がしなくもないが、紗奈ちゃんが合鍵を作って日は浅い。
自分はかなり紗奈ちゃんに依存してしまったのかもしれないな。
連絡した方が良いか。どんな感じだろ?
一応、おやすみは送っている。
「⋯⋯1000件を超えているんだが」
それもたった一人の力でだ。
見なかった事にして放置しようかな?
いや、怖いのでちゃんと返信しよう。
『あ、既読ついた』
『遅いよ?』
『何しているの?』
『昨日何してた?』
『一時間刻みで教えて』
『昼ごはんどこで、何を、誰と食べた? もちろん一人だよね?』
「怖い怖い」
落ち着いて、のメッセージを送ると収まった。
訓練施設の事を送って、一人でご飯は食べたと言っておく。
朝ごはんを適当に用意して食べる。
「今日は何しようかな?」
あ、またメッセージが入った。
『女の人と半径一メートル以内に入ってないよね?』
模擬戦を思い出す。
「大丈夫」
多分ね。
今日は何しようかと考えていると、ドアが内側からノックされる。
「⋯⋯どちら様?」
「落ち着きが怖いですね。勝手に入らせていただきました。すみません。ですが安全のためです。ギルド支部長がお呼びです」
「めんどうなので遠慮します」
窓を開けて逃げようとしたが、開かなかった。外を見れば、少しだけ歪んだように見える。
鍵は開けてある。
「ここの空間を切り抜いていますので、外に出る事は不可能です⋯⋯手馴れてません?」
「もうこれ犯罪じゃありません?」
「申し訳ございません。本部長がどうしても、貴方にお礼が言いたいそうです」
前回の依頼か?
嫌だなぁ。
と言うか少しだけ怖い事がある。
これだけはどうしても確認しないといけない。
「部屋に⋯⋯アナタの匂いは残りませんよね?」
キモっ! って顔をされた。
傷つくが、重要な事だ。まじで。
「大丈夫です」
「良かったぁ」
俺が全力で安堵すると、相手の顔がしかめっ面に変わる。
「それでは⋯⋯移動します。終わりました」
「早っ! てか了承してなくね?」
確かに既に俺の家ではない。
綺麗に配置されたソファーなどなど⋯⋯うん。すごっ。
「ようこそ、神宮寺くん」
本部長?
何か上手く見る事のできないが、声的には男かな? いや、女かもしれない。
どっちつかずの声と見た目をしていると思う。かなり若い気がする。
机の上には、前に回収した依頼品がある。
「これの説明を聞きたいかい?」
「いえ特には」
「⋯⋯そうか」
言いたかったのかな?
「とりあえず感謝するよ。これを回収してくれた事を」
「はぁ。それだけのために誘拐まがいな事を?」
「それは失礼したね。安全のためなんだ。本題だが、自分の下に就く気はないか? 安定した給料と職場環境、レベルアップのサポートだってやるよ?」
本部って事はここは東京だろう。
なんで俺をこんな風に扱ってくれるかは知らんが、断るか。
紗奈ちゃんはあの場所で働いているし、俺も配信者としてようやく稼げそうなのだ。
わざわざ縛られたいとは思わない。
それにレベルアップは自分の力でやらんと意味無い。
安定していると言われたら断言できないだけど。
「お断りします」
「そうか。残念だよ」
あっさりだな。
「それじゃ、転移で送るけど、どうする?」
「せっかくの東京なので、観光して行きます」
紗奈ちゃんには悪いけど。
いずれ一緒に来れば許してくれるだろう。
「それじゃ、この部屋に入っていた事実は分からないように、空間はねじ曲げるから。君は何も考えずに出口から出れば良いよ。変に移動したら空間の狭間に迷うから気をつけてね」
と、言われたので出る事にした。
◆
「本部長、なんでスカウトなんてマネを?」
星夜が居なくなった後の本部長と秘書っぽい見た目の女性が会話をする。
「直接魔力に干渉できる体質なのって、彼と自分なんだよね。そう言う貴重な人材は手元に残しておきたいんだ。見た感じ、天使に干渉されて無さそうだし」
徐々に本部長の見た目が崩れて行き、ゼリーのような丸っこい見た目に変わる。
依頼品の入った瓶をポンポンと叩く。
何かを察した秘書は口を開く。
「それで、それはなんなのですか?」
スライムのような見た目をした本部長の、あるかないか分からない目が輝いているように見えた。
「これはね、アメリカの方でエレキトルコアって名ずけられた、エネルギーの塊なんだよ。本質は魔力だけど、電気にもなる。これ一つで日本全体の電気を千年保てる」
「なるほど。魔法のような物体なんですね」
「そうそう。だから自分のように魔力干渉できないと持てないんだけど、ダンジョンに入れないじゃん? そこで彼の出番よ。彼も同じような事ができるからね」
「アメリカはどうしてそれを?」
「超大型魔物捕縛兵器、グレイプニルの動力源にしようとしたんだよ。だから急いで回収する必要があった」
超大型の魔物と呼ばれるのは、推奨レベル8以上のダンジョンに現れる魔物だ。
当然、そのレベルの魔物は一体で国を滅ぼせる程の力を有している。
そんなのを捕縛して何に使おうとしているのか、それは本部長も分かってはいなかった。
「それにしても、紗奈ちゃんの婚約者にしては老け顔だな。二十代後半とは思えん。身だしなみを整えてやれば良いのに」
「⋯⋯え」
「あ」
「あ、あの、あの無表情、無愛想、能力も心も冷えきったあの女の婚約者なのですか!」
本部長が顔を逸らす。
それが全てを物語っており、秘書は四つん這いに倒れる。
「そんなの嘘だ! 私と一緒で恋愛に興味無いと思ってたのに⋯⋯裏切り者!」
0
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる