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物理系魔法少女、酒には気をつける
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「それじゃ、帰るね」
「かえ、ちゃうんですかぁ?」
ろれつの回らない様子。
少しだけ⋯⋯いや、そこそこ顔を赤らめた紗奈ちゃんが俺の腕を強い力で捕まえてくる。
正直、帰りたくは無い。無いんだが⋯⋯寝ている間に永遠の眠りについていそうなので帰りたいのだ。
ついでに銭湯に寄って行きたい。
「まぁ、女の子一人の家に大きな男が寝るのは⋯⋯良くないから、ね?」
「だぁいじょうれふ! せいやしゃんに、おしょわれても、ていこう、しましぇん!」
「そう言う事じゃない!」
敬礼しながらそう言って来る。
「紗奈ちゃんベロッベロに酔ったね? 正直意外だったよ。じゃ、帰るね」
だから腕を離して。
「⋯⋯いやぁ!」
そんな子供みたいに駄々を捏ねないでよ⋯⋯むっちゃ可愛いじゃん!
なにこれ人形? 可愛すぎだろ!
ちょっとした酒の臭いすら打ち消してくれる可愛さだよ!
「今日は良く寝てね? 危険だから」
「⋯⋯ひっく。おそわれても、じゃっきーんって、かえりうち!」
「頼もしいし安心できるけど、相手の命が心配だね。明日も早いので、帰られせて、ね?」
「いやれふ! きょうはいっほにねまひょう! あついよるをしゅごしゅぞー!」
やっばい! 引っ張られる。
それに熱い夜どころか、明日の朝を寒さで迎えられないかもしれない!
身体強化の魔法って、あったりするのかな?
とりあえず、イメージして魔法を使ってみる。
頼む、発動してくれ!
「お、おぉ!」
俺の身体が光に包まれ、紗奈ちゃんに抵抗できた。
よし!
俺は紗奈ちゃんの肩を掴んだ。上目遣いの紗奈ちゃん。
艶めかしく蕩けた瞳にドキッと来るが、ここで流されてしまったら終わる。
「とりあえず、ベッドに行こう(真顔)」
「やたぁ」
せっせと運んでから、ゆっくり転がす。
「それじゃ!」
俺は急いで帰ろうとするが、魔法で進行方向を止められる。氷便利だな!
「なんでかえっちゃうのぉ? もう、にげないでぇ」
「ちょ、紗奈ちゃん」
やばい⋯⋯ドキドキできないハグが後ろから来た。
どう切抜ける?
あぁ、こうなるなら、ちょーし乗って飲みすぎるんじゃなかった!
俺ってこんなにアルコール強かったのかよ! それとも紗奈ちゃんが弱いのか!
「せいやしゃん。しゅき、だいしゅき。あいしゅてる。⋯⋯しよ?」
「⋯⋯ダメだよ、本当に」
「なんれ?」
「きっと紗奈ちゃんには俺よりもふさわしい相手が現れる。だから、俺なんかに気を使っちゃいけない」
「⋯⋯へんひ」
「ん?」
「むかし、にげら、へんひきいてらい」
あ⋯⋯覚えていらっしゃった。
「せいやしゃん、すきなひと、いりゅ?」
「⋯⋯い、ない」
嘘だ。本当は居る。
今目の前に居る彼女だ。
だけど、ダメだ。
俺には安定した収入も、彼女を守れる様な力も、何も足りてない。
年齢だってそうだ。
実際の年齢よりも老けて見える俺の容姿⋯⋯彼女のような完璧人間なら、俺よりももっと良い人が絶対に現れる。
彼女の人生を俺なんかに使わせては⋯⋯ダメなんだ。
本当ならこの関係も打ち切るべきなのだろうが、結局俺はどこかに未練を感じている。ズルズルと、続けている。
「じゃあ、ちゃんしゅある! わだじ、せいやしゃん、じゅぎ!」
「⋯⋯本当にすごく酔ってるね」
「よっへない! しんけん! せいやしゃん、わたしを⋯⋯うけ、いれ⋯⋯」
「寝てしまった⋯⋯酔った事で昔の紗奈ちゃんに戻ったのかな?」
本心かは分からないけど、好きだと言ってくれてとても嬉しかった。
「おやすみ、紗奈ちゃん」
この日誓った、紗奈ちゃんと飲む時は飲まさせ過ぎない様にしようと。
火の魔法で徐々に氷を溶かして、俺は外に出た。ドアを閉める。
足に力が入らず、倒れ込む。
「⋯⋯もしもあのまま続けてたら、どうするつもりだったんだよ」
酔っていたから合意、なんて事にはならんだろうに。
いや。合意でも良くない気がする。
芯まで冷えた身体が、ほんのり熱くなっているのを感じた。
「へ、へっくじょん!」
銭湯に寄ってから帰った。
翌朝、いつもの様なメッセージを受け取り、準備をしてからアパートを出る。
「紗奈ちゃんおはよう」
「おはよう! ⋯⋯昨日酔って後半何も覚えてないんだけど⋯⋯なんかあった? 部屋が凍っててさ⋯⋯特にドア付近が」
照れているのか、頬をピンクに染めながら聞いてくる。恥じらいか? 恥じらいなのか?
可愛いかよ。
「何も無かったよ。お酒ありがとうね」
「何も、無かったの?」
「うん。何も」
昨日の事は⋯⋯俺も忘れよう。
あれは夢だ夢。幸せな夢。
「⋯⋯そう。何も、無かったんだ。そっか」
寒い⋯⋯段々とこの寒さに慣れ始めている自分が居る事に、気づいてしまった。
「それじゃ、行こっか」
「うん。そうだね」
なんかテンションが下がっているね。⋯⋯何も無かったんだから喜べば良いのに。
ギルドに到着する。
「夏祭りか」
ギルドの壁にそのチラシが貼ってあった。
紗奈ちゃんは裏口に向かっている。
俺もギルドの中に入って、涼みながら待つ事にする。
「おい貴様!」
さーて、今日はレベル2の初のダンジョンだ。どこに行こうかな。
「聞いているのか!」
「俺ですか?」
「お前以外に誰が居る!」
周りを見渡すが、朝早い事もあり、誰も見当たらない。
ギルドの更衣室で着替えた後なのか、鎧を着込んだ青年が俺を指さしながら会話して来る。
パーティメンバーの一人なのか、後ろに男がもう一人居た。
「なんですか?」
「お前! か、神楽さんとはどんな関係だ! 一緒に来ていて!」
そんな感じか。
見た感じ豪華で性能の良さそうな装備、イケメンな青年。
人気高そーだな。
「関係ありますか?」
「ある! 神楽さんはここのアイドルのような人なんだ! お前のような相手が馴れ馴れしくして良いお人じゃないんだ! 分かるか!」
⋯⋯分かる。
確かに、あの可愛さはアイドル級だ。遠目から推すのが正しい接し方だろう。
「だけど、彼女が誰と居るかは自由だろ」
あくまでそれは俺の、俺達の意見であり彼女の意見では無い。
「気を利かせるのが我々の役目だろ!」
「知らないよ。興味もない。自分が相手にされないから、馴れ馴れしくしている相手に八つ当たりか?」
「うっ」
図星かよ。
「それじゃあね。⋯⋯それと、さ⋯⋯神楽さんとはただ、大学の後輩で、その辺でたまたま会ったから一緒に来ただけだ。ほんと、それだけ」
彼氏になりたいとか、欲望はあってもおこがましくてあんまり考えてない。
それを彼女に言ったら、怒られそうだけど。
「何かあったの?」
「紗奈ちゃんのファンだって」
「すごい迷惑な⋯⋯ごほん。今日はどうしますか?」
満面な営業スマイルに俺はレベル2で行けるオススメを聞いてみる。
「あまりソロではオススメしたくないんですが⋯⋯推奨レベル2の中では難易度の低いダンジョン、獣の草原はどうですか?」
「何か必要な対策とかは?」
「無いですね。獣系の魔物が多くて、鼻とか耳とか良いので、そこは頭に入れてください。一体見つけたら数体居る、群れますからね」
「おっけ。ありがと」
俺は踵を返す。
「星夜さん⋯⋯」
「ん?」
「き、昨日の夜は、その。本当に、何も、無かったんですか?」
うぅ。そんなうるうるとした目で見られると⋯⋯からかいたくなる。
まぁでも素直に言おうか。
「何も無いよ。俺が紗奈ちゃんに手を出す訳無いだろ? 俺は紳士だからな」
「⋯⋯別に、私相手なら、少しだけ獣になっても良いのに」
「かえ、ちゃうんですかぁ?」
ろれつの回らない様子。
少しだけ⋯⋯いや、そこそこ顔を赤らめた紗奈ちゃんが俺の腕を強い力で捕まえてくる。
正直、帰りたくは無い。無いんだが⋯⋯寝ている間に永遠の眠りについていそうなので帰りたいのだ。
ついでに銭湯に寄って行きたい。
「まぁ、女の子一人の家に大きな男が寝るのは⋯⋯良くないから、ね?」
「だぁいじょうれふ! せいやしゃんに、おしょわれても、ていこう、しましぇん!」
「そう言う事じゃない!」
敬礼しながらそう言って来る。
「紗奈ちゃんベロッベロに酔ったね? 正直意外だったよ。じゃ、帰るね」
だから腕を離して。
「⋯⋯いやぁ!」
そんな子供みたいに駄々を捏ねないでよ⋯⋯むっちゃ可愛いじゃん!
なにこれ人形? 可愛すぎだろ!
ちょっとした酒の臭いすら打ち消してくれる可愛さだよ!
「今日は良く寝てね? 危険だから」
「⋯⋯ひっく。おそわれても、じゃっきーんって、かえりうち!」
「頼もしいし安心できるけど、相手の命が心配だね。明日も早いので、帰られせて、ね?」
「いやれふ! きょうはいっほにねまひょう! あついよるをしゅごしゅぞー!」
やっばい! 引っ張られる。
それに熱い夜どころか、明日の朝を寒さで迎えられないかもしれない!
身体強化の魔法って、あったりするのかな?
とりあえず、イメージして魔法を使ってみる。
頼む、発動してくれ!
「お、おぉ!」
俺の身体が光に包まれ、紗奈ちゃんに抵抗できた。
よし!
俺は紗奈ちゃんの肩を掴んだ。上目遣いの紗奈ちゃん。
艶めかしく蕩けた瞳にドキッと来るが、ここで流されてしまったら終わる。
「とりあえず、ベッドに行こう(真顔)」
「やたぁ」
せっせと運んでから、ゆっくり転がす。
「それじゃ!」
俺は急いで帰ろうとするが、魔法で進行方向を止められる。氷便利だな!
「なんでかえっちゃうのぉ? もう、にげないでぇ」
「ちょ、紗奈ちゃん」
やばい⋯⋯ドキドキできないハグが後ろから来た。
どう切抜ける?
あぁ、こうなるなら、ちょーし乗って飲みすぎるんじゃなかった!
俺ってこんなにアルコール強かったのかよ! それとも紗奈ちゃんが弱いのか!
「せいやしゃん。しゅき、だいしゅき。あいしゅてる。⋯⋯しよ?」
「⋯⋯ダメだよ、本当に」
「なんれ?」
「きっと紗奈ちゃんには俺よりもふさわしい相手が現れる。だから、俺なんかに気を使っちゃいけない」
「⋯⋯へんひ」
「ん?」
「むかし、にげら、へんひきいてらい」
あ⋯⋯覚えていらっしゃった。
「せいやしゃん、すきなひと、いりゅ?」
「⋯⋯い、ない」
嘘だ。本当は居る。
今目の前に居る彼女だ。
だけど、ダメだ。
俺には安定した収入も、彼女を守れる様な力も、何も足りてない。
年齢だってそうだ。
実際の年齢よりも老けて見える俺の容姿⋯⋯彼女のような完璧人間なら、俺よりももっと良い人が絶対に現れる。
彼女の人生を俺なんかに使わせては⋯⋯ダメなんだ。
本当ならこの関係も打ち切るべきなのだろうが、結局俺はどこかに未練を感じている。ズルズルと、続けている。
「じゃあ、ちゃんしゅある! わだじ、せいやしゃん、じゅぎ!」
「⋯⋯本当にすごく酔ってるね」
「よっへない! しんけん! せいやしゃん、わたしを⋯⋯うけ、いれ⋯⋯」
「寝てしまった⋯⋯酔った事で昔の紗奈ちゃんに戻ったのかな?」
本心かは分からないけど、好きだと言ってくれてとても嬉しかった。
「おやすみ、紗奈ちゃん」
この日誓った、紗奈ちゃんと飲む時は飲まさせ過ぎない様にしようと。
火の魔法で徐々に氷を溶かして、俺は外に出た。ドアを閉める。
足に力が入らず、倒れ込む。
「⋯⋯もしもあのまま続けてたら、どうするつもりだったんだよ」
酔っていたから合意、なんて事にはならんだろうに。
いや。合意でも良くない気がする。
芯まで冷えた身体が、ほんのり熱くなっているのを感じた。
「へ、へっくじょん!」
銭湯に寄ってから帰った。
翌朝、いつもの様なメッセージを受け取り、準備をしてからアパートを出る。
「紗奈ちゃんおはよう」
「おはよう! ⋯⋯昨日酔って後半何も覚えてないんだけど⋯⋯なんかあった? 部屋が凍っててさ⋯⋯特にドア付近が」
照れているのか、頬をピンクに染めながら聞いてくる。恥じらいか? 恥じらいなのか?
可愛いかよ。
「何も無かったよ。お酒ありがとうね」
「何も、無かったの?」
「うん。何も」
昨日の事は⋯⋯俺も忘れよう。
あれは夢だ夢。幸せな夢。
「⋯⋯そう。何も、無かったんだ。そっか」
寒い⋯⋯段々とこの寒さに慣れ始めている自分が居る事に、気づいてしまった。
「それじゃ、行こっか」
「うん。そうだね」
なんかテンションが下がっているね。⋯⋯何も無かったんだから喜べば良いのに。
ギルドに到着する。
「夏祭りか」
ギルドの壁にそのチラシが貼ってあった。
紗奈ちゃんは裏口に向かっている。
俺もギルドの中に入って、涼みながら待つ事にする。
「おい貴様!」
さーて、今日はレベル2の初のダンジョンだ。どこに行こうかな。
「聞いているのか!」
「俺ですか?」
「お前以外に誰が居る!」
周りを見渡すが、朝早い事もあり、誰も見当たらない。
ギルドの更衣室で着替えた後なのか、鎧を着込んだ青年が俺を指さしながら会話して来る。
パーティメンバーの一人なのか、後ろに男がもう一人居た。
「なんですか?」
「お前! か、神楽さんとはどんな関係だ! 一緒に来ていて!」
そんな感じか。
見た感じ豪華で性能の良さそうな装備、イケメンな青年。
人気高そーだな。
「関係ありますか?」
「ある! 神楽さんはここのアイドルのような人なんだ! お前のような相手が馴れ馴れしくして良いお人じゃないんだ! 分かるか!」
⋯⋯分かる。
確かに、あの可愛さはアイドル級だ。遠目から推すのが正しい接し方だろう。
「だけど、彼女が誰と居るかは自由だろ」
あくまでそれは俺の、俺達の意見であり彼女の意見では無い。
「気を利かせるのが我々の役目だろ!」
「知らないよ。興味もない。自分が相手にされないから、馴れ馴れしくしている相手に八つ当たりか?」
「うっ」
図星かよ。
「それじゃあね。⋯⋯それと、さ⋯⋯神楽さんとはただ、大学の後輩で、その辺でたまたま会ったから一緒に来ただけだ。ほんと、それだけ」
彼氏になりたいとか、欲望はあってもおこがましくてあんまり考えてない。
それを彼女に言ったら、怒られそうだけど。
「何かあったの?」
「紗奈ちゃんのファンだって」
「すごい迷惑な⋯⋯ごほん。今日はどうしますか?」
満面な営業スマイルに俺はレベル2で行けるオススメを聞いてみる。
「あまりソロではオススメしたくないんですが⋯⋯推奨レベル2の中では難易度の低いダンジョン、獣の草原はどうですか?」
「何か必要な対策とかは?」
「無いですね。獣系の魔物が多くて、鼻とか耳とか良いので、そこは頭に入れてください。一体見つけたら数体居る、群れますからね」
「おっけ。ありがと」
俺は踵を返す。
「星夜さん⋯⋯」
「ん?」
「き、昨日の夜は、その。本当に、何も、無かったんですか?」
うぅ。そんなうるうるとした目で見られると⋯⋯からかいたくなる。
まぁでも素直に言おうか。
「何も無いよ。俺が紗奈ちゃんに手を出す訳無いだろ? 俺は紳士だからな」
「⋯⋯別に、私相手なら、少しだけ獣になっても良いのに」
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