クラスで話題の美少女配信者がデブスの俺だとは推ししか知らない〜虐げられても関係ない、推しに貢ぐ為にスキルのガチャを引く〜

ネリムZ

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 俺はライブを初めて、最初で話す事を話したいと、来た人達に向かって伝えた。
 当然、罵詈雑言が返って来て、俺の行為を認める人は誰一人としていなかった。
 だけど、この場では認めて貰う。

 その為のダンジョンだ。

 「誘い込んだ形ですが、少しばかり、従って貰います」

 この場はメイによって大量の一級メイドに囲まれている。
 そんな場所で暴れてはいけないと、分かって貰おうか?

 軽く脅すと、黙ってくれた。

 俺はライブを初めて、人が来てから、自分の口であの日の事を語り出す。
 コメントでは、信じてくれる人のコメントはすぐに上に行き、俺を叩くコメントだけ残る。

 それでも俺は語る。
 そして、重要な事を言う。

 「今回の件に関して、リイアさん並びに神楽さんは一切の関係がありません。私との関わりがあるからと言う浅はかな理由で、彼女たちを貶める様なマネは、絶対にしないでください」

 そして、今から始まるのは、質問会だ。
 マスコミとかも徐々に来るだろう。
 人が増えていく。

 「まずは、誰から聞きますか? 私は嘘は言いません。結局、誠、嘘と決めつけるのも、あなた達だ」

 「じゃあ俺から! 探索者を襲って、これからも続ける気?」

 襲って⋯⋯か。
 俺から襲った前提での話だな。

 「私から襲った事実はございません。先程もお話しましたが、襲われたので、反撃したのです。これからも探索者としては続けるつもりです」

 最初はリイアたんにプレゼントをあげるために、配信者始めた。探索者は金稼ぎだ。
 でも、今は純粋に日陰と言う存在を、配信者をやりたいと思っている。

 それから一時間程、質問会は続いた。

 リイアたんの隣に立っていても、おかしくない存在になりたい。
 探索者としても、高ランクのダンジョンを攻略してみたい。

 新たな世界を見たからこそ、新たな目標が出来ている。

 「返り討ちにしては、やりすぎでは?」

 「あの時は、私の背後に戦っていた探索者がいました」

 「守る為に倒したって事? それ、ただの言い訳じゃん」

 「そうかもしれません。ですが、あの場を知らない人に偉そうに言われる筋合いは無い」

 「あなた、反省してるの?」

 反省?
 なんで反省しないといけない。

 壊した事に後悔している。
 こうなっているからな。

 だけど、俺は悪い事をしたとは思ってない。
 襲われたのは事実だし、反撃したのも事実だ。

 「反省? してませんよ。謝罪もしません。私は自分が悪い事をした、そう思ってはいません」

 「自己中すぎんだろ! お前は二人のアバターを破壊しているんだぞ! 自分の自己満のために、人を傷つけて、良いと思っているのか!」

 「それは相手に言ってください。確かにやりすぎたと思ってます。ですが、あの時、ああしていなかったら、彼らは私を倒していた」

 「嘘を言うな!」

 「嘘と決めつけないでいただきたいんですがね⋯⋯」

 俺は攻撃的な姿勢を見せる。

 「私が自ら、人を襲った証拠があるのですか? 確かに、倒した決定的な瞬間の情報が出回っておりますが、私から襲った証拠は出てませんよね?」

 ま、こんな事言ったって意味が無いけどね。

 『日陰が探索者を倒した』と言う事実は存在する。
 しかし、どちらが襲ったかは結局、証拠は無いのだ。
 ただし、被害者がそう言う事で、被害者の味方をする人が真実だと盲信する。

 「私は事実しか言っていない。だけど、私がいくら言ったところで、君達は私の言葉を信じない」

 「だったら、この場なんて意味は無かっただろ」

 「バカじゃないのか?」

 「そうかもしれない」

 確かに、こんな時間は酷く、無意味なのかもしれない。
 世間的には、さっさと謝って身を隠せば良いと思うだろう。

 さらに言えば、俺の広まっている見た目はアバターなので、変えてしまえば逃げられる。
 だけど、俺はそれをしない。いや、出来ない。

 俺はアバターを変える事が出来ない。
 配信者を辞めたとしても、この見た目がずっと足を引っ張るだろう。

 何よりも、俺は間違った情報を世界に与えたくない。
 モコモコがしているのは、俺を堕とすための行動だ。

 イベントを断ったのも、クランへの誘いも断ったのも、彼女のプライドを攻撃した行為なんだろう。
 俺は配信者として甘く、このような事態になった。

 「未来を考えて行動していたら、もっと違う選択肢があったかもしれない。だけど、人間そんな優れてない。未来は誰にも分からない」

 「何を⋯⋯」

 「私は、リイアさんが、リイアたんが好きだ。ずっと、追いかけて来た」

 「急に何言ってんだよ!」

 「彼女は、曲がった事が嫌いだ。弱者を攻撃する事を、何よりも嫌う。弱者を守るのが、彼女の信念だ」

 「だから何を⋯⋯」

 「私はそんな彼女が、悲しむようなマネは絶対にしない!」

 俺のライブを見てくれているリイアファンなら分かる筈だ。
 彼女の動画を追いかけて、沢山見ている、真のオタクなら。
 俺がリイアのファンを公言してまで、語る言葉の重みを。

 「だから言おう、私は間違った事をした覚えは無い。探索者を攻撃したのは事実だ。アバターを破壊したのも事実だ! 対して、私が受けたのは腕に一発の弾丸だ」

 つり合わないダメージ。

 「反撃にしてはオーバー過ぎるのかもしれない。撃たれたのも、守ろうとしたつもりだったからだ。だから冷静に位置関係を考えて欲しい」

 教室で俺はヒントと覚悟を得た。
 少しでも俺を信じてくれる人の存在を、きちんと自覚した。
 俺のせいで、リイアファンや神楽ファンが不愉快な思いをしている。

 リイアファンの俺だから、その思いは痛い程分かる。
 俺がなにかしないと、この状況は何も変わらない。
 ネットでファンやアンチ達の無謀な論争が続くだけだ。

 「撮影権利を持っている人なら分かる筈だ。例の写真、私とモンスター、そして被害者の位置を。考えられる距離を!」

 そう、あの写真には違和感が複数個存在する。
 まずは角度だ。

 あの角度で撮影する事は可能だけど、一切のブレが無かった。
 あれは固定カメラで撮っているようなモノだ。
 でも、ダンジョンにカメラはない。

 だけど、権利はある。
 権利があれば、探索者がカメラとなる。
 被害者があそこまで正確に撮影は出来ない。

 何よりも、距離だ。

 俺や被害者では、俺、モンスター、被害者、全てを写した状態で写真は撮れない。
 そこで生まれる当然な疑問、脆い真実の綻び。

 『誰がこのピンポイントの場所を撮影した?』

 さらに言えば、決定的な瞬間のみしか出てないのも違和感がある。
 まるで、そのタイミングが来るのを待っていたかのように。

 「伝えたい事は言いました。質問も⋯⋯同じような内容ですかね? 確かに意味は無い。今日はこの辺で終わりましょう。最後にもう一度言います」

 深呼吸する。

 「私は自分が間違った事をしたとは思ってない。事実だけは認めます。ですが、悪意を持って、彼らを攻撃した事実は絶対にございません」

 意味のある時間だったかは分からない。
 でも、俺の考えは世間に広まっただろう。

 火に油を注ぐ行為だろうと、必ず何らかの結果は生み出す。
 疑問の種は与えた。

 それが実るか、回収されるかは、相手の出方次第だろう。
 俺は家に帰った。

 「日向くん。見たよ」

 「ああ。結構、疲れた。ハゲそうだよ」

 「安心して、私が支えるから。晩御飯、食べに行こ」

 「ああ」

 俺を追って出て来る人が多くて、歩道が埋まり始めた。
 その調整なのか、違うところからかも人が出て来る。
 当然、誰も日陰の存在を見つける事は出来ないでいる。

 愛梨に話しかける人が数人居たけど、声が全然違う。
 幸いなのが、リイアファンが居ない事だった。

 「リイアたんのファンが居たら、愛梨の声だけで気づく」

 「日向くんは気づかなかったけどね(半ギレ)」
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