クラスで話題の美少女配信者がデブスの俺だとは推ししか知らない〜虐げられても関係ない、推しに貢ぐ為にスキルのガチャを引く〜

ネリムZ

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 あと少しで35にレベルは到達するかな?

 日陰(霧外日向)
レベル:34
称号:なし(《ガチャ中毒者》)〈モンスターコレクター〉
スキル:(【データ転性】《モンスターカードガチャ》)〈剣技.7〉〈剣術の才〉〈殺人の才〉〈作業厨.1〉〈集中力強化.3〉〈攻撃力強化.3〉〈敏捷力強化.2〉〈精神力強化.6〉〈斬撃数増加.1〉〈剣の舞.2〉〈刀の心得.5〉〈防御姿勢.2〉〈回避.2〉〈鑑定妨害.2〉
魔法:なし
 
 ポイントも貯まって来た。もうすぐでイベントが変わると予想されるので、キープしている。

 「メイドも十分溜まっているし、次のガチャが楽しみだ」

 スマホで愛梨からそろそろ晩御飯なので、帰って来いと言うメッセージが入る。
 すぐに帰ると返信をして、俺はダンジョンから出ようとする。

 「⋯⋯ッ!」

 その瞬間、何かしらの感覚を掴み取り、後ろに刀を反射的に振るった。
 しかし、触手のようなモノでそれは防がれた。あっさりとだ。

 「エネミーじゃない!」

 「いきなり攻撃とは、良いね!」

 「しゃ、喋ったあああああ!」

 見た目はタコ男に似ているが、少し違う感じがする。
 スライムのようなプルンプルン感がある。

 「僕はクラゲマン。知ってるかな?」

 「イベント一位の!」

 「そう。そのクラゲマンさ!」

 何回か他の探索者を見かけた事あるし、その人達がネットに俺の情報を流したのかもしれない。
 最近、俺を追ってくる人は増えているので、その点には驚かない。

 驚いたのは、クラゲマンと言う有名人が俺に接触して来た事だ。
 イベント以降、少し気になってクラゲマンを調べてみた。
 リアルでは温厚そうな大人と言う感じで、児童養護施設を営んでいた。

 日本五天皇と言う、日本を代表する探索者の一人でもあり、日本一のクランと呼ばれている『クラゲハウス』の創設者マスターだ。

 「お⋯⋯私になんの御用ですか?」

 撮影権利を使ってないので演技を忘れるところだった。
 付け加えて言えば、今回は私用で来ているので、余計に日陰を忘れている。
 この体で素を出して良いのは愛梨の前だけだ。

 くぅ。そう自覚すると、すごく恥ずかしよ!

 「実は君をスカウトしに来たんだ!」

 「なんで私を?」

 「知っているかは分からないから説明すると、我がクラゲハウスは完全スカウト制を取っている。自分達の目で判断した人達を迎え入れたいと思っているんだ。イベント映像を拝見させて貰った。あの剣の腕は素晴らしい! 是非とも仲間になって欲しいんだ!」

 「えーと。こちらもご存知かは分かりませんが、ギルド支部に登録したばかりで、クランに所属するのは当分先が良いかな~と」

 「安心してくれ。僕も北海道支部のギルドに登録している! そもそも登録してないとクランは創設出来ない仕様が二十年前からあるからな!」

 そうなの?
 なら、俺もクランを創れる権利は存在するのか?

 「モンスターカードも仲間達に与える必要は無い。優先して売る必要も無い。クランとしてのサポートは約束しよう。僕らが欲しいのは君の剣の腕前と人柄だ!」

 クラゲの人型バージョン過ぎて、考えが読み取れない。
 瞳ってどこにあるの? 目を見ないと相手の本質が見抜けないでは無いか。
 つーか、うにょうにょ触手動かすの止めて!
 笑っちゃう!

 「具体的なサポートとは、なんですか?」

 「パーティの斡旋やダンジョンの斡旋だな。ソロでは高ランクは厳しいんだ。装備類へのサポートもしたいと思っている」

 「でも、お金奪われるんですよね?」

 「そうだね。クランは言わば、データ世界の企業だ。製作をメインにしているクランがある程にな! それは申し訳ないが、今以上の稼ぎになるようにしようと思っているよ!」

 「⋯⋯それは私に必要だと思いますか?」

 「ほう?」

 俺は現状金に困ってない。使いすぎて怒られているくらいだ。
 武器に関しても、ちまちまやっているし問題ない。
 レベルの方にも、現状困った事は無い。

 パーティなんて論外だ。
 仲良くなりすぎると心が痛み始めるんだ。嘘をついてごめんってなる。
 神楽に対する罪悪感は日に日に大きくなっている。

 だからあまりそのような人を増やしたくない。
 もしかしたら、俺の正体まで掴んでしまう可能性もある。
 何よりも、パーティで行動するよりも、メイの全力をフル活用した方が圧倒的に強い。

 俺はクランに入るメリットが一切ない。
 愛梨も神楽もクランには所属していない。
 無理して入る必要は無いんだよ、一級モンカドを所持している人はな。
 愛梨は個人戦力だけど。友達とも時々攻略しているけどね。

 「正直、貴方のお誘いに魅力を一切感じません。私は全力を持って、モンカドを使い、世界を揺るがつもりはありません。全国大会、世界大会、個人イベント、神イベント、なるべく自重したいと考えてます」

 「つまり、イベントで見せたあの力は周りには迷惑をかけない程度にしか使わない⋯⋯と?」

 「はい」

 神の娯楽を邪魔すると俺からこの力が消えてしまう。
 だから、使わないと言うよりも使えない。
 そんな事をしたら、運だけで成り上がった俺は転落する。
 貯金とかもしないと、いけないのにまだしてない。

 オークションだけで金を稼ぎ、モンスターの力を一番使っている俺がこのスキルを無くしたら、何もかもを失う。
 将来的に俺は道場を継ぎたいと思っているが、それにはまだ先は長い。

 それに、金は欲しい。
 だから、もう少し探索者として続けるつもりだ。
 少なくとも、受験シーズンに入るまでは。まだ、一年以上は存在する。
 現状の目標はAランクの攻略。

 「将来的にはクランに所属するか、創立するべきだとは考えてます。Aランクダンジョンを攻略したいので。ですが、それは今じゃない」

 今俺がクランに入ったら、世間の目は確実に向くだろう。
 俺が入ったら世界は思うはずだ、そのクランは高ランクのモンカドを大量に入手したと。

 世界のバランスが崩れてしまう結果となる。
 クラン戦と言うイベントも過去には存在している。
 均衡が崩れて、調和が乱れた、そんなイベントを神は許さない。

 だから、俺が、俺自身が強くならないといけない。
 モンカドの大量使用を控える為に、俺自身の存在価値を高めるために。
 モンカド大量所持しているから欲しい、そう言う人達しかいない現状。

 クラゲマンのように、剣術を評価し、将来性を見込んで話しかけて来る人も居るだろう。
 それにあやかるのが賢い選択かもしれない。
 でも、この繋がりで何かを言われるのはまっぴらだ。

 「貴方は違くてもその仲間は分からない。皆が私の持っているモンカドを欲している。それだけの価値があるから。世界はまだ、『私』を見てない。だからダメなんです」

 「そうか。それは残念だな! そこそこの距離を移動したが、失敗に終わるとわ⋯⋯」

 「ご、ごめんなさい」

 「いや、謝る必要は無いぞ。任意だからな! そもそも八割は断れると思っていた」

 「え?」

 「君のような人はマスターになるからね。だから断れると思っていた。実際、クランが君に与えるメリットは、君から見たらメリットには成らない! そして君は疑うだろう? モンカドが欲しいとね。だから断れると思ってた」

 「で、ではなんで?」

 なんで俺に会いに来た?
 わざわざ北海道から。

 「純粋な興味だよ。僕達と同じ領域に登ろうとしている人のね」

 「それは⋯⋯無理ですね」

 「ほう? またなんで」

 「皆さんは、その個人の力と少しのモンカドの力で成り立ってます。でも、こっちはモンカドだけなので⋯⋯無理ですよ。貴方達の壁は、とても高い」

 「だからどうした? 君が推しているリイアは、そんな状態で、秀でたスキルも無く、急激な成長をしたんだぞ? 先輩を軽く追い抜き、我々と同じ土俵に立っているんだ」

 た、確かにそうだ。
 俺と愛梨は同い年だ。
 しかも、始めたのも僅か数年前⋯⋯だと言うのに、彼女は日本を代表する一人になっている。

 「僕は彼女の目を見た事がある。何かに向かって突き進む強い目だ。今日、君を見て確信したよ。同じだってね。楽しみだよ」

 「はい。頑張ります。目標は、Aランクダンジョンの攻略です」

 「これだけは覚えておいて欲しい。人間の強い想いは、例え神でも把握出来ない。人間は時に、神の想定を凌駕する。神の考えを超えて行け」

 「はい!」

 これが正しい選択なんて思わない。
 でもいずれは、身を固めないといけない。
 日陰と言うモンカド製造機は、全ての人間が欲する。

 金、力、この二つがたった一人の力で簡単に積み上がるのだから。

 「もっと強くならないと。今後もこの道を進むなら、モンカドだけじゃない。日陰も普通に強いって言う、世間の評価を得ないといけない。一級を四枚使っても、不思議に思われない程には、強くなる」

 「言い目だ。まぁ、何かあったら頼ってくれ。上に上がる人との繋がりは欲しいからな!」

 さては、それが狙いだな?
 モンカドはタダでは譲らんぞ? いや、誰かに優遇して渡すのは良くないな。
 それが一番良くない。

 愛梨とか、お世話になった人なら良いと思うけどね。
 でも、愛梨にはモンカドは寧ろ邪魔になり、神楽はイフリートのみ。

 俺に出来るお礼を、探さないとな。

 「あ、それと日陰くん」

 「はい?」

 「気をつけたまえ」

 「え?」

 「僕のようにいさぎいいクランは、五天皇くらいだ。特に中規模のクランは君を執拗に追いかけるよ。上に上がりたいって人達は多いからね」

 「⋯⋯私との繋がりが欲しい、それと忠告しに来た⋯⋯この二つが目的ですかね?」

 「ああ。君のような有望株には、辞めて欲しくは無いからね」

 良い人だな。
 見た目はかなり不思議だけど、リアルでは普通の人だ。

 「あ、あの!」

 スマホを操作して帰ろうとしているクラゲマンを俺は呼び止める。
 一つだけ、ものすごく気になった事があるから。

 「どうしてそんなアバターにしているんですか? 触手が数本って、操るの難しくないですか?」

 「子供に愛されるからね! この見た目にしているんだ。正義のヒーロークラゲマン! 触手は、最初は難しかったけど、慣れたらすごく強いよ」

 確かに、合計で10個の武器が持てるもんな。
 これは彼のセンスを物語っている気がする。

 「それじゃ」

 「はい。さようなら」

 俺も今後についてちゃんと考えないとな。
 クランについてとか、色々と。

 「ギルマスと相談するか」

 モンカドについても色々と相談モノだ。

 ちなみに、連絡してからそこそこの時間が経過していた事から、愛梨に説教されました。
 最近、愛梨のオカン化が進んでます。
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