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第八話
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ママとお祖父さんへ。
驚かせてごめんね。
同席するだけじゃなく、光希くんと結納を交わしたくて、有希乃にわがままを言って入れ替わってもらいました。
結婚しないまま死ぬのが悲しかったから、無茶は承知の上で、せめて婚約の真似事だけでもしてみたかったのです。同情して付き合ってくれた有希乃と光希くんを、どうか責めないであげて下さい。
生まれつき心臓が悪いとわかった時、ちょっとだけママを恨みました。その時はもう、有希乃という双子の妹がいると知っていたので、妹も同じ体なんじゃないかと思いました。
でも、妹のことは知らないふりをしなければならず、その子が病気かどうかを知る手段はありませんでした。分家の光太郎さん達の様子を観察しても、なんだかよくわかりません。わからないということは、病気の子がいそうな気配がしないということでもあり、妹は普通の健康体なのかもしれないと、だんだん思うようになりました。
アメリカで心臓移植できなかった時、私は恐ろしいことを考えました。もし妹が健康なら、帰国して妹の心臓をもらえばいいんじゃないかと、双子ならきっとぴったりなはずだと、その時は思ったのです。
誰にも言いませんでしたが、妹の心臓をもらって元気になり、高校に通う自分を想像したことは、一回や二回じゃありません。その想像に慰められて生きているようなものでした。
だけど想像の世界から我に返ると、壊れかけの心臓しかないという現実が待っています。
誰か助けてと叫びたかった。発作のたびに、これで楽になれるという気持ちと、死にたくないという気持ちの間を、ずっと行ったり来たりしていました。
もうこんな人生は終わらせてしまいたい、そう思いはじめた頃、有希乃が目の前に現れました。
有希乃は私が思っていたより元気で、憎たらしいほど強い心の持ち主でした。病気のことを別としても、この家の後継者にふさわしいのは有希乃だと思います。
最初はそのことを認められませんでした。双子なのになぜ自分だけが全部あきらめて死ななければならないのかと、運命を呪いました。
私が死んだ後、私の持っていたもの、これから手にするはずだったもののすべてを、有希乃が手に入れるのだと思うと頭がおかしくなりそうでした。彼女は私が早く死ねばいいと思っているだろうと決めつけ、そう簡単に全部を譲ってなるものかと、意地悪やわがままを沢山ぶつけました。
でも有希乃は、どんな無理難題を言ってもひるまず、何とか叶えようと頑張ってくれました。私が嫌がることはしないように、とても気を使ってくれているのも、だんだんわかってきました。一緒に育ったわけでもないのに、有希乃は私が思っていることを魔法のようにピタリと当てて、先回りして用意してくれるのです。
いつのまにか、心細い時やつらくなった時に浮かぶのが、ママやお祖父さんではなく、有希乃になっていました。
私も全部ではないけれど、有希乃のことがわかるようになってきました。彼女が強いのは生まれつきなどではなく、養子として育った経験がそうさせているのです。それがわかった時、私は自分がどれほど恵まれていたかということに気付きました。
有希乃は私を羨んだり、私の持っている何かを欲しがったり、もちろん妬んだりもしません。ただ私のことを思って一緒にいてくれるだけです。
ママとお祖父さんのことは、やっぱりちょっと恨んでいます。有希乃と一緒に育ちたかった。それが無理だったのなら、もっと早く会わせて欲しかった。私は有希乃と話したいことがまだまだ沢山あります。叶うなら、あの世にも一緒に連れて行きたいくらい。(もちろんそんなことはしませんが)
もし神様がいて、来世というものがあるのなら、私の願いは有希乃と再び双子で生まれることです。
また会えると信じていれば、死ぬのも怖くない気がします。先に旅立つことになるけれど、有希乃が天寿をまっとうしてやって来るのを、向こうでのんびり待つつもりです。
ママ、今まで育ててくれてありがとう。
いつもきれいで、ばりばり働くママはかっこよくて大好きでした。ママが本当は心優しくて、思いやりのある人だということを、私は知っています。後悔していることもあるかもしれませんが、いつまでもくよくよしないで前に進んで下さい。
お祖父さん、こんな孫のために沢山お金を使わせてしまってごめんなさい。
何も恩返し出来ないままなのが、とても残念です。小さい頃から特別に可愛がってくれてありがとう。向こうでお祖母さんに会ったら、お祖父さんは再婚しなかったよと伝えておくね。
人間も動物も、特別な縁がある仲なら、来世でも来々世でも必ず巡り合うそうです。短い人生でしたが、私もまたみんなに会えたらいいなと思っています。
どうか元気で、喧嘩なんかしないで仲良く、楽しく笑って長生きして下さい。ママとお祖父さんと家族になれたこと、幸せでした。ありがとう。
森沢橙子
※追伸――有希乃に「未来で待ってる」と伝えてね。
点滴や心電図や自動血圧測定器など沢山の線は、生命をつなぎとめるためのもののはずなのに、付けているのが苦しそうに見えて、つい外してあげたくなる。
「うちに帰りたい」
橙子は酸素マスクの中で、くぐもった声をもらした。
「一緒に帰ろうね」
気安めでしかない言葉をかけると、橙子はかすかに笑う。私の手を握る力は弱いのに、絶対に離そうとしない。
「有希乃、交代するから休んできなさい」
そう言う実母だって、目のまわりが落ちくぼんでいて相当疲れているようだ。
「橙子、ママの手の方がいい?」
静かに聞いてみると、橙子はイヤイヤするように首を振った。
「私、ここにいます」
「そう」
実母は何も言わなかった。
結納の席で倒れて搬送された日から、橙子は危篤状態が続いている。医師によると、今日明日にも……という状態だそうだ。
「橙子、死なないで」
冷えた指先を両手で包んでさする。血圧がずっと低くて、意識があるのが不思議なほどだという。
「死なないで」
この手を離したら、するりと死神にさらわれてしまいそうで怖かった。
そのまま八月になり、一週間が過ぎる頃、橙子は奇跡的に回復して退院できることになった。
「ああ、やっぱりうちが一番いい」
弱く冷房がかかった橙子の部屋に戻ると、窓の外にヨシズが立てかけられていた。直射日光がベッドに当たらないように設置したらしい。朝顔のツルが巻きついているのが透けて見える。
「光希くんがやってくれたのよ」
実母が教えると、橙子は嬉しそうに笑った。
「色々やってくれて助かってるの。やっぱり若い男手があると違うわね」
「まさか、うちに住んでるの?」
「一時的にね。光太郎さんと一緒に泊まり込んでくれてて」
初耳だった。
私はずっと病院に詰めていたし、養父たちとは結納の日からろくに話していない。
「さあ、もう横になって」
「うん。有希乃、手を貸して」
車椅子からベッドに移動させると、橙子は枕を高くして横になった。この方が呼吸が楽なのだという。
「また後で来るわ。有希乃、よろしくね」
実母は静かに部屋を出て行った。
「ね、また手握ってて」
橙子が甘えるので、私は椅子をベッドのそばに引いて行き、寝ている彼女と手をつないだ。
「安心する。なんか、生まれる前にもこうしてた気がして」
「橙子、もうちょっとそっち行って」
私は布団をめくってもぐりこんだ。並んで横になって、もう一度手をつなぐ。
「狭いよ」
笑いながら橙子が言う。
「お母さんのお腹の中にいた時って、たぶんこんな感じだよね」
するっと言葉に出ていた。
お母さん――本人にはまだ言えそうにないけど。
「私、覚えてる気がするんだ」
橙子が言った。
「すごくまぶしい光に向かって、ぐいぐい押し出されるの。一生懸命、離れないように手をつないでるんだけれど、バラバラになっちゃって。泣いてる声が聞こえたから、大丈夫だよって必死に伝えようとしてる……」
「それ、私も覚えてるんだけど!」
柄にもなく興奮した。小さい頃から何度かよぎるその光景は、現実の記憶なのか夢なのか、ずっとわからないものだった。
「本当?」
橙子は目を輝かせて私を見る。
「まぶしい光と、押し出される感覚は同じ! その後、大丈夫また会えるよって聞こえて、ちっちゃい手が見えたような……でも、生まれたてでしゃべったりするわけないし、ずっと夢だと思ってた」
「うわ、完全一致してる!」
「すごいね」
なんだか感動してしまう。橙子に会わなかったら、一生知らなかった感動だ。
「そっか、あれは橙子だったんだ。生まれる前からお姉ちゃんしてくれてたのかぁ」
「そうだよ」
橙子が私の頭を引き寄せて、よしよしするように撫でる。
「私は有希乃のお姉ちゃんなんだからね。忘れないでよ」
「忘れるわけないじゃん」
なぜか、急に涙がこみ上げて来て、堪えきれなくなる。
「お姉ちゃんの胸で泣いていいんだよ」
橙子は優しく頭を撫で続けてくれた。
「あーあ、有希乃と離れたくないな。私、取り憑いちゃうかも」
「いいよ」
「そんなこと言うと、本気にしちゃうから」
私たちは一緒に笑って、それから少し眠った。
驚かせてごめんね。
同席するだけじゃなく、光希くんと結納を交わしたくて、有希乃にわがままを言って入れ替わってもらいました。
結婚しないまま死ぬのが悲しかったから、無茶は承知の上で、せめて婚約の真似事だけでもしてみたかったのです。同情して付き合ってくれた有希乃と光希くんを、どうか責めないであげて下さい。
生まれつき心臓が悪いとわかった時、ちょっとだけママを恨みました。その時はもう、有希乃という双子の妹がいると知っていたので、妹も同じ体なんじゃないかと思いました。
でも、妹のことは知らないふりをしなければならず、その子が病気かどうかを知る手段はありませんでした。分家の光太郎さん達の様子を観察しても、なんだかよくわかりません。わからないということは、病気の子がいそうな気配がしないということでもあり、妹は普通の健康体なのかもしれないと、だんだん思うようになりました。
アメリカで心臓移植できなかった時、私は恐ろしいことを考えました。もし妹が健康なら、帰国して妹の心臓をもらえばいいんじゃないかと、双子ならきっとぴったりなはずだと、その時は思ったのです。
誰にも言いませんでしたが、妹の心臓をもらって元気になり、高校に通う自分を想像したことは、一回や二回じゃありません。その想像に慰められて生きているようなものでした。
だけど想像の世界から我に返ると、壊れかけの心臓しかないという現実が待っています。
誰か助けてと叫びたかった。発作のたびに、これで楽になれるという気持ちと、死にたくないという気持ちの間を、ずっと行ったり来たりしていました。
もうこんな人生は終わらせてしまいたい、そう思いはじめた頃、有希乃が目の前に現れました。
有希乃は私が思っていたより元気で、憎たらしいほど強い心の持ち主でした。病気のことを別としても、この家の後継者にふさわしいのは有希乃だと思います。
最初はそのことを認められませんでした。双子なのになぜ自分だけが全部あきらめて死ななければならないのかと、運命を呪いました。
私が死んだ後、私の持っていたもの、これから手にするはずだったもののすべてを、有希乃が手に入れるのだと思うと頭がおかしくなりそうでした。彼女は私が早く死ねばいいと思っているだろうと決めつけ、そう簡単に全部を譲ってなるものかと、意地悪やわがままを沢山ぶつけました。
でも有希乃は、どんな無理難題を言ってもひるまず、何とか叶えようと頑張ってくれました。私が嫌がることはしないように、とても気を使ってくれているのも、だんだんわかってきました。一緒に育ったわけでもないのに、有希乃は私が思っていることを魔法のようにピタリと当てて、先回りして用意してくれるのです。
いつのまにか、心細い時やつらくなった時に浮かぶのが、ママやお祖父さんではなく、有希乃になっていました。
私も全部ではないけれど、有希乃のことがわかるようになってきました。彼女が強いのは生まれつきなどではなく、養子として育った経験がそうさせているのです。それがわかった時、私は自分がどれほど恵まれていたかということに気付きました。
有希乃は私を羨んだり、私の持っている何かを欲しがったり、もちろん妬んだりもしません。ただ私のことを思って一緒にいてくれるだけです。
ママとお祖父さんのことは、やっぱりちょっと恨んでいます。有希乃と一緒に育ちたかった。それが無理だったのなら、もっと早く会わせて欲しかった。私は有希乃と話したいことがまだまだ沢山あります。叶うなら、あの世にも一緒に連れて行きたいくらい。(もちろんそんなことはしませんが)
もし神様がいて、来世というものがあるのなら、私の願いは有希乃と再び双子で生まれることです。
また会えると信じていれば、死ぬのも怖くない気がします。先に旅立つことになるけれど、有希乃が天寿をまっとうしてやって来るのを、向こうでのんびり待つつもりです。
ママ、今まで育ててくれてありがとう。
いつもきれいで、ばりばり働くママはかっこよくて大好きでした。ママが本当は心優しくて、思いやりのある人だということを、私は知っています。後悔していることもあるかもしれませんが、いつまでもくよくよしないで前に進んで下さい。
お祖父さん、こんな孫のために沢山お金を使わせてしまってごめんなさい。
何も恩返し出来ないままなのが、とても残念です。小さい頃から特別に可愛がってくれてありがとう。向こうでお祖母さんに会ったら、お祖父さんは再婚しなかったよと伝えておくね。
人間も動物も、特別な縁がある仲なら、来世でも来々世でも必ず巡り合うそうです。短い人生でしたが、私もまたみんなに会えたらいいなと思っています。
どうか元気で、喧嘩なんかしないで仲良く、楽しく笑って長生きして下さい。ママとお祖父さんと家族になれたこと、幸せでした。ありがとう。
森沢橙子
※追伸――有希乃に「未来で待ってる」と伝えてね。
点滴や心電図や自動血圧測定器など沢山の線は、生命をつなぎとめるためのもののはずなのに、付けているのが苦しそうに見えて、つい外してあげたくなる。
「うちに帰りたい」
橙子は酸素マスクの中で、くぐもった声をもらした。
「一緒に帰ろうね」
気安めでしかない言葉をかけると、橙子はかすかに笑う。私の手を握る力は弱いのに、絶対に離そうとしない。
「有希乃、交代するから休んできなさい」
そう言う実母だって、目のまわりが落ちくぼんでいて相当疲れているようだ。
「橙子、ママの手の方がいい?」
静かに聞いてみると、橙子はイヤイヤするように首を振った。
「私、ここにいます」
「そう」
実母は何も言わなかった。
結納の席で倒れて搬送された日から、橙子は危篤状態が続いている。医師によると、今日明日にも……という状態だそうだ。
「橙子、死なないで」
冷えた指先を両手で包んでさする。血圧がずっと低くて、意識があるのが不思議なほどだという。
「死なないで」
この手を離したら、するりと死神にさらわれてしまいそうで怖かった。
そのまま八月になり、一週間が過ぎる頃、橙子は奇跡的に回復して退院できることになった。
「ああ、やっぱりうちが一番いい」
弱く冷房がかかった橙子の部屋に戻ると、窓の外にヨシズが立てかけられていた。直射日光がベッドに当たらないように設置したらしい。朝顔のツルが巻きついているのが透けて見える。
「光希くんがやってくれたのよ」
実母が教えると、橙子は嬉しそうに笑った。
「色々やってくれて助かってるの。やっぱり若い男手があると違うわね」
「まさか、うちに住んでるの?」
「一時的にね。光太郎さんと一緒に泊まり込んでくれてて」
初耳だった。
私はずっと病院に詰めていたし、養父たちとは結納の日からろくに話していない。
「さあ、もう横になって」
「うん。有希乃、手を貸して」
車椅子からベッドに移動させると、橙子は枕を高くして横になった。この方が呼吸が楽なのだという。
「また後で来るわ。有希乃、よろしくね」
実母は静かに部屋を出て行った。
「ね、また手握ってて」
橙子が甘えるので、私は椅子をベッドのそばに引いて行き、寝ている彼女と手をつないだ。
「安心する。なんか、生まれる前にもこうしてた気がして」
「橙子、もうちょっとそっち行って」
私は布団をめくってもぐりこんだ。並んで横になって、もう一度手をつなぐ。
「狭いよ」
笑いながら橙子が言う。
「お母さんのお腹の中にいた時って、たぶんこんな感じだよね」
するっと言葉に出ていた。
お母さん――本人にはまだ言えそうにないけど。
「私、覚えてる気がするんだ」
橙子が言った。
「すごくまぶしい光に向かって、ぐいぐい押し出されるの。一生懸命、離れないように手をつないでるんだけれど、バラバラになっちゃって。泣いてる声が聞こえたから、大丈夫だよって必死に伝えようとしてる……」
「それ、私も覚えてるんだけど!」
柄にもなく興奮した。小さい頃から何度かよぎるその光景は、現実の記憶なのか夢なのか、ずっとわからないものだった。
「本当?」
橙子は目を輝かせて私を見る。
「まぶしい光と、押し出される感覚は同じ! その後、大丈夫また会えるよって聞こえて、ちっちゃい手が見えたような……でも、生まれたてでしゃべったりするわけないし、ずっと夢だと思ってた」
「うわ、完全一致してる!」
「すごいね」
なんだか感動してしまう。橙子に会わなかったら、一生知らなかった感動だ。
「そっか、あれは橙子だったんだ。生まれる前からお姉ちゃんしてくれてたのかぁ」
「そうだよ」
橙子が私の頭を引き寄せて、よしよしするように撫でる。
「私は有希乃のお姉ちゃんなんだからね。忘れないでよ」
「忘れるわけないじゃん」
なぜか、急に涙がこみ上げて来て、堪えきれなくなる。
「お姉ちゃんの胸で泣いていいんだよ」
橙子は優しく頭を撫で続けてくれた。
「あーあ、有希乃と離れたくないな。私、取り憑いちゃうかも」
「いいよ」
「そんなこと言うと、本気にしちゃうから」
私たちは一緒に笑って、それから少し眠った。
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