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第11話 オアシスの闇
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その日も、ぼくはハックと打ちあいの練習をしていた。彼の木刀がぼくの身体をうち、あっちこっちに傷をつけるまでになっている。だから、ぼくはこん棒を握る他に、肩からつりさげていたポシェットから、手裏剣をだして、それで受けなければならないほど、ハックの木刀の動きは素早さを増していたのだ。
そんな時に森の中からたくさんのラクダたちが走り出てきた。ハックとぼくは右や左に飛んでラクダたちを避けた。そんな二人の傍を通りすぎると、ラクダたちは砂漠に走りだしていった。
「一体、なにが起きているんだ?」と、ぼくは思わず声を出した。
ぼくたちは、ラクダたちの住処になっている池の向こう岸にある森の方には行かないようにしていた。その森でラクダたちは、トカゲやバッタなどを採って食べていた。もちろん、木の実や草もラクダは食べてたから雑食性だね。そんなラクダたちの生活を壊したくはなかった。それは、ぼくが森に棲むスライムだったからかもしれない。
ハックは木刀から本当の剣に変えると、森の方に走っていく。ラクダたちが逃げ出してきたことを考えると何かいるのかわからない。ぼくは慌てて、ハックの後を追った。
「ハック、待て。急ぐな」
すると、ハックの足が止まった。
「おじさん、あれは?」
ハックの指さした先には、白い糸のカーテンのようなものが木々にはりついていた。だが、その糸にからまれて、ラクダがカーテンの中に浮いていたのだ。ラクダは体をばたつかせていた。その後ろに何かいる。赤い眼が覗いた。真ん中の大きな二つの眼を中心にして、左右に3つずつの眼もある。そう8つの眼がルビーのように光っていた。体の大きさは牛を思わせた。それに黒く長い足が左右に4本ずつついている。
「蜘蛛だ。それも大蜘蛛だ」
「蜘蛛ですか!」
蜘蛛ならば、簡単に倒せると思ったのだろう。ハックは剣をふりあげると、そのまま白い糸のカーテンに向かって走り出した。その時に、数本の白い糸が飛んできた。あっという間にハックの足に糸はまきつき、ハックを転がした。そして、ハックは赤い眼の方にひかれだしたのだ。すぐに、ぼくはポシェットから手裏剣を取り出した。
大きく手裏剣を振り、その力でハックの足にからみついている糸を断ち切った。そのおかげで、ハックは蜘蛛に引き込まれずにすんだ。すると今度は、ぼくに向かって糸を飛ばしてきた。糸は手裏剣をもっている触手にからみつき、ぼくを引き寄せだしたのだ。複眼の赤い眼が光だし大蜘蛛は白い糸の間から醜い姿を現した。体中を無数の黒い毛がおおい、八本の足はゆがんだ大木のように見える。夾角の口を突き出し、ぼくに近づいてくる。ぼくは別の触手を伸ばしポシェットから手裏剣を取り出して、それを投げつけようとした。だが、それはできなかった。ぼくに向かって大蜘蛛はたくさんの糸を一気にはきだしたからだ。ぼくの身体はまるで包帯でまかれたかのように、白い物でおおわれだし完全に身動きができなくなってしまった。
まずい、とぼくは胸の中で叫んだ。白い包帯のトンネルの中に大蜘蛛の口が差し込まれてきた。その口につかまれば、身体の中に毒を入れられ体液を吸い出されてしまう。ぼくは蜘蛛の糸にふれていない皮膚を動かし、もう一本触手を作り出し、ポシェットから、まずMプラスを2つ取り出し(残り1つ)体に押し付けた。これで魔法を使う力を強めることができた。次にもう一度ポシェットに触手を入れ短剣を取り出した。この短剣は魔短剣だ。大蜘蛛の口に押し当て、シビレの魔法を念じた。
魔短剣は光った。大蜘蛛の肉がこげる匂いがたちこめ、口はピクリとも動かなくなっていた。しばらくして、大きな物音がしたのを見れば、大蜘蛛の体が地面の上に落ちたことは間違いない。しかし、この包帯の中からでることができないでいた。やがて、包帯に火のついた木の枝が差し込まれ蜘蛛の糸が焼かれていった。割れ目から、ハックの顔がのぞく。
「おじさん、大丈夫ですか?」
「ああ、蜘蛛はどうなった?」
「見事にたおしてますよ」
そういいながら、ハックは火のついた枝を回して、ぼくの体についていた蜘蛛の糸を完全に焼き切ってくれた。ハックは枝に巻き付けていた糸をたき火の上に置いて焼いている。先に自由になったハックは蜘蛛の糸を焼くしかないと気がついてくれたのだ。
「大蜘蛛は一匹ではないはずだ」と、ぼくは声をあげた。
ハックは糸のカーテンの中にいるラクダを火のついた枝で糸を焼いて降ろしている。その間、ぼくは地面の上を見て歩いた。すると丸い穴がほられ、そこにはキノコのような卵がびっしりと並んでいた。
「ハック、火のついた枝を一本かしてくれよ」
ぼくがそう言うと、ハックは先が赤くなった枝を一本持ってきてくれた。それを受け取ると穴の中にさしこんだ。肉が焦げたような、いやな臭いが広がってくる。
「おじさん、小さい蜘蛛もいるよ」
そういったハックは剣をふるって、逃げ惑う蜘蛛たちを追いかけ、足で踏みつぶしていた。
しばらくの間、たき火の煙が天に向かって昇り続けていた。蜘蛛たちがいなくなったと、どうして分かったのだろうか?やがて、ラクダたちがオアシスの森に戻ってきた。
そんな時に森の中からたくさんのラクダたちが走り出てきた。ハックとぼくは右や左に飛んでラクダたちを避けた。そんな二人の傍を通りすぎると、ラクダたちは砂漠に走りだしていった。
「一体、なにが起きているんだ?」と、ぼくは思わず声を出した。
ぼくたちは、ラクダたちの住処になっている池の向こう岸にある森の方には行かないようにしていた。その森でラクダたちは、トカゲやバッタなどを採って食べていた。もちろん、木の実や草もラクダは食べてたから雑食性だね。そんなラクダたちの生活を壊したくはなかった。それは、ぼくが森に棲むスライムだったからかもしれない。
ハックは木刀から本当の剣に変えると、森の方に走っていく。ラクダたちが逃げ出してきたことを考えると何かいるのかわからない。ぼくは慌てて、ハックの後を追った。
「ハック、待て。急ぐな」
すると、ハックの足が止まった。
「おじさん、あれは?」
ハックの指さした先には、白い糸のカーテンのようなものが木々にはりついていた。だが、その糸にからまれて、ラクダがカーテンの中に浮いていたのだ。ラクダは体をばたつかせていた。その後ろに何かいる。赤い眼が覗いた。真ん中の大きな二つの眼を中心にして、左右に3つずつの眼もある。そう8つの眼がルビーのように光っていた。体の大きさは牛を思わせた。それに黒く長い足が左右に4本ずつついている。
「蜘蛛だ。それも大蜘蛛だ」
「蜘蛛ですか!」
蜘蛛ならば、簡単に倒せると思ったのだろう。ハックは剣をふりあげると、そのまま白い糸のカーテンに向かって走り出した。その時に、数本の白い糸が飛んできた。あっという間にハックの足に糸はまきつき、ハックを転がした。そして、ハックは赤い眼の方にひかれだしたのだ。すぐに、ぼくはポシェットから手裏剣を取り出した。
大きく手裏剣を振り、その力でハックの足にからみついている糸を断ち切った。そのおかげで、ハックは蜘蛛に引き込まれずにすんだ。すると今度は、ぼくに向かって糸を飛ばしてきた。糸は手裏剣をもっている触手にからみつき、ぼくを引き寄せだしたのだ。複眼の赤い眼が光だし大蜘蛛は白い糸の間から醜い姿を現した。体中を無数の黒い毛がおおい、八本の足はゆがんだ大木のように見える。夾角の口を突き出し、ぼくに近づいてくる。ぼくは別の触手を伸ばしポシェットから手裏剣を取り出して、それを投げつけようとした。だが、それはできなかった。ぼくに向かって大蜘蛛はたくさんの糸を一気にはきだしたからだ。ぼくの身体はまるで包帯でまかれたかのように、白い物でおおわれだし完全に身動きができなくなってしまった。
まずい、とぼくは胸の中で叫んだ。白い包帯のトンネルの中に大蜘蛛の口が差し込まれてきた。その口につかまれば、身体の中に毒を入れられ体液を吸い出されてしまう。ぼくは蜘蛛の糸にふれていない皮膚を動かし、もう一本触手を作り出し、ポシェットから、まずMプラスを2つ取り出し(残り1つ)体に押し付けた。これで魔法を使う力を強めることができた。次にもう一度ポシェットに触手を入れ短剣を取り出した。この短剣は魔短剣だ。大蜘蛛の口に押し当て、シビレの魔法を念じた。
魔短剣は光った。大蜘蛛の肉がこげる匂いがたちこめ、口はピクリとも動かなくなっていた。しばらくして、大きな物音がしたのを見れば、大蜘蛛の体が地面の上に落ちたことは間違いない。しかし、この包帯の中からでることができないでいた。やがて、包帯に火のついた木の枝が差し込まれ蜘蛛の糸が焼かれていった。割れ目から、ハックの顔がのぞく。
「おじさん、大丈夫ですか?」
「ああ、蜘蛛はどうなった?」
「見事にたおしてますよ」
そういいながら、ハックは火のついた枝を回して、ぼくの体についていた蜘蛛の糸を完全に焼き切ってくれた。ハックは枝に巻き付けていた糸をたき火の上に置いて焼いている。先に自由になったハックは蜘蛛の糸を焼くしかないと気がついてくれたのだ。
「大蜘蛛は一匹ではないはずだ」と、ぼくは声をあげた。
ハックは糸のカーテンの中にいるラクダを火のついた枝で糸を焼いて降ろしている。その間、ぼくは地面の上を見て歩いた。すると丸い穴がほられ、そこにはキノコのような卵がびっしりと並んでいた。
「ハック、火のついた枝を一本かしてくれよ」
ぼくがそう言うと、ハックは先が赤くなった枝を一本持ってきてくれた。それを受け取ると穴の中にさしこんだ。肉が焦げたような、いやな臭いが広がってくる。
「おじさん、小さい蜘蛛もいるよ」
そういったハックは剣をふるって、逃げ惑う蜘蛛たちを追いかけ、足で踏みつぶしていた。
しばらくの間、たき火の煙が天に向かって昇り続けていた。蜘蛛たちがいなくなったと、どうして分かったのだろうか?やがて、ラクダたちがオアシスの森に戻ってきた。
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