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花が咲きました。
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ぼくは学校でいじめられたので、学校に行くのをやめました。つまり、引きこもりを始めたのです。
お母さんは、学校に行きなさいとぼくに言っていましたが、今ではもうあきらめたようで、何も言わなくなりました。
お父さんは死んでいないので、お父さんの代わりに、お母さんが働いてくれています。
職場は、昼間はコンビニ、夜は居酒屋でした。
お母さんがコンビニに出かけた後、ぼくは居間にいて算数の問題集をやっていました。ぼくは食卓テーブルにすわっていましたので、ガラス戸から外がよく見えます。かんたんに問題が解けなくなってしまい、ため息をつきながら問題集から顔をあげました。すると、おばあさんが庭の花畑に入り込み、手にもっていた種をうえていたのです。
ぼくは立ちあがり、ガラス戸を開けて、庭に出て行きました。
「おばあさん、何をしているの?」
「あんたは、ここのうちの人かい?」
「そうだよ」
「散歩をしていたら、種を拾ったので、ここに植えてみたんだよ」
そう言ったおばあさんは、笑っています。
「水をやってちょうだい。どんな花が咲くのか、楽しみだね」と言って、おばあさんは柵の間をすりぬけて出て行ってしまいました。
ぼくも、どんな花が咲くのか、確かめたくなりました。そこで、物置からじょうろを出してきて、それに水を入れて種をうめた所に水をかけてやりました。
その日から、ぼくは毎日水をやり続け、おばあさんは庭を見に来るようになりました。
やがて、種は芽を出し、双葉をつけて伸び出しました。
そして、花を咲かせたのです。
花はピンク色できれいでしたが、先がとがっていてカラスの頭のようでした。そこで、この花をぼくはカラス頭と呼ぶことにしました。
その日、おばあさんと二人で見ていると、カラス頭は飛んできたハエをパクリと食べたのです。
「食虫植物だったんだね」と言って、おばあさんは驚いていました。もちろん、ぼくも驚きました。
その後、ぼくはカラス頭を見続けていると、近づいてくる虫を次から次へと食べていました。
カラス頭の近くに白百合がはえていましたので、その花をめざしてキアゲハがやってきます。カラス頭は、そのキアゲハを食べようと何度も頭をキアゲハの方にむけるのですが、キアゲハは優雅に羽ばたき、それをよけていました。
アゲハに逃げられたカラス頭は「ちぇっ」と叫んだのです。思わず、ぼくはカラス頭をみつめてしまいました。
次の日のお昼。
暑い日差しの中をキアゲハがやってきて、カラス頭をよけて白百合の上を飛んでいました。がまんができなくなったのでしょうか。カラス頭は土の中から立ちあがり、根を足のように動かして歩き出したのです。そして「ケケケ」と叫びながら、カラス頭はキアゲハに襲いかかりました。
キアゲハはすばやく空へ飛びあがり、庭の外に出て行ってしまいました。すると、それを追ってカラス頭も柵を飛び越え庭の外へ行ってしまったのです。
翌日。おばあさんは庭に来て、カラス頭が生えていた所に穴があいているのをじっと見ていました。
お母さんは、学校に行きなさいとぼくに言っていましたが、今ではもうあきらめたようで、何も言わなくなりました。
お父さんは死んでいないので、お父さんの代わりに、お母さんが働いてくれています。
職場は、昼間はコンビニ、夜は居酒屋でした。
お母さんがコンビニに出かけた後、ぼくは居間にいて算数の問題集をやっていました。ぼくは食卓テーブルにすわっていましたので、ガラス戸から外がよく見えます。かんたんに問題が解けなくなってしまい、ため息をつきながら問題集から顔をあげました。すると、おばあさんが庭の花畑に入り込み、手にもっていた種をうえていたのです。
ぼくは立ちあがり、ガラス戸を開けて、庭に出て行きました。
「おばあさん、何をしているの?」
「あんたは、ここのうちの人かい?」
「そうだよ」
「散歩をしていたら、種を拾ったので、ここに植えてみたんだよ」
そう言ったおばあさんは、笑っています。
「水をやってちょうだい。どんな花が咲くのか、楽しみだね」と言って、おばあさんは柵の間をすりぬけて出て行ってしまいました。
ぼくも、どんな花が咲くのか、確かめたくなりました。そこで、物置からじょうろを出してきて、それに水を入れて種をうめた所に水をかけてやりました。
その日から、ぼくは毎日水をやり続け、おばあさんは庭を見に来るようになりました。
やがて、種は芽を出し、双葉をつけて伸び出しました。
そして、花を咲かせたのです。
花はピンク色できれいでしたが、先がとがっていてカラスの頭のようでした。そこで、この花をぼくはカラス頭と呼ぶことにしました。
その日、おばあさんと二人で見ていると、カラス頭は飛んできたハエをパクリと食べたのです。
「食虫植物だったんだね」と言って、おばあさんは驚いていました。もちろん、ぼくも驚きました。
その後、ぼくはカラス頭を見続けていると、近づいてくる虫を次から次へと食べていました。
カラス頭の近くに白百合がはえていましたので、その花をめざしてキアゲハがやってきます。カラス頭は、そのキアゲハを食べようと何度も頭をキアゲハの方にむけるのですが、キアゲハは優雅に羽ばたき、それをよけていました。
アゲハに逃げられたカラス頭は「ちぇっ」と叫んだのです。思わず、ぼくはカラス頭をみつめてしまいました。
次の日のお昼。
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