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竜人をさがして!
5たびびとホテル
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着いた所は、壊れたエレベーターの中でした。天井も壊されていましたが出入口のドアも壊されていたのです。
「カオルちゃんは、魔法を使える人だったんだ」と玲子は驚いて目を丸くしていました。
「まあ、そうだけど。でも、秘密だよ」と、カオルは照れていました。玲子は先にホウキからおりましたので、すぐにエレベーターの外へ出て行きました。カオルはホウキを背負ってから、玲子の後をおいました。
ここで争いごとがあったのか、机や椅子は倒され、置かれていた書類があたりに散らばっていたのでした。
「何があったらしいわね?」
「ここには誰もいないわ」と言った玲子はおばあちゃんが描いた絵をだして、みつめながら「ともかく、この人を探さなくては」と言っていました。
「そうだね。そのためには、この建物から出ましょう」
建物の出入口から二人は出て顔をあげて辺りを見回しました。
遠くに並んでいる工場のような建物が見え、さらに奥にある山際には牧場や畑も見えていました。そして、手前には、たくさんの家々が丘にそってはりつき、丘のてっぺんにはお城が見えたのです。
「なに、あのお城、赤い屋根で鯱をのせているわ」
「ここは城下町かしら。でも、どこかで見たような気がするわ」と、玲子は首をかしげていました。
街並みを二人が歩き出すと、向こうから歩いてくる人がいました。
「あの、すいません」と声をかけたカオルはすぐに黙ってしまいました。歩いてきた人の額に鹿のような角がついていたからです。玲子のおばあちゃんが見た人と同じでしたが、額があがっている人でしたので、別の人であることは明らかです。
玲子が手をあげて、城の方を指さしているのを見ると、すぐにその人は「あれかね。あれは龍宮城だよ」と教えてくれました。その後、「あれを知らない所を見ると、ここにきたばかりの旅人だね」と言っていました。
「旅人? ええ、ここにきたばかりですけど。ここにくる人たちは、たくさんいるんですか?」と、カオルは聞きました。
「そうだね。少しずつ増えているみたいだよ。ホテルを捜しているのなら、この通りを歩いていって、交叉している三本目の通りを左にまがって行けば、五件目にたびびとホテルがある。そこは名前のとおり旅人専用のホテルだからね」
「ありがとうございます」
去っていく男を見送った後、二人は顔を見合わせてため息をつきました。
長い時間をかけて竜人の国にいるつもりはなかったからです。でも、おばあちゃんに薬をもってきてくれると言った竜人に簡単にあうことができないことは明らかです。
額の広くなった竜人に教えられたとおり、二人は歩いていました。すると、たくさんの竜人たちとすれ違うことになりました。ここでは、竜人などと考えずに、普通の人と同じに考えたほうがいいようです。
三本目の通りに入り、顔をあげて看板を見上げると、たびびとホテルと書かれていました。すぐに二人はホテルに入りました。
ホテルの中に入ると、受付があり、そこに腹の突き出たオーナーがたっていました。
「いらっしゃいませ」
「とめていただけますか?」と、カオルが聞きました。
「何泊とまる予定かね」
「できるだけ早く帰るつもりなんですけど」
「宿泊代は一日単位の前払いだよ。だから、少なくとも一日分はまずもらわなくては」
「ここは、私がだしますよ」と言って、玲子は自分の財布をだしました。
「料金は、一日1ゴールドだね。朝食と夕食つきだが」
「ゴールドですって?」と、玲子は驚いていました。
そうなのです。ここは日本ではありません。日本のお金は通用しなかったのです。
「それじゃ、7ゴールドだすわ」と言って、カオルはバッグから小袋に入れていた金貨をだして渡していました。金貨はカオルが前におばあさんから貰ったものでした。ゴールドは異世界でも通用するお金なのでした。
「二人とも同じ部屋でいいわよ」
「それならば一週間はおられますよ」と、オーナーは言っていました。
「カオルちゃんは、魔法を使える人だったんだ」と玲子は驚いて目を丸くしていました。
「まあ、そうだけど。でも、秘密だよ」と、カオルは照れていました。玲子は先にホウキからおりましたので、すぐにエレベーターの外へ出て行きました。カオルはホウキを背負ってから、玲子の後をおいました。
ここで争いごとがあったのか、机や椅子は倒され、置かれていた書類があたりに散らばっていたのでした。
「何があったらしいわね?」
「ここには誰もいないわ」と言った玲子はおばあちゃんが描いた絵をだして、みつめながら「ともかく、この人を探さなくては」と言っていました。
「そうだね。そのためには、この建物から出ましょう」
建物の出入口から二人は出て顔をあげて辺りを見回しました。
遠くに並んでいる工場のような建物が見え、さらに奥にある山際には牧場や畑も見えていました。そして、手前には、たくさんの家々が丘にそってはりつき、丘のてっぺんにはお城が見えたのです。
「なに、あのお城、赤い屋根で鯱をのせているわ」
「ここは城下町かしら。でも、どこかで見たような気がするわ」と、玲子は首をかしげていました。
街並みを二人が歩き出すと、向こうから歩いてくる人がいました。
「あの、すいません」と声をかけたカオルはすぐに黙ってしまいました。歩いてきた人の額に鹿のような角がついていたからです。玲子のおばあちゃんが見た人と同じでしたが、額があがっている人でしたので、別の人であることは明らかです。
玲子が手をあげて、城の方を指さしているのを見ると、すぐにその人は「あれかね。あれは龍宮城だよ」と教えてくれました。その後、「あれを知らない所を見ると、ここにきたばかりの旅人だね」と言っていました。
「旅人? ええ、ここにきたばかりですけど。ここにくる人たちは、たくさんいるんですか?」と、カオルは聞きました。
「そうだね。少しずつ増えているみたいだよ。ホテルを捜しているのなら、この通りを歩いていって、交叉している三本目の通りを左にまがって行けば、五件目にたびびとホテルがある。そこは名前のとおり旅人専用のホテルだからね」
「ありがとうございます」
去っていく男を見送った後、二人は顔を見合わせてため息をつきました。
長い時間をかけて竜人の国にいるつもりはなかったからです。でも、おばあちゃんに薬をもってきてくれると言った竜人に簡単にあうことができないことは明らかです。
額の広くなった竜人に教えられたとおり、二人は歩いていました。すると、たくさんの竜人たちとすれ違うことになりました。ここでは、竜人などと考えずに、普通の人と同じに考えたほうがいいようです。
三本目の通りに入り、顔をあげて看板を見上げると、たびびとホテルと書かれていました。すぐに二人はホテルに入りました。
ホテルの中に入ると、受付があり、そこに腹の突き出たオーナーがたっていました。
「いらっしゃいませ」
「とめていただけますか?」と、カオルが聞きました。
「何泊とまる予定かね」
「できるだけ早く帰るつもりなんですけど」
「宿泊代は一日単位の前払いだよ。だから、少なくとも一日分はまずもらわなくては」
「ここは、私がだしますよ」と言って、玲子は自分の財布をだしました。
「料金は、一日1ゴールドだね。朝食と夕食つきだが」
「ゴールドですって?」と、玲子は驚いていました。
そうなのです。ここは日本ではありません。日本のお金は通用しなかったのです。
「それじゃ、7ゴールドだすわ」と言って、カオルはバッグから小袋に入れていた金貨をだして渡していました。金貨はカオルが前におばあさんから貰ったものでした。ゴールドは異世界でも通用するお金なのでした。
「二人とも同じ部屋でいいわよ」
「それならば一週間はおられますよ」と、オーナーは言っていました。
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