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竜人をさがして!

3お母さんからの話

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 病院からの帰りも玲子はタクシーでカオルを家まで送ってくれました。車の音がしたので、お母さんが家からでてきました。そして、タクシーからカオルがおりてくると少し驚いた顔をしています。まさか、タクシーで帰ってくるとはお母さんは思っていなかったからです。玲子は一度、タクシーからおりてきて、お母さんに、挨拶をしていました。
 その後、タクシーに再びのると、玲子は自分の家に帰っていきました。
 玲子を見送った後、家に入るとすぐにカオルはお母さんに玲子の兄、正人が白血病にかかっていることを話したのでした。すると、お母さんも顔を曇らしていました。

「白血病はね。血液中の白血球がガンになって異常に増加する病気なのよ。それを起こす所がリンパ節の場合と骨髄にある造血幹細胞の場合があるわ。これによって、赤血球や血小版が作れなくなってしまうの。今はいい薬がでてきているらしいけど。でも、薬が効かない人もいるみたいよ。やはり、正常な機能をもつ造血幹細胞のある骨髄移植することが一番いいみたい。でも、難しいのは、まず移植をさせてくれる人、ドナーを見つけなればならないわ。その人が移植させてもいいと言ってくれても、誰でも移植できないの。移植した細胞が、移植された人に対して拒絶反応を起こされたらだめだからね。だから、そうでない人を見つけなければならない。そのために、多くの人がドナーに参加してもらえるように、ドナーバンクがあるわ」
「じゃ私もドナーバンクの登録をして、調べてもらおうかな」
「それが一番かもね。でも、なかなか適合する人がいないのよ。だから、あなたが登録をしても正人さんへの骨髄移植はできないかもしれないわ」
「そうなの」

 そこで、カオルは、玲子と約束をした七坂神社に行く約束をした話をしました。
「約束をしたのなら、行ってあげなければね。でも、カオル、忘れていることがあるわ」
「なにかしら?」
「だいぶ前になるけど、お父さんとバーベキューガーデンに行く約束をしていたでしょう」
「あっ、忘れていた!」
 バーベキューガーデンというのは、山を一つ越えた所にある自然公園にある施設です。そこにはバーベキューができるようにいくつもかまどが用意されていて、そこに肉や野菜の料理を持ち込めば、バーべキューができるようになっているのです。もちろん、そばには駐車場があって車でそこに行けるようになっています。

「でもね。友達との約束を優先した方がいいわ。夕食の時に、お父さんに行けなくなったことを話して謝ってしまいましょう」と、お母さんは笑っていました。

 午後7時になって、お父さんは帰ってきました。
 さっそく、夕飯になりました。
「今晩は、すき焼きか!」と、お父さんは驚いていました。明日、バーベキューで肉を食べることになっているので、今晩は肉料理はないと思っていたからです。
「まず、カオル。お父さんに謝っておいた方がいいわよ」
 お母さんに促されて、カオルは明日には玲子と七坂神社に行かなければならなくなったことを話しました。
「それで、今晩はすき焼きになった理由がわかったよ」
 お父さんは、そう言いながら、いつものように鍋奉行になって、しきりだしていました。

 すき焼きには、関東風と関西風がありますが、お父さんがやる場合は関西風です。ラード(ブタの油)を鍋のそこにぬり、そこに牛肉を入れて焼き、表面が白くなった頃、砂糖,醤油を入れて、味を作ります。その後にしいたけ、除虫菊、しらたき、豆腐を入れて、さらに火を強めました。やがて煮だつ音がし始めたら、お父さんはコンロのつまみをまわし、弱火にするのでした。
「そろそろいいぞ」
 カオルたちは小皿に玉子をといて待っていましたので、お父さんの合図の言葉を聞くと箸を鍋にいれて、具を取り始めました。
 明日は肉を食べることができないと思っているお父さんは、たくさん牛肉をとって、ほおばりだしています。
「お父さん、お肉ばかりとってずるい。もうお肉なくなってしまったよ」と、カオルは不満の声をあげました。
「そうだな。明日は食べられないと思うと、つい食べ過ぎてしまったようだ」
「しょうがないな。玉ねぎでも食べるかな」と、カオルが言ってしまいました。
「母さん、そうだ。鶏肉や豚肉も、持ってきてよ。それを鍋に入れよう」
「そうですね。お父さん、明日使わなければ、お肉が無駄になってしまいますものね」
 お母さんは笑いながら、冷蔵庫から鶏肉や豚肉の入ったパックを持ってきて、それをあけて、鍋の中に入れていました。
「これじゃすき焼きではなくなるよ」と、思わずカオルは声をあげました。
「だし汁に味 が付いているから、他の肉を入れても、ちゃんと食べることができるよ」
 そう言ったお父さんはすまし顔になっています。
「でも、お父さん、何でも入れたら、寄せ鍋になってしまうよ」
「そうだな。こんなことでも学べることがある」
「なによ?」
「事態が変われば、臨機応変に対応すればいいんだよ」と言って、お父さんは笑っていました。

 でも、この後、いろんなことが起こり出し、お父さんのアドバイスは意味を持ってしまいました。

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