カオル、白魔女になります!

矢野 零時

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竜人をさがして!

プロローグ

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 高島玲子のおばあちゃん、真弓は双葉山にある七坂神社にやってきました。
 山の中にあるせいか、宮司ぐうじもいないやしろがあるだけの神社です。でも、老人クラブの間では、ここで祈願をしたら、病気がたちどころに良くなったという人たちがいたのです。
 ここに来たのは、真弓にとっては孫、玲子にとってはお兄ちゃんである正人が病気にかかっているので、それを直して欲しいと思ったからでした。
 真弓が社の前にたって、二拍二礼一拍を終えた直後でした。すぐに社の中から男の子がでてきたのです。
 驚いた真弓は口をぽかんと開けて、男の子をみつめました。
 男の子は街の中を歩いている少年のようです。年は玲子より上ですが、高校生になったばかりのように見えました。
 男の子はニコニコ笑いながら「白血病なんだね。いい薬があるから、持ってきてあげるよ」と言ったのです。
「私の思ったことが聞こえたのかい?」
 真弓が男の子を見つめると頭に鹿のような角が二つ見えたのです。それは竜の角のようにも見えました。でも、すぐにひっこめたせいか、見えなくなっていました。

「待っていてね。今、持ってきてあげるよ」
「はい」と、真弓は言うと、男の人は再び社の中に戻っていきました。
 真弓は待ち続けました。でも、夕暮れになり、薄暗くなっても、男の子は戻ってこなかったのです。
 そこで、真弓は社の中に入ってみました。
 社の中は、大きな石板が真ん中に立てられているだけです。石板の厚さは十センチはありますが、ただの石のようでした。何度も、その石板の周りをまわり、石板をたたいたり、さすったりしてみました。でも、何も起こりませんし、男の子もでてきはしませんでした。

 次の日、老人クラブで前に七坂神社に行ったことのある八重さんにそのことを話しました。
「間違いないわ。それは竜人さん。あの神社には、時々、竜人が歩いるのよ」
「本当なの? でも、待っていても、男の子はでてきませんでしたよ。夢だったのではないかと思っているんです」
「竜の国に戻った後、何か起きてしまったのかもしれないわ」
「何が、起きたのでしょうか?」
「さあ、それは分からないわね。私も竜の国に行ったことはありませんもの」と言って、八重さんは笑っていました。
 
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