上 下
37 / 57
天空魔人グール

13 隠れ人からの助言

しおりを挟む
 オリバーは左右にはげしく首をふったのです。
「そうじゃないんだ。グールは卵を産んでいたんだ」
「卵ですって?」
「それに気づかなかった俺たちも馬鹿だったんだが、醜いグールが死ぬと、すぐに卵が割れて新たなグールは生まれてしまったのさ。こんどは美しくすぎるグールだよ」
「えっ、それじゃ、何にもならないわね」

「そうだよ。地上に行って子供を連れてこられないと知ると、グールは今度は、ここの住民の子供たちを食べ出したのさ」
「そんな馬鹿な」と、カオルは声をあげていました。

「でも、そのうちに、グールは、このままでは天空の住民がいなくなると気がついたんだ。そこで、グールはね。ふたたび、地上の子供たちを天空に連れてくる方法を考え出したのさ」
「もしかしたら…」
「それは、自分の血を浮草に与えて黒魔女にもなる魔物の植物に変える方法だったのさ」
「魔物の植物?」
「そう。魔物の植物に種を作らせ、それを下の世界にばらまく。地面についても、そばに一人だけになった子供がいないと種は芽を出ない」
「それは、知っているわ」
「その場合、朝日を浴び出すと種は消えてしまう。だが、芽を出せた物は、茎の一部が老婆の姿に変わり近くに来た子供たちを空に向かうように誘うことができるんだよ。誘われた子供たちは老婆に追われて木を登りだし天空まで来てしまう」
「よく知っているわ。だから、私はここにこれたのよ。でも、どうしてグールがそんなことができる力を持てたのかしら?」
「どうやら、悪魔に頼み込んで悪魔から新たな力をもらったそうだよ」
「悪魔に?」
「その代わり、ここは悪魔の領地になっている。だから、他の世界との出入り口は池だけになってしまった。それに、毎月、数人分の子供の命を悪魔にささげることを約束したそうだよ」
「どうして、そんなことを知っているの?」
「宮殿に入って、グールと話をしている女の子たちに話を聞いていたからさ。でも、その子たちも、すぐに食べられてしまったけどね」

「悪魔の保護の元にある魔人を相手にして、あなた方はすごいわね。どうやって、それができたのかしら?」

「どうするって? だんだんと俺たちを捕まえようとする兵士の数は増えているんだ。まずは逃げるしかないよ」
「やっぱり、そうなんだ。私、おばあさん、白魔女のサラから頼まれて、ここの世界に入れるためのドアを作るように言われてきたのよ」
「なんだって、きみは白魔女の仲間なのかい! サラがここに来てくれることになっているのかい?」
「そうよね。サラが直接のりこんでくれるかどうかは分からないけど」

「いろんな白魔女たちが、ここにやってきてグールを相手に戦ってくれた。その時には、俺はできるかぎりの情報を集めてあげたりしていたんだよ。でも、グールの人を魅惑する力の前に、みんな敗れて行ったよ」
 オリバーは悲し気に顔をさげていました。

「ドアノブをつけられるような硬い壁がある所に行きたいのよ。どうすればいいのかしら?」
「ここから見えるだろう。あそこに城がある。そこならば、ドアがつけられると思うよ。でも、あそこまで行くことが難しい」
「でも、行かないとならないわ」
「一つだけ、方法があるかもしれませんよ」とオリバーの隣にすわっていたディックが声をあげました。
「何か、あるの?」
「交代で街の食堂から食べ物を城に届けています。その人たちといっしょに入って行くならば、城の中に入れると思いますよ」
「なるほど、その手があったな」と、オリバーがうなずきました。
 グールの食糧となる子供たちは、グールに食べられるまでの間、いろいろな食物を与えて太らせておくのです。そのために、街の食べ物屋は城の中に食べ物を交代で運ばせられていたのでした。
「ともかく、近くの食べ物屋に行って頼んでみるか?」と言ってオリバーは立ち上がりました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...