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天空魔人グール
13 隠れ人からの助言
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オリバーは左右にはげしく首をふったのです。
「そうじゃないんだ。グールは卵を産んでいたんだ」
「卵ですって?」
「それに気づかなかった俺たちも馬鹿だったんだが、醜いグールが死ぬと、すぐに卵が割れて新たなグールは生まれてしまったのさ。こんどは美しくすぎるグールだよ」
「えっ、それじゃ、何にもならないわね」
「そうだよ。地上に行って子供を連れてこられないと知ると、グールは今度は、ここの住民の子供たちを食べ出したのさ」
「そんな馬鹿な」と、カオルは声をあげていました。
「でも、そのうちに、グールは、このままでは天空の住民がいなくなると気がついたんだ。そこで、グールはね。ふたたび、地上の子供たちを天空に連れてくる方法を考え出したのさ」
「もしかしたら…」
「それは、自分の血を浮草に与えて黒魔女にもなる魔物の植物に変える方法だったのさ」
「魔物の植物?」
「そう。魔物の植物に種を作らせ、それを下の世界にばらまく。地面についても、そばに一人だけになった子供がいないと種は芽を出ない」
「それは、知っているわ」
「その場合、朝日を浴び出すと種は消えてしまう。だが、芽を出せた物は、茎の一部が老婆の姿に変わり近くに来た子供たちを空に向かうように誘うことができるんだよ。誘われた子供たちは老婆に追われて木を登りだし天空まで来てしまう」
「よく知っているわ。だから、私はここにこれたのよ。でも、どうしてグールがそんなことができる力を持てたのかしら?」
「どうやら、悪魔に頼み込んで悪魔から新たな力をもらったそうだよ」
「悪魔に?」
「その代わり、ここは悪魔の領地になっている。だから、他の世界との出入り口は池だけになってしまった。それに、毎月、数人分の子供の命を悪魔にささげることを約束したそうだよ」
「どうして、そんなことを知っているの?」
「宮殿に入って、グールと話をしている女の子たちに話を聞いていたからさ。でも、その子たちも、すぐに食べられてしまったけどね」
「悪魔の保護の元にある魔人を相手にして、あなた方はすごいわね。どうやって、それができたのかしら?」
「どうするって? だんだんと俺たちを捕まえようとする兵士の数は増えているんだ。まずは逃げるしかないよ」
「やっぱり、そうなんだ。私、おばあさん、白魔女のサラから頼まれて、ここの世界に入れるためのドアを作るように言われてきたのよ」
「なんだって、きみは白魔女の仲間なのかい! サラがここに来てくれることになっているのかい?」
「そうよね。サラが直接のりこんでくれるかどうかは分からないけど」
「いろんな白魔女たちが、ここにやってきてグールを相手に戦ってくれた。その時には、俺はできるかぎりの情報を集めてあげたりしていたんだよ。でも、グールの人を魅惑する力の前に、みんな敗れて行ったよ」
オリバーは悲し気に顔をさげていました。
「ドアノブをつけられるような硬い壁がある所に行きたいのよ。どうすればいいのかしら?」
「ここから見えるだろう。あそこに城がある。そこならば、ドアがつけられると思うよ。でも、あそこまで行くことが難しい」
「でも、行かないとならないわ」
「一つだけ、方法があるかもしれませんよ」とオリバーの隣にすわっていたディックが声をあげました。
「何か、あるの?」
「交代で街の食堂から食べ物を城に届けています。その人たちといっしょに入って行くならば、城の中に入れると思いますよ」
「なるほど、その手があったな」と、オリバーがうなずきました。
グールの食糧となる子供たちは、グールに食べられるまでの間、いろいろな食物を与えて太らせておくのです。そのために、街の食べ物屋は城の中に食べ物を交代で運ばせられていたのでした。
「ともかく、近くの食べ物屋に行って頼んでみるか?」と言ってオリバーは立ち上がりました。
「そうじゃないんだ。グールは卵を産んでいたんだ」
「卵ですって?」
「それに気づかなかった俺たちも馬鹿だったんだが、醜いグールが死ぬと、すぐに卵が割れて新たなグールは生まれてしまったのさ。こんどは美しくすぎるグールだよ」
「えっ、それじゃ、何にもならないわね」
「そうだよ。地上に行って子供を連れてこられないと知ると、グールは今度は、ここの住民の子供たちを食べ出したのさ」
「そんな馬鹿な」と、カオルは声をあげていました。
「でも、そのうちに、グールは、このままでは天空の住民がいなくなると気がついたんだ。そこで、グールはね。ふたたび、地上の子供たちを天空に連れてくる方法を考え出したのさ」
「もしかしたら…」
「それは、自分の血を浮草に与えて黒魔女にもなる魔物の植物に変える方法だったのさ」
「魔物の植物?」
「そう。魔物の植物に種を作らせ、それを下の世界にばらまく。地面についても、そばに一人だけになった子供がいないと種は芽を出ない」
「それは、知っているわ」
「その場合、朝日を浴び出すと種は消えてしまう。だが、芽を出せた物は、茎の一部が老婆の姿に変わり近くに来た子供たちを空に向かうように誘うことができるんだよ。誘われた子供たちは老婆に追われて木を登りだし天空まで来てしまう」
「よく知っているわ。だから、私はここにこれたのよ。でも、どうしてグールがそんなことができる力を持てたのかしら?」
「どうやら、悪魔に頼み込んで悪魔から新たな力をもらったそうだよ」
「悪魔に?」
「その代わり、ここは悪魔の領地になっている。だから、他の世界との出入り口は池だけになってしまった。それに、毎月、数人分の子供の命を悪魔にささげることを約束したそうだよ」
「どうして、そんなことを知っているの?」
「宮殿に入って、グールと話をしている女の子たちに話を聞いていたからさ。でも、その子たちも、すぐに食べられてしまったけどね」
「悪魔の保護の元にある魔人を相手にして、あなた方はすごいわね。どうやって、それができたのかしら?」
「どうするって? だんだんと俺たちを捕まえようとする兵士の数は増えているんだ。まずは逃げるしかないよ」
「やっぱり、そうなんだ。私、おばあさん、白魔女のサラから頼まれて、ここの世界に入れるためのドアを作るように言われてきたのよ」
「なんだって、きみは白魔女の仲間なのかい! サラがここに来てくれることになっているのかい?」
「そうよね。サラが直接のりこんでくれるかどうかは分からないけど」
「いろんな白魔女たちが、ここにやってきてグールを相手に戦ってくれた。その時には、俺はできるかぎりの情報を集めてあげたりしていたんだよ。でも、グールの人を魅惑する力の前に、みんな敗れて行ったよ」
オリバーは悲し気に顔をさげていました。
「ドアノブをつけられるような硬い壁がある所に行きたいのよ。どうすればいいのかしら?」
「ここから見えるだろう。あそこに城がある。そこならば、ドアがつけられると思うよ。でも、あそこまで行くことが難しい」
「でも、行かないとならないわ」
「一つだけ、方法があるかもしれませんよ」とオリバーの隣にすわっていたディックが声をあげました。
「何か、あるの?」
「交代で街の食堂から食べ物を城に届けています。その人たちといっしょに入って行くならば、城の中に入れると思いますよ」
「なるほど、その手があったな」と、オリバーがうなずきました。
グールの食糧となる子供たちは、グールに食べられるまでの間、いろいろな食物を与えて太らせておくのです。そのために、街の食べ物屋は城の中に食べ物を交代で運ばせられていたのでした。
「ともかく、近くの食べ物屋に行って頼んでみるか?」と言ってオリバーは立ち上がりました。
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