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天空魔人グール

9 おばあさんに相談

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 おばあさんは、つばの広い麦わら帽子をかぶって待っていました。
 カオルの顔を見ると、すぐに「さあ、出かけようか。連れて行きたいところがあるんだろう」と、おばあさんは言って、自分の家の門まで出てきてくれました。
「たまには体を動かさないと、なまってしまうからね」と言って、おばあさんは笑っています。
 並んで歩きながら、カオルはおばあさんに珠代や石山良子が行方不明になった話をしました。


 やがて、カオルは、珠代がいなくなったと思える場所、おわん森におばあさんを連れて行きました。
「おばあさん、珠代ちゃんの靴がここに落ちていたのよ」
「靴が落ちていた場所から少し離れたここに草がない。最近できたものだし、それも丸く大木一本ぐらいの大きさがあるね」
 おばあさんは、腰を落として、草のなくなった地面の土を手でつまんで見ていました。
「これは死んだ土だね。土の精霊がうけつけていない」

 おばあさんは体を起こし、雲一つない青い空を見ながら、目を細めました。
「ここから、行くことができるとしたら空しかないね」
 おばあさんがそう言うので、カオルも空を見上げました。

 次に、カオルは、おばあさんをため池の岸辺に連れて行きました。
 石山良子が頭につけていたと思えるリボンが落ちていた所を、カオルは指でさして見せました。
 そこは、砂だけがある場所でした。でも、少しほられて白くなっている所がありました。白くなっている所は、やはり丸く大きな木の後のようだったのです。

 ここでも、おばあさんは、顔をあげて空をにらみつけていました。
「魔物の種を育てた者がいたようだね」
「魔物の種?」
「そのためには、魔物の種が埋められることが必要なんだが」
「ここにいたのは、石山良子ちゃんよ。でも、良子ちゃんだって、そんなことをしないと思うわ?」
「種は空からふってきたのに違いない。その種が良子に埋めさせた」
「じゃ、種は話ができるのかしら? でも、良子ちゃんは空に昇りたいなんて言うわけがないわ」
「いや、魔物の種が、埋めた者が木に登りたくなるように誘ったのだ」

「でも、木の跡なんか、どこにも残っていないわ」と言いながら、カオルは不安げに岸辺の白いくぼちを見つめました。
「良子が空についた後は、木は根本から溶けて消えてしまったんだろう」

「空? 空のどこに良子ちゃんや珠代ちゃんがいるのよ」
 空を見上げながら、カオルは声を大きくしていました。
「魔物の種から生まれた木はね。間違いなく、異世界である天空に連れて行くことができる。いや、魔物の種からできた木を登って行かなければ、そこには行けないのさ」

「じゃ、おばあさんも魔物の種から生まれた木を登って行けば、天空に行けるのね?」
「その通りじゃ。だが、そんな木で登って行く気はないよ」
「えっ、どうして?」
「それはね。天空がどんな世界なのか、知っているからさ」
「おばあさんは、天空を知っているの?」

「天空は、カオルたちが見ている空ではないよ。異世界なのさ」
「異世界?」
「私と同等の力のある白魔女で、そこに行った者がいたんじゃ。だが、天空にはグールという魔人がいる。その魔人を見ていると、魔人に心をつかまれ、魅惑されてしまう。そして、魅惑された者は魔人の言うことをなんでも聴いてしまうようになる。能力のある白魔女が心を支配されたら、どんな恐ろしいことになってしまうか、分かるだろう。だから、心を支配されそうになった白魔女は、そのことを他の白魔女たちに知らせると同時に自分の命を消し去っていた。わしが命を失わずに魔人の手先になってしまったらどうなる。それで生れるリスクはものすごく大きな物になってしまう」
 おばあさんは暗い顔をしていました。
「それに、シズカ王国にいつオードリがまたやってくるかわからない。オードリが来たら、私は戦かわなければならないからね。だから、私の仲間たちを簡単に動かすことも難しい状況だよ」

「じゃ、おばあさん、私は、私はどうすればいいのかしら?」
「そうだね。カオルには、無理をしてもらうことになるね」
「何をすればいいのかしら?」
「まず天空に行ってもらう。天空に行ったら、そこにある建物の壁にこれを押しつけてドアを作り、そのドアを開けてもらいたいんだよ」
 おばあさんは、いつの間にか手にドアノブを握っていて、それをカオルに手渡しました。

「わかったわ。これを天空に持っていくのね?」
「そうじゃ。そのためには、魔物の種を見つけ、それを埋めて木を育て、それを登らなければならない」

「わかりました。まず魔物の種を見つけるのね。でも、どうすればいいのかしら?」
「魔物の種は子供をさらいたがっている。そのためには、誰にも会わない所で子供が一人で歩いている必要がある。そこに魔物の種は空からおりてくる」
「なるほど、わかりました。明日から、私、人があまりいない所を一人で歩いてみます」
「そうだね。お願いするしかないね」

 カオルがうなずくと、おばあさんはカオルの手をしっかりと握ってくれました。すると、風が吹いてきて、二人は舞い上がり、カオルの家の前に飛んで来ていました。

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