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天空魔人グール

2 夏休みの宿題

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 先生からもらってきた一覧表を、カオルは自分の部屋の壁にはりつけました。終えた宿題は、赤鉛筆で消していくつもりです。
 今日もお父さんは朝早く会社に行くために車で出勤していきましたし、家のローンに充てるため、お母さんも町並みの中にあるコンビニで働きだしていました。

 カオルがすることは決まっています。
 夏休みの宿題をすることです。
 まずは学習ドリルから手をつけることを考えてカオルは机にむかいました。
 国語の漢字書き取りは、ちゃんと覚えていない時には、国語辞書を出してきて漢字の音でひけば漢字を見つけることができます。でも、だんだん覚えていない漢字が多くなり、漢字を書いている時間より、漢字を辞書で調べている時間の方が多くなってきました。
 さすがに、あきてきて「ふう」とカオルはため息をつきました。わからない漢字が多いと自信がなくなってきます。

 そこで、カオルはいいことを思いつきました。一度イスから立ち上がり、本棚に飾っていたぬいぐるみのクマを手にとると、机の上におきました。
「クマさん、踊って」
 カオルが声をかけると、ぬいぐるみのクマはクルクルとまわって踊り出しました。これができるのはカオルが魔法を使えるからです。自分に特別な力を持っていると思うと勇気がわいてきます。
「応援して」と、カオルが頼みました。
「がんばれ。がんばれ。カオル!」と、クマは声をあげてくれました。
 これで、やる気がでてきました。

 だんだん辞書を引くことにも慣れてきて、漢字書き取りだけは終えることができました。
 やがて昼がきたので、お母さんが作ってくれた得意のお握り、カツオブシと鮭二つをカフェオレを飲みながら食べました。

 この後、カオルは魔法の杖とホウキをもって家から出かけました。
 先生の家に行った帰りにみつけた神社に行くのです。そこは周りに人がいなく、まばらな木々がはえているだけの所でした。
 先生のお父さんに会ったことでカオルは魔法使いとしての修業もしなければならないことを思い出しました。
 そこで、カオルのお父さんやお母さんが家にいない時、午後二時から午後三時の間、神社の境内に行って魔法使いとしての訓練をすることにしました。でも、雨が降る日や特別に用事のある日はしないつもりです。
 
 初日の今日はカオルは、ころがっている石に念じて飛ばし木々の幹にあてました。
 さらにホウキにまたがり、空を飛ぶ練習もやってみました。でも、カオルは自分の腰の高さより上にはあがれないのです。でも、その高さで飛ぶことができるようになっていました。  
 カオルは、ホウキにのって飛んでいるつもりなのですが、カオルを見た他の人は変わった自転車に乗って、それを走らせているようにしか見えなかったのです。

 魔法使いとしての訓練を終えて戻ると、今度はベランダにすわり、絵を描くことにしました。
 せっかく庭のある家に住むことができたのですから、庭に咲いた花を描くことにしたのです。それに決めさせたのは、ユリの花にキアゲハやカラスアゲハが飛んできていたからです。絵のうまい下手に関わらず描いてみたくなる情景です。

 それに絵を描いていれば、おばあさんの家の方を見続けていられるので、もしおばあさんが自分の家に帰ってきたらすぐにわかります。
 改めて白魔女になれたお礼を言いたいと思っていましたし、オーロラ姫がどうなっているのかも聞きたいところです。それに、おばあさんが家に戻っていたら、お父さんとお母さんに近所に住むことになったご挨拶に行ってもらわなければならないと思っていたのです。
 でも、おばあさんは忙しいのでしょうか? 前のように庭に姿をあらわしてはくれません。

 夕食時に、お父さんとお母さんを前にして、読書感想文を書かなければならないのに宮沢賢治の本を持っていないことを話しました。
「そんなことかい。お父さんが会社近くの本屋さんで買ってきてあげるよ。どんな本を読みたいんだい?」
 どれを読んだらいいのか、カオルはまだ決めてはいません。思わず、首を傾げてしまいました。
「じゃ、図書館に行って、本を手に取って見たらいいね。そうすれば、読みたい本を決められる」
「ここにも図書館はあるのかしら?」
「まず、学校には図書室があるだろう。春香町にだって町立の図書館ぐらいあるはずだよ。場所を調べておいてあげる。そうだ、次の日曜日にそこに行ってみよう。カードを作っておくと、いつでも図書館に行って本を借りることができるよ」
 カオルはうなずいていました。

 日曜日がくるまでの間、カオルは学習ドリルの算数問題をやりました。その後、絵の作成を続け、完成に近づけることができました。
 時々、家を出ては、田舎道を歩いて見たりしていました。その時は魔法の訓練のためではなく自由研究のテーマをみつけるためです。でも、先生の言うような昆虫採集をする気にはなれませんでした。
 
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