カオル、白魔女になります!

矢野 零時

文字の大きさ
上 下
10 / 57
イバラの森大戦

10 エルザ 水の精霊使い

しおりを挟む
 カオルは背中にホウキをせおい、手に魔法の杖を手に持ってシンドの部屋からでました。その後、すぐに水色のドアを開けてエルザの部屋に入って行きました。
 すでに、多くの生徒たちは集まっていました。
 エルザは、青い長髪をゆらしながら生徒たちをやさしい笑顔で見まわしました。
「生きている物にとって水は大切な物です。ですから、ここで学んで身につければ、たくさんの生き物たちを助けることができますよ」
 少し緊張の取れたカオルは、トムと同じく動物から人に変わった者たちがたくさん参加していることに気がつきました。人と同じ姿をしていますが、どこか違っているところがあるのでわかります。たとえば、耳がとがっていたり、鼻の先が少し黒かったり、中には尾っぽがついている者もいました。エルザ以外にも動物から人に変える魔法を使う者たちがいるのでしょう。
「ここで学ぶことは二つです。まず、水を生み出すこと。次に、水をいろいろな形に変えることの二つです」
 そう言ったエルザは屈みこみ、地面の上で手を振ってこぶしを作りました。体を起こし、こぶしを開くと、エルザの手の平に水がのっていたのでした。
「もちろん、大切なことは、ここに水があると念じることです。やってみてください」
 エルザに言われて、生徒たちは腰をおろして手を地面の上をなぜるようにしてから、握っていた手を開いてみました。やはり生徒みんなの手の平の上に水はのりませんでした。
 でもレイモンドの手の平には水がのっていました。
「本当の水なの?」とカオルは悔しそうにレイモンドに聞きました。
「なめてみればわかるよ」
 レイモンドがそう言ったので、カオルはレイモンドの手に顔を近づけて、なめてみました。甘くも、しょっぱくもありません。冷たくて美味しい水でした。
「でも、どうして、私にできないのかしら?」
「一度でできる人は、そんなにいないと思いますよ。でも、得意、不得意はあるかもしれませんが」
「じゃ、この魔法は私に向いていないのかしら?」
 考えてみれば、カオルが小さい頃、近くの川原に行って転び、川の水に流されたことがあったのです。その時に、お父さんが水の中に入ってきて、助けてくれたからよかったのですが、そうでなければ、ここにいることなどできなかったのでした。その時の記憶がよみがってくるからなのでしょうか、今でも水が怖いのです。
 他の生徒たちは次から次へと手の平に水をのせることに成功をしていきました。

「それでは、次にすすませていただけますか?」
 エルザはカオルの手に何ものっていないのを見ると、そばにやってきました。まずエルザは自分の手の平の上に水を出し、その水をカオルの手の平の上にのせてくれたのでした。
「これで準備はできたようですね。その水を温めて蒸発をさせて、手の上に雲を作ってください」
 エルザが助けてくれたのですから、雲作りには必ず成功をさせたいと思い、カオルは必死に念じました。
 そのお陰でしょうか?
 他のみんなと同じに手の平の上に小さな綿のような雲を作ることができました。
「じゃ、次はその雲を霧にして手の上にただよわせてみてください」
 エルザに言われて、今度もカオルは必死に念じました。
 すると、手の平の上に白い霧が湯気のようにでき、ゆらいでいました。
「じゃ、再び 雲に戻してください」
 これにも、カオルは成功をしました。
「これが最後です。雨にして、手の平にふらしてください」
 カオルの雲も黒雲に変わり、雲の下から雨をふらしていました。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

昨日の敵は今日のパパ!

波湖 真
児童書・童話
アンジュは、途方に暮れていた。 画家のママは行方不明で、慣れない街に一人になってしまったのだ。 迷子になって助けてくれたのは騎士団のおじさんだった。 親切なおじさんに面倒を見てもらっているうちに、何故かこの国の公爵様の娘にされてしまった。 私、そんなの困ります!! アンジュの気持ちを取り残したまま、公爵家に引き取られ、そこで会ったのは超不機嫌で冷たく、意地悪な人だったのだ。 家にも帰れず、公爵様には嫌われて、泣きたいのをグッと我慢する。 そう、画家のママが戻って来るまでは、ここで頑張るしかない! アンジュは、なんとか公爵家で生きていけるのか? どうせなら楽しく過ごしたい! そんな元気でちゃっかりした女の子の物語が始まります。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

処理中です...