上 下
4 / 57
イバラの森大戦

4 不思議なおばあさん 

しおりを挟む
 隣の庭にもきれいな花が咲いています。それは大きな花でダリアやヒマワリでした。カオルが見とれていると、隣の白い家から、白いドレスをきたおばあさんが出てきました。おばあさんの肌は色白で、ほりの深い顔をしています。頭の髪は真っ白でしたが、頭の後ろに丸めてかんざしでとめていました。顔の作りを見ていると、どこか外国の人の血が混じっているように思えました。
 おばあさんは、細いホースを手にとり庭の花たちに水をかけだしました。ホースの先には小さな穴がたくさんあるじゃ口がついています。そのじゃ口から水が細くシャワーのようにふき出し庭に虹がかかっていたのでした。 
 虹にひかれるようにカオルはおばあさんに近づきました。
「こんにちは。おばあさん」と、カオルは声をかけてから、まだ昼前なので、おはようございますと、言ったほうがよかったのかなと思いました。
「おや、こんにちは。お隣さんは変わったようだね」
「はい、昨日、引っ越してきたばかりなんです。私は加藤カオル」
「そうかい、そうかい。わたしはサラ。仲良くしてくださいね」と言って、おばあさんは笑っていました。
「おばあさん、窓から見えていたぬいぐるみのクマさん、動いていたようでしたけど、あれは機械仕掛けになっているんですか?」
「ほう、クマが動いたのかい?」
 おばあさんは、カオルをのぞき込むように見つめ出していました。
 あまり、しげしげと見つめられるので、思わずカオルは顔を赤くしてしまいました。 
「どうだい。陽にあたってばかりも疲れるからね。のどもかわいただろう。おやつの時間にでもしないかい。それに、ちょうど美味しいケーキがあるんだよ」
「本当ですか?」
「じゃ、そのさくが壊れている所から、こちらに入っておいでよ」
 先ほど見た時には、竹さくに壊れた所などなかったはずです。でも、たしかに壊れてすき間ができていましたので、スカートをひっかけずに通ることができました。カオルが隣の庭に入るとダリアの強い匂いがしてきました。
 おばあさんの家に近づくと庭に向かってドアがついていました。でも、先ほどまでは、カオルにはそのドアは見えていなかったのです。そのドアも白い色をしていましたので、見えにくいだけだったのかもしれません。
 おばあさんはドアを開けて、「さあ、どうぞ」と言ってくれましたので、カオルはおばあさんの後について家の中に入りました。
 家の中へは、外国風な家でしたので、サンダルを脱がなくてよかったのです。
 家の真ん中には螺旋階段があって、そこだけ吹き抜けになっています。その階段からは二階の部屋にいけるようになっていました。下からカオルがのぞくと、三階もあるように見えました。
 一階は仕切りがなく、ひとつの部屋になっていました。東側の壁は白くしっくいが塗ってあるためか少しでこぼこになっていました。また、西側はキッチンになっていて、そこにはオーブンがおかれ、食器入れや冷蔵庫も並んでいました。さらに、キッチンには、丸い食卓テーブルがおかれ、テーブルをはさむようにイスが二つおかれていました。
「まあ、おすわりなさい」
 カオルはうなずきながら、イスの一つに腰をおろしました。おばあさんは、チューリップのような形のグラスを選び出し、その二つを食卓テーブルの上におきました。
「サイダーはおすき?」
 カオルはうなずきました。
「こんな日はやっぱりサイダーだよね」
 おばあさんは、冷蔵庫からサイダーの入ったびんを出すと、二つのグラスにあわがはじける音をたてさせながら、すきとおった液体をついでくれました。
 カオルはのどがかいていたので、すぐにグラスを手に取ると冷たいサイダーを喉に流し込んでいました。おばあさんは笑みを浮かべながら、カオルが空にしたグラスに瓶からサイダーをついでいました。
 おばあさんは、再び冷蔵庫を開けて、中から紙の小箱を出してきて、食卓テーブルの上におきました。箱を開けて、おばあさんは中をカオルに見せました。中に赤いイチゴがのったショートケーキが四つ入っていたのです。
「わあ、ショートケーキ」
 思わず、カオルは声をあげました。おばあさんは、小皿の上にトンクで二つのショートケーキをのせフォークをそえるとカオルの前においてくれました。
「食べてくださいね」
「いただきます」
 声をあげると、すぐにカオルは食べ出しました。美味しいケーキです。ほおばり過ぎて途中で喉をつまらしてしまい、あわててサイダーを飲んでケーキを胃に流し込みました。食べ始めてから食べ終わるまで十分はかかりませんでした。食べ終わると、カオルは思わずホ~と声を出しました。
「どうやら、満足をしてくれたようだね」
 カオルはうなずいてみせました。
「そうだね。カオルには、能力があると思うよ」
「能力?」と言って、カオルは思わず首を右にかしげました。
「すこし、待っておいでよ」
 おばあさんは、イスから立ちあがりクルリと後ろを向くと螺旋階段をのぼりだしました。
 おばあさんが何をするつもりなのか、まるで分からないカオルは、階段をあがるおばあさんを見つめ続けました。でも、おばあさんが二階にあがるとその姿がすぐに見えなくなっていました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

処理中です...