王子だって、一体どうなるのか?物語

矢野 零時

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第13話ダンジョン突入 1 会議は踊る

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 犬顏の獣人は、医者サムソンのおかげで、どんどんと人に近づいていった。名前も村人の時の名前を思い出すことできた。その名前は、ソラン。前に住んでいた村はハチカタ村だった。
 忠司が顏を見に行くとソランは、「王子様、命を助けていただいたのだから、そのお礼をさせてもらいたい。それにグールを倒すことができれば、国を元に戻すことができ、私も生まれた村に帰ことができる」と言っていた。
 ソランは、すっかりまともになっている。これはサムソンの精神的なケアーによるものだったのかもしれない。

 ともかく情報が欲しい。忠司はさらに聞いてみた。
「私のようなしたっぱの兵士に、大事なことを教えてくれませんよ。しかし、耳にできたことを思い出しますと、ダンジョンの入口は地下ではなく、うんと高い所にあるそうですよ」
「高い所?」
「つまり、たんなる洞窟ではない。そこに信じられない怪物がいて、臭いにおいがすると聞いております。ともかく、私ができることは行動あるのみです」

 そう言った後、ソランは親衛隊の若い者をつれて、山の中に入ってダンジョン探しを続けてくれたのだ。そして、ついに彼は大山の頂上に三角形の岩があって、そこに穴が掘られているのを見つけた。穴は、奥に入れば洞穴になっていた。その中に入ったソランは鼻を鳴らしてにおいをかぎ「臭い生き物のにおいがする。ここに間違いはない」と言っていた。
 そのことを彼は隠れ里に戻るとすぐに親衛隊長ルソーに伝えた。ルソーは忠司の部屋に飛び込んでいった。
「王子様、ついにダンジョンが見つかりましたぞ。ダンジョンにどのように入っていくか、さっそく会議を開いてくだされ」
「分かった。開こう。役職の者たちを集めてよ」
 晩餐会で使っている大広間に、役職者たちが集められた。忠司の右前には親衛隊長のルソーが、花音は忠司の左前にすわっていた。
 まず、ソランがダンジョン発見の経過をふたたび話した。
「なるほど、ダンジョンには、まず魔物がいると思って対処しなければなりませんな」と、ルソーが腕を組んでいる。
「まったく、そのとおりじゃ」、「予備隊も含めて、4部隊はダンジョンそばに待機させなくてはならないぞ」と、他の親衛隊員たちが言っていた。
「それだけの人数を待機させると食べ物や水も運ばなければなりませんな」と、フロイトが言葉をそえる。

 すると、花音が手をあげた。
「兵隊を集めるのもいいけれど、ダンジョンの中は暗いわ。明るくしないと兵隊をいくら連れて行ってもやられてしまうわよ」
「そうじゃ、その通りじゃ、明るくするにはどうすればいいかのう?」
「ロウソクを持って行き、ダンジョンの中に置いておく」
「それはいい。だが、ダンジョンは長くて深いぞ」
「ハチがつくった蜜蝋を集めさせてロウソクをもっと作らせよう」とルソーが言い、忠司は「明かり付け隊を組織して配置する必要があるな」と言っていた。




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