王子だって、一体どうなるのか?物語

矢野 零時

文字の大きさ
上 下
34 / 40

第13話ダンジョン突入 1 会議は踊る

しおりを挟む
 犬顏の獣人は、医者サムソンのおかげで、どんどんと人に近づいていった。名前も村人の時の名前を思い出すことできた。その名前は、ソラン。前に住んでいた村はハチカタ村だった。
 忠司が顏を見に行くとソランは、「王子様、命を助けていただいたのだから、そのお礼をさせてもらいたい。それにグールを倒すことができれば、国を元に戻すことができ、私も生まれた村に帰ことができる」と言っていた。
 ソランは、すっかりまともになっている。これはサムソンの精神的なケアーによるものだったのかもしれない。

 ともかく情報が欲しい。忠司はさらに聞いてみた。
「私のようなしたっぱの兵士に、大事なことを教えてくれませんよ。しかし、耳にできたことを思い出しますと、ダンジョンの入口は地下ではなく、うんと高い所にあるそうですよ」
「高い所?」
「つまり、たんなる洞窟ではない。そこに信じられない怪物がいて、臭いにおいがすると聞いております。ともかく、私ができることは行動あるのみです」

 そう言った後、ソランは親衛隊の若い者をつれて、山の中に入ってダンジョン探しを続けてくれたのだ。そして、ついに彼は大山の頂上に三角形の岩があって、そこに穴が掘られているのを見つけた。穴は、奥に入れば洞穴になっていた。その中に入ったソランは鼻を鳴らしてにおいをかぎ「臭い生き物のにおいがする。ここに間違いはない」と言っていた。
 そのことを彼は隠れ里に戻るとすぐに親衛隊長ルソーに伝えた。ルソーは忠司の部屋に飛び込んでいった。
「王子様、ついにダンジョンが見つかりましたぞ。ダンジョンにどのように入っていくか、さっそく会議を開いてくだされ」
「分かった。開こう。役職の者たちを集めてよ」
 晩餐会で使っている大広間に、役職者たちが集められた。忠司の右前には親衛隊長のルソーが、花音は忠司の左前にすわっていた。
 まず、ソランがダンジョン発見の経過をふたたび話した。
「なるほど、ダンジョンには、まず魔物がいると思って対処しなければなりませんな」と、ルソーが腕を組んでいる。
「まったく、そのとおりじゃ」、「予備隊も含めて、4部隊はダンジョンそばに待機させなくてはならないぞ」と、他の親衛隊員たちが言っていた。
「それだけの人数を待機させると食べ物や水も運ばなければなりませんな」と、フロイトが言葉をそえる。

 すると、花音が手をあげた。
「兵隊を集めるのもいいけれど、ダンジョンの中は暗いわ。明るくしないと兵隊をいくら連れて行ってもやられてしまうわよ」
「そうじゃ、その通りじゃ、明るくするにはどうすればいいかのう?」
「ロウソクを持って行き、ダンジョンの中に置いておく」
「それはいい。だが、ダンジョンは長くて深いぞ」
「ハチがつくった蜜蝋を集めさせてロウソクをもっと作らせよう」とルソーが言い、忠司は「明かり付け隊を組織して配置する必要があるな」と言っていた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

はずれ職である魔法戦士に転生した僕はなぜかクリティカルヒットを出しまくるのでとりあえず異世界で無双します!

闇夜
ファンタジー
 前世での事故により死んでしまった主人公は、女神ハーティの情けにより、彼女が造った世界「フルスティア」に転生することになった。  どんな人生が待っているのかとワクワクして目覚めたら、なぜか荒野に捨てられていた…。  偶然通りかかった神父に拾われ、ワークとして生きることになった。ワークは職業適正の儀式でこの世界では「はずれ職」である魔法戦士の適正をもらい、村のものから馬鹿にされていた。  しかし彼は転生ボーナスにより、相手に必ずクリティカルダメージを与えることができるスキルを持っていたため、暇があれば魔物たちを狩りまくっていた。  いつものようにダンジョンで魔物を倒していたある日、隠し部屋を見つけて宝箱に入っていた宝石を気に入ったワークはその石を持って帰ることにした。石を拾ったことにより、ワークの運命は大きく動き出す。  

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...