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第15話父を発見
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明かり隊が岩壁にロウソクをつけなくていいくらいに、明るくなっていた。それは岩壁にはえたヒカリゴケが光をはなっているからだった。
明るい洞窟を歩いて行くと、まるで舞踊会の会場のように、大広間と思える場所へでた。だが、ダンスをしている者など誰もいない。あるのは大きな鳥篭と思える物が真ん中に置かれているだけだ。
その篭の中に、頭髪をもじゃもじゃにさせ、顎髭も伸ばし放題の男がいた。もちろん、忠司が始めてみる顔だ。
「サルタンか!」
篭の中の男が忠司に声をかけてきた。始めは誰のことかと迷ってしまい、思わず後ろを向いてしまった。すると、後ろにいた親衛隊が声をかけてよこした。
「王子、リチャード王でございます」
サルタン、そうか、俺のことだった。
「お父さん。俺がサルタンです」
「りっぱになってくれたな」
リチャード王は泣き出していた。忠司が篭に駆け寄ろうとした。
だが、それはできなかった。篭の後ろから、黒い犬が現れたからだ。篭はすけた鉄柵でできていたので、後ろが見えていたはずだ。どうやら、この犬はカメレオンのように周りと同じ色に変えることができるのだ。そんな犬はゆっくりと篭の前に立っていた。
だが、並みの大きさではない。高さは馬ぐらいはあり、頭が三つついていた。そして、その頭は胴体とは長い首でつながっていたのだ。
「なんだ。この犬は」と、忠司は叫んだ。
「ケルベロスですよ。冥府の番犬」と、親衛隊長ルソーが教えてくれた。さすがに、花音もクモでこりたのか、自分から突進をしようとはしない。すぐに隊長の後ろに隠れていた。
そう言われれば、ギリシャ神話の中にこんな犬が出てきたと思う。
「でも、どうして、そんな犬がここにいるんだ」
「グールが子犬をもらってきて、育てたということですよ」
「一体誰からもらってきたんだ」
「王子様、それは私も知りませんよ」
そんな時に、へラの声が聞こえてきた。
(サルタン、よくここまで来てくれましたわね)
「へラ、あなたはどこにいるのですか?」
(私は篭になっているのよ。篭になっていれば、リチャード王を守ることができるわ)
「えっ、そうなんだ。へラが父を守り続けてくれたんだ」
{ケルベロスは、三つの頭を持っているから、どの頭かが必ず目覚めていて、篭を壊そうとして噛みついて来る。だから、私は篭が壊れないように修復の願いをかけ続けているのよ}
「この犬は、じゃ眠ることはないんだ」
(そうなの。私も休むことができないわ。集中をして篭を補修しなければならないのよ)
「俺が一番前にいる頭を狙って熱線を放ってみるよ」
(私は、頭の一つを押さえることができるわ)
「問題はもう一つの頭だ」
「サルタンよ。悩んでおるな。その頭とは、わしは戦うことができるぞ」
そう言った父は腰にさげていた剣を抜いていた。
もう無駄に考えている時間はない。
「わかりました。お父さん」
忠司は剣を構えると、真正面に見える犬の頭に光線を発射した。同時に篭の鉄柵がなくなると頭の一つが父を襲っていた。父は剣を振って、その頭に傷をおわせた。
ヘラは篭から羽の生えた妖精の姿になり残った頭と戦っていた。
忠司はヘラの姿を初めて見ることできた。だが、へラを見たことで驚いている暇はない。
やはり、一番最初に頭を犬の体から切り離したのは、オリハルコンの剣をもつ忠司だった。喉元を狙って放った光は顎を切り裂き、首から頭を切り落としていた。
「お父さん、離れてください」
「おう、わかった」
リチャード王はすばやく後ろに飛んだ。すぐに忠司は父が戦っていた頭にオリハルコンの剣を向け光を発した。光は強い光線となって、頭の半分を溶かしていた。続けて、忠司はその下にある首に向かって光を発した。光は首を切断し、二つめの頭も岩の上に転げ落ちていった。
後は、ヘラが戦っている頭だけだ。その頭はヘラが魔法の杖の力で何度もたたいているので、変形をし始めていた。
「ヘラ、どいてよ」
忠司の言葉に、ヘラは羽ばたき、高く舞い上がった。そのすきに、忠司はオリハルコンの剣を首に向け光を放った。光は長剣のように伸びて首を焼き切り、最後の頭をも切り落としていった。
やがて、ケルベロスは倒れて大きな音をたてていた。
ついに、グールを倒し父を食い殺そうとしたケルべロスもやつけることができた。
忠司はリチャード王と見つめ合った。髪も髭も伸びた顔は村長の家で見た絵とはまるで違っていた。だが、泣き出したその目は、間違いなく肉親の物であった。
へラがふたたび忠司の前に姿を現した。
へラは美しく白いドレスをきて手に銀色の杖をもっていた。だが、その美しい顏にも長い間の疲労のためかやつれが見えていたのだ。それは今まで一睡もぜすに父を守り続けてくれた証だった。
そんなヘラが杖を振った。
すると、父、リチャード王の姿が変わった。
髭は綺麗にそられ、髪は整えられ、頭に王冠がのせられていた。それは、忠司がハルカ村の村長宅で見た絵と同じ姿だった。
「お父さん」と、忠司は声をあげた。
「わが子、サルタンよ」と言って、父は忠司を強く抱きしめていた。
そのそばで、へラは微笑みを浮かべていたが、すぐに眉間にたてじわを作った。
「一匹の子クモだけが逃げ出していったわね。でも、あのクモが他の動物たちから逃れて生きれるかしら。まだわからないわ。今ひと時の平和を楽しむことにいたしましょう」
そう言ったノラは、小さな蝶に変わり、花音のところに飛んでいき、額のわきにとまると、蝶の姿をした髪飾りに変わっていた。
明るい洞窟を歩いて行くと、まるで舞踊会の会場のように、大広間と思える場所へでた。だが、ダンスをしている者など誰もいない。あるのは大きな鳥篭と思える物が真ん中に置かれているだけだ。
その篭の中に、頭髪をもじゃもじゃにさせ、顎髭も伸ばし放題の男がいた。もちろん、忠司が始めてみる顔だ。
「サルタンか!」
篭の中の男が忠司に声をかけてきた。始めは誰のことかと迷ってしまい、思わず後ろを向いてしまった。すると、後ろにいた親衛隊が声をかけてよこした。
「王子、リチャード王でございます」
サルタン、そうか、俺のことだった。
「お父さん。俺がサルタンです」
「りっぱになってくれたな」
リチャード王は泣き出していた。忠司が篭に駆け寄ろうとした。
だが、それはできなかった。篭の後ろから、黒い犬が現れたからだ。篭はすけた鉄柵でできていたので、後ろが見えていたはずだ。どうやら、この犬はカメレオンのように周りと同じ色に変えることができるのだ。そんな犬はゆっくりと篭の前に立っていた。
だが、並みの大きさではない。高さは馬ぐらいはあり、頭が三つついていた。そして、その頭は胴体とは長い首でつながっていたのだ。
「なんだ。この犬は」と、忠司は叫んだ。
「ケルベロスですよ。冥府の番犬」と、親衛隊長ルソーが教えてくれた。さすがに、花音もクモでこりたのか、自分から突進をしようとはしない。すぐに隊長の後ろに隠れていた。
そう言われれば、ギリシャ神話の中にこんな犬が出てきたと思う。
「でも、どうして、そんな犬がここにいるんだ」
「グールが子犬をもらってきて、育てたということですよ」
「一体誰からもらってきたんだ」
「王子様、それは私も知りませんよ」
そんな時に、へラの声が聞こえてきた。
(サルタン、よくここまで来てくれましたわね)
「へラ、あなたはどこにいるのですか?」
(私は篭になっているのよ。篭になっていれば、リチャード王を守ることができるわ)
「えっ、そうなんだ。へラが父を守り続けてくれたんだ」
{ケルベロスは、三つの頭を持っているから、どの頭かが必ず目覚めていて、篭を壊そうとして噛みついて来る。だから、私は篭が壊れないように修復の願いをかけ続けているのよ}
「この犬は、じゃ眠ることはないんだ」
(そうなの。私も休むことができないわ。集中をして篭を補修しなければならないのよ)
「俺が一番前にいる頭を狙って熱線を放ってみるよ」
(私は、頭の一つを押さえることができるわ)
「問題はもう一つの頭だ」
「サルタンよ。悩んでおるな。その頭とは、わしは戦うことができるぞ」
そう言った父は腰にさげていた剣を抜いていた。
もう無駄に考えている時間はない。
「わかりました。お父さん」
忠司は剣を構えると、真正面に見える犬の頭に光線を発射した。同時に篭の鉄柵がなくなると頭の一つが父を襲っていた。父は剣を振って、その頭に傷をおわせた。
ヘラは篭から羽の生えた妖精の姿になり残った頭と戦っていた。
忠司はヘラの姿を初めて見ることできた。だが、へラを見たことで驚いている暇はない。
やはり、一番最初に頭を犬の体から切り離したのは、オリハルコンの剣をもつ忠司だった。喉元を狙って放った光は顎を切り裂き、首から頭を切り落としていた。
「お父さん、離れてください」
「おう、わかった」
リチャード王はすばやく後ろに飛んだ。すぐに忠司は父が戦っていた頭にオリハルコンの剣を向け光を発した。光は強い光線となって、頭の半分を溶かしていた。続けて、忠司はその下にある首に向かって光を発した。光は首を切断し、二つめの頭も岩の上に転げ落ちていった。
後は、ヘラが戦っている頭だけだ。その頭はヘラが魔法の杖の力で何度もたたいているので、変形をし始めていた。
「ヘラ、どいてよ」
忠司の言葉に、ヘラは羽ばたき、高く舞い上がった。そのすきに、忠司はオリハルコンの剣を首に向け光を放った。光は長剣のように伸びて首を焼き切り、最後の頭をも切り落としていった。
やがて、ケルベロスは倒れて大きな音をたてていた。
ついに、グールを倒し父を食い殺そうとしたケルべロスもやつけることができた。
忠司はリチャード王と見つめ合った。髪も髭も伸びた顔は村長の家で見た絵とはまるで違っていた。だが、泣き出したその目は、間違いなく肉親の物であった。
へラがふたたび忠司の前に姿を現した。
へラは美しく白いドレスをきて手に銀色の杖をもっていた。だが、その美しい顏にも長い間の疲労のためかやつれが見えていたのだ。それは今まで一睡もぜすに父を守り続けてくれた証だった。
そんなヘラが杖を振った。
すると、父、リチャード王の姿が変わった。
髭は綺麗にそられ、髪は整えられ、頭に王冠がのせられていた。それは、忠司がハルカ村の村長宅で見た絵と同じ姿だった。
「お父さん」と、忠司は声をあげた。
「わが子、サルタンよ」と言って、父は忠司を強く抱きしめていた。
そのそばで、へラは微笑みを浮かべていたが、すぐに眉間にたてじわを作った。
「一匹の子クモだけが逃げ出していったわね。でも、あのクモが他の動物たちから逃れて生きれるかしら。まだわからないわ。今ひと時の平和を楽しむことにいたしましょう」
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